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第2章 額田王(ぬかたのおおきみ)

あかねさす・・・ 第2章  額田王


 家に帰ると幸せな家庭が待っている。

「お父さんおかえりなさい。」

妻と高校3年生のむすこと高校1年生のむすめが食事をしている。

いいにおいがするなあ「カレーライスだね。」

「大正解です。」

一家だんらんの幸せな家庭のひとコマ。そんな家族団らんの中で私は家族に話しかけた。

「ねえ、額田王って知っている?」

「知っているよ。飛鳥時代の歌人だろ。あかねさす 紫野行き標野行き・・・・・」

むすこが上の句をいうとむすめが続けた。

「野守は見ずや 君が袖振る・・・・」

「へ~~みんな知っているのか?」

「あたりまえだよ、古文の時間にだれでも習うって・・・お母さんだって知っているよね。」

「知っているいわよ、額田王は天智天皇の奥方だったのよね。私も高校の時に習った。」

「ほら、知らないのはお父さんだけだよ。ところでそれがどうしたのさ・・・」

むすこにどうしたの?といわれて言葉につまったのでとっさにうそをついた・・・


「お父さんの会社に「あかね」さんというアルバイトの子が入ってきたのだけど、その子が自自己紹介した時に、「あかねさす」のあかねでこの名前すごくその名前気に入っているのですって言っていたんでね。あかねさす?と聞き返したら、額田王ですよって言われた。ああそうなの・・・って言ったけど何のことかわからないので、あとで君たちに聞こうと思ったわけ。」

「それは、お父さんが勉強しなかったって言っているようなものだな。」

むすこが笑いながら言う。

「お父さんは俺たちの反面教師だよな。」

「そこまで言うか?じゃあ聞くけど、あかねさんっていい名前だと思う?」

するとむすめが答えた。

「あかねさんがどうかわからないけど、額田王って幸せな人だと思わない。だって天智天皇の奥方だったのに天皇の弟の大海皇子と不倫をするのでしょう?」

不倫という言葉が出て私はドキッと動揺をした。一瞬妻の顔を見てしまった。もちろんそれで今日のことを悟られるわけではない。


「そうだよね、この歌の君が袖振る・・・の君って大海人皇子のこと。このひとが額田王に手を振って愛しているよ!ってアピールをしているのを野守、役所の番人に例えているのだけど天智天皇のこと言っているんだ。夫である天智天皇にみつかったらどうするの?そんな切ない恋の歌なんだよ。」

「でね、この続きがあるのよ。不倫相手の大海人皇子の愛の告白の歌。」

すると今度はお母さんが

「紫草の にほへる妹を 憎くあらば  人妻ゆゑに 我恋ひめやも」

それにまた息子が解説をする。

「紫草のように色美しく映えているあなたのことをいやだと思うなら、人妻なのにどうしてあなたのことを恋い慕いましょうか、いや、恋い慕ったりはしません。あとね・・・いもっていもうとじゃないよ。女性のこと、これは現代文に訳さなくっても意味わかるよね。」

するとむすめが自分の意見を語りだした。

「私は、額田王は幸せな女性だと思わない。男性にもてあそばれた不幸せな女性なんじゃないかなあって思うなあ。」


 次はお母さんが、

「私もお父さんよりも若い男性と恋に落ちて歌を残そうかしら・・・それが1000年先に残って受け継がれる。いいなあ~~」

すると息子が、

「ばかばかしい、それはね相手が天智天皇だから大事なの、天智天皇がなくなると弟である大海人皇子と息子の大友皇子が天皇のポストを巡って争うことになる。」

そして次はむすめが話し出す。

「壬申の乱よね!これって次どちらの天皇が即位するかって歴史を変える。大変な出来事。

だから意義があって1500年も受け継がれるの。お父さんとお母さんの恋物語など誰も興味がない。」

 わが子ながらよくぞ勉強していると感心する。感心ついでに質問を続ける。

「ところで・・・その壬申の乱、天智天皇の弟と息子が戦ってどっちが勝つの?」

「弟の大海人皇子・・・のちの天武天皇。」

恋のロマンスが歴史をかえる・・・・・・



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