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この世界の占い師とは

―――占い。

それは不確かなもの。

先読みの力とは異なり、未来を寸分の狂いなく視ることはできない。



この世界。

それは、魔物が渦巻くダンジョンに勇猛果敢に挑む冒険者が光を浴びる世界。

この世界で輝けるのは剣士や武闘家、魔法使い、僧侶、魔物使いなど戦いに長ける職である。


この世界では、12歳になると天から啓示を受ける。

与えられる啓示は、生涯をかけて全うすべき〈職〉であり、啓示を受けた瞬間から皆が天と己を信じその職を極めんと努めるのだ。

戦闘向きである職はもちろんだが、援護を得意とする職もダンジョン攻略には欠かせない。

希少職と言われる瞬間移動を得意とするテレポーラーや精霊使いなども需要が高い。

ダンジョンに挑むことが難しいとされる武器職人、料理人、教師、商人といった職も、生活を送る上では必要な存在だ。

皆、自分はこの世界に必要な存在なのだと信じ、ほとんどの者が与えられた職を命尽きるその時まで全うする。


そんな世界で私が天から授かったのは占い師という希少職だった。

啓示を受けた時にはあまり聞き慣れない職業だけに不安もあったが、その分期待も大きく希望に胸がはずんだのを覚えている。

私は占い師という職を極めるために、まずは職の理解を深めようと沢山の文献をあさった。

この時代まで占い師がどのように世界と関わってきたのかを知りたかった。

どれだけ自分が世界に必要とされる存在になり得るのか、を。


――そこで私が知った事実。

この世界での占い師という職の必要性。

それは、ほぼ『皆無』だった。


まだ文明が発達していなかった頃。

その頃から人々は天啓により、生けるための役割を授かったという。

現代とは異なり、農家や漁師、大工など生活に必要な職を与えられるものが多かったらしい。

また、ダンジョン攻略が盛んとなる200年前までは、剣士や魔法使いというと稀にダンジョンから抜け出し人々を襲う魔物を倒すのが主な役割であったため希少職とされていようだ。

そんな文明が発達していない時代に占い師は数多く存在した。

現代では希少職とされているが、当時は天啓に近い存在として人々に必要とされていたのだ。

しかし、文明の発達とともに、それまで存在していなった職が天啓により新たに与えられていき、占い師の必要価値は少しずつ失われていった。

そして現代、占い師は大きな町にさえ1人存在するかどうかという程の希少職となり、多くの人々がその職の存在すら知らないというところまで至り、かろうじて知る者の中でも『吉凶は占えど詳細な未来を視ることは叶わない、天啓の真似事』といった認識であるようだった。


それでも、占い師が今一度この世界に必要とされるために私は寝る間を惜しんで修行に明け暮れる日々を10年近く過ごした。

確実に占いの精度は上がり、相手の過去や心は鮮明に視ることができるようにはなった。

でも、それだけだった。

心を視れば相手が求める未来を知ることはできる。

しかし、訪れる未来を明確に視ることはできない。

私は修行を経て改めて、この世界にはもう占い師という職は必要されていないのだと痛感した。


実際、修行中に町に出ると占い師という職への物珍しさから占いを頼まれることも度々あったが、その大半が過去が視えるなら未来も視えるものなのだろうと考え、未来をみてほしいと依頼してきた。

未来を視ることはできないのだと伝えると、人々は「期待外れ」「役立たず」といった表情を私に向け去っていき、挙句は私が心を視ることができるとわかるや否や、気持ち悪いと逃げ出す人もいた。


―――この世界には占い師は必要ない。

では私は?

私も必要のない存在という事なのか。

そんなのあんまりだ。

私だって必要とされたい。

占い師である私が必要とされる世界。

そんな世界を私は求めている。

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