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主探しの旅行談  作者: あおにぎり
第五章 またもや学園潜入
20/22

5-1 再び潜入 前半

(以前とは違う学校です)

リリエラは、新たな依頼を受けてセリスティアへ向かっていた。

魔法使いの街は、これまで訪れたどの町とも違い、空には無数の魔法陣が浮かび、

高くそびえる塔からは淡い光が漏れていた。


到着早々、彼女は潜入先となる魔導士学校の制服を渡される。

「学園生活を送りつつ、秘密の調査をすること」――それが今回の任務だ。


魔導士学校は、広大なキャンパスにさまざまな魔法研究棟が点在している。

リリエラは授業で魔法理論や実技を学びつつ、学生や教授たちの間で情報を集める。

そのなかで、謎めいた生徒や教授が気になり始めていた。



セリスティア魔導学院。それは、大地の上に築かれた知の砦であり、

天に向かって聳える七本の塔が、魔法文明の象徴として輝いていた。

その中のひとつ――“第三塔:紋章解析科”リリエラが今回、身分を偽って編入されたのは、魔法紋の構造や古代契約を研究する塔だった。


「リリア・クロード」――

今回の仮名で与えられたのは、辺境から推薦で入学した優等生という設定。

前回のエルミナ潜入時とは違い、今回は学生寮に泊まり、魔力量・記録・技能の検査を受けることに。

検査で「一部の魔力しか解放していない」ことに疑いの目が向くが、

「魔法体質の制限がある」という医療証明(ギルドが偽造)によって、ひとまず問題なく潜入は完了した。

だが、すぐに彼女は感じる。この塔の中に“監視の目”があること。そして、他の生徒には話されていない“ある区画”が存在していることを。


最初の授業。講師が講壇から説明するなか、隣の席で魔法陣の写しを取りながら、

静かにノートを閉じた一人の生徒がいた。

「……君、見ない顔だな」

落ち着いた低い声。彼の名はエイリアス。規則正しく整えられた服装、観察するような瞳。

彼のノートには、他の生徒が書かない“式の余白”が記されていた。

「文字が動いたとき、君はどう見る?」

「……観察より、構造を見るべきです」

「……ふうん。じゃあ、君も“見える”側か」

彼は何かを知っている。リリエラも、それをすぐに感じた。

けれど彼が敵か味方かは、まだわからない。


数日後の夜。リリエラは、講義棟の一角で奇妙な魔力の残滓を感じ取る。

階段下の石壁にわずかな魔紋が走り、誰かが“この空間を消そうとした”形跡があった。

リリエラは、魔眼を使うかどうか迷ったが、今は“静観”を選ぶ。

(使えば探れる……だが、魔力の消費は大きく、痕跡も残る)

(この学院は、見られている)

彼女は一歩、踊り場に踏み出すと、

石壁に触れた指先から、ごく微かに震えが伝わってきた。

何かが、ここに“封じられている”。

翌朝。

リリエラはいつものように講義を終え、寮の回廊を歩いていた。だが、昨夜の出来事が頭の片隅にずっと残っている。

「エイリアス、昨日の話、本当だったのでしょうか……」

彼女は小声でつぶやく。

学園は相変わらず活気に溢れていたが、何かが違った。

掲示板には新しい依頼の張り紙、学生たちの噂話も飛び交う。


昼過ぎ。

エイリアスがリリエラを密かに訪ねてきた。

「君に話したいことがある。あの封印された区画の真実だ」

彼は人目を避け、地図の一部を広げる。

「禁書庫は学院の最深部にある。普通の生徒は絶対に立ち入れない。だが、僕には“許可証”がある」

リリエラは警戒しつつも、彼の言葉を受け入れることにした。

「よし、一緒に行こう」


夜。

学院の指定時間を過ぎて、人影の少ない時間。

二人は影に紛れて禁書庫の扉の前に立つ。

エイリアスが持つ鍵が魔法で輝き、扉は静かに開いた。

中は埃っぽく、長い年月を感じさせる書架が並んでいる。

「ここに、真実が眠っている」


リリエラは魔眼を使いながら、慎重に書物を調べる。ページの端に、小さな文字で書かれた記録。

「“ナ”という名の存在は、かつて学院の守護者として封印された魔物……だが、その真実は多くが隠蔽されている」

突然、彼女の頭に断片的な記憶が蘇る。ぼんやりとした主の姿、そして戦いの記憶。

「これは……私の記憶?」

だが、その瞬間、禁書庫の警報が鳴り響いた。

「急げ!」とエイリアスが言う。


外からは守衛の足音が迫る。

二人は魔導書を持って隠れながら、脱出を試みる。

「これで、真実に一歩近づきました」

リリエラの胸に、主の謎がますます深まる。


警報の鳴り響く中、リリエラは魔眼を駆使し敵の動きを把握しながら、エイリアスと共に影を縫うように脱出ルートを探す。

「こちらは逃げ道が限られている……あの扉の先に通路があるはず」

エイリアスが呟く。激しい守衛の追跡をかいくぐりながら、二人は禁書庫を飛び出した。


学園の廊下を駆け抜ける途中、二人は不意に一人の影と遭遇する。

黒いローブをまとった人物は、魔力のオーラを放ち、リリエラの魔眼に警戒心を抱かせた。

「そこで何をしている?」

その低い声が学園の静寂を切り裂く。

リリエラは咄嗟に身構え、エイリアスは彼女の背後で剣を抜いた。


しかし、その黒衣の人物は争いを望まなかった。

「君たちの行動は許されざるものだが、私もまた学院の秘密を知る者だ」

彼は名を告げず、深い事情を匂わせた。

「真実を追い求めるなら、協力はできぬが、妨害もしない」

謎の人物は消えるように闇に溶け込んだ。


リリエラは深く息をつき、エイリアスと目を合わせる。

「この学園には、私たちが知らない力が確かに動いている」

エイリアスは頷き、改めて意志を固めた。

「ならば、君の秘密もここで解き明かそう。」

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