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三人力を合わせて、おんなのこ探偵団!

「こんにちは。おじゃましまぁす」

「またおまえらか。帰れ帰れ」

「もう所長ったら。かわいい中学生に照れなくてもいいんですって」


 呆れた表情で椅子に座っている所長に向かって、慣れたようにわたしとフーちゃんは言葉を返して、探偵事務所内へ入りこんだ。

 今日も、机に向かっている王子以外の探偵たちは、出払っているようだ。

 先日の依頼を調査報告書にまとめていたらしい王子が、顔をあげて、わたしたちに麗しい微笑みを見せる。


「ああ、いらっしゃい。いまお茶をいれるね」

「客でもない学生に、茶などふるまうな。もったいない」


 所長がぼやく。でも、笑いながら立ちあがり、王子は給湯室へ向かった。


「やさしい! ステキ!」


 呑気な声をあげながら、フーちゃんはソファーに学校カバンを乗せると、その横へ腰を深々とおろす。同じようにカバンを置いたわたしは、今日はそのまま窓際に近寄った。


 よく見たらわかったはずなのに。

 並べられたトロフィーはどれも、ちゃんと大会名が彫刻されているではないか。これらは全部、空手の学生大会でもらってきた、王子のものだったのだ。

 どこが、おっとりやさしい王子さまよ。

 わたしたちが護ってあげなきゃ! なんて思った自分が恥ずかしいわ!


 けれど、フーちゃんが襲われ、事務所に引き返して報告したとき。わたしと王子は、もしかして犯人は――とピンときた。お揃いのストラップにお揃いの香水。綾さんを独り占めしたくて、旦那さまを排除しようとする女。


 所長がフーちゃんを自宅まで送っていったときに、わたしは王子に向かって、オトリを申しでた。すると、はにかみながら王子は、自分は空手有段者なのだと告げたのだ。

 それならば、と、今回の芝居を、魅夜子をまじえて計画した。相手に気づかれないように綾さんへ、内緒のメールや動画撮影、逐一周囲の警戒など、魅夜子のハッカー技が頼りになる。

 そして、依頼どおり犯人を特定して調査が終わったから、あとは依頼主の綾さんの問題だ。

 王子がまとめた報告書を手渡して、この件は終了となった。



 あの、のほほんとした王子がものすごく強いだなんてこと、フーちゃんはまだ気がついていないだろうな。

 情報通の魅夜子は、もしかしたら、はじめから知っていて、独占していた情報だったかもしれない。けれど、いまのわたしは、フーちゃんよりは王子の別の一面について知っていることになる。

 ちょっぴり、一歩だけ、王子に近くなったかな。

 なんてことを、手鏡を取りだして一生懸命前髪を気にしているフーちゃんを、優越感を持ちながら眺めていたら。


「瞳ちゃんも、お茶はテーブルに置いていていいかな」


 トレーを持った王子が、給湯室からステキな姿を現した。


「あ、ありがとうございますぅ」


 わたしは、満面の笑みを浮かべながら近寄って、王子が置いてくれたお茶の前にちょこんと座った。王子と目が合った瞬間に、ニコリと笑みを返される。

 もうそれだけで、一気に心拍数があがっちゃいそう!


 武術に長けているという、おっとり王子の意外な一面を見たけれど。

 まだまだ世間ずれなんてしていない、ピュアな青年だ。

 この王子。ウルウルした瞳で助けてほしそうに見つめられたら、どんな相手でもすぐに仏心を出して、ころっと詐欺グループの罠に引っかかりそうじゃない?

 それこそ、性根の腐った悪女の手に落ちたりしたら大変だ。


 わたしは、王子の淹れてくれた緑茶を両手で包んでゆっくり味わいながら、決意を新たにする。


 正統派美少女のこのわたしがひらめきを。

 天真爛漫てんしんらんまんなフーちゃんがコミュ力を。

 引きこもりハッカーの魅夜子が情報を。


 わたしたちは、おんなのこ探偵団。

 これからも三人の力を合わせて、王子のお手伝いをしていきます。

 そして、わたしたちの王子を悪い人たち――とくに女たちから護らなきゃ。

 ねっ!


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