最終話 主の行方は
霧が立ち込める静かな部屋で、リリエラはゆっくりと封印の箱を開けた。中に収められていたのは、黄ばんだ紙一枚と小さな銀の印章だった。主が遺した最後の品々。長い旅路の果てにようやく手に入れた、唯一の真実のかけらだった。
彼女の黒い瞳が紙に落ちる。そこには、震えるような筆跡で綴られた言葉が並んでいた。
「リリエラ、もしこの手紙を読んでいるのなら、私はもうこの世にはいない。かつての私が果たせなかったこと、あなたには託したい。あなたがいつも誇りにしていた『主』の名は、もう過去のものだ。だが、どうか諦めないでほしい。新しい主を探し、その者に仕えること。それが私の最後の願いだ。」
それは、長い年月と数多の旅路を共に歩んだ者として、彼女がずっと避けてきた現実だった。胸の奥で、封印の右目がわずかに疼き、これまでの記憶が断片のように浮かんでは消えていく。
最初に主に仕えた日のこと。厳しくも温かな声。笑顔と厳しさの狭間で揺れ動いた日々。戦いに身を投じた日々。過去の断片は曖昧だが、それでも確かな絆があったことは忘れられない。
彼女はその手紙を胸に抱き、深く息をついた。悲しみが一気に襲いかかり、涙が頬を伝った。だが、その涙はやがて強い決意に変わる。
「主よ……あなたの願い、必ず果たします。」
リリエラは静かに立ち上がり、深く黒い瞳に新たな光を宿した。
長い旅の果てに見つけた「真実」は、彼女に新たな使命を与えた。終わりではなく、むしろここからが本当の物語の始まりなのだ。




