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なぜ犯人は行為に及んだのか

「ああ、すみません。肺を圧迫していたら、お話ができませんよね。忘れていました」


 申しわけなさそうな表情になって、王子は背中に乗せていた膝を少し浮かして、かけていた体重をゆるめる。

 とたんに、大きく息を吸った由樹奈は、自分は悪くないと言わんばかりに、一気に言った。


「だって! 綾ったら親友の私に相談しないで、どこの馬の骨ともわからない男と、勝手にお見合い結婚を決めちゃったのよ? ずっと結婚せずに、私たち、いつまでも一緒よって約束したじゃない? だから、別れるように忠告したのよ」

「あんな、ビラの形で?」

「ええ。だって、ああいうふうに伝えたら、きっと困って私に相談すると思ったの! なのに! 私に相談する前に警察に言うし、探偵事務所に行くし!」


 これは、大事な女友だちを取られた嫉妬なのだろうか。

 相談もせずに結婚を決めてしまった、綾さんに対する忠告なのだろうか。

 それとも、一生独身でいようね宣言をした、裏切り者への嫌がらせだろうか。

 なんてことを思いながら、わたしがあっけにとられて見守っていると、由樹奈は上目づかいに、キッとフーちゃんを睨みつけた。


「その小娘が、なれなれしく私の綾にくっつき過ぎなのよ! 近寄るな! メギツネ! なにが、綾お姉さまと呼んでいい? だ! あとから現れてずうずうしい!」


 なんと。予想はしていたが、やはり、綾さんに近づきすぎていたフーちゃんのあとをつけて襲ったのか。でも、部屋で交わした会話まで知っているのは……?

 そんなわたしの疑問に気づいたのか、王子が口を開いた。


「昨日、綾さんの携帯のストラップを見たときに、盗聴器が仕込まれているのがわかったので。おそろいだと言われていたし、自分のストラップに仕込んで気づかれないように入れ替えたんですね。その盗聴器から、フーちゃんが綾さんに懐いている空気が感じられて、つい行動に移してしまったんでしょうね」


 あくまでも穏やかに、王子は語る。

 そのとき、ピロリンとチャット音が鳴った。画面を見るとひと言。


 ――イケメン王子の美麗なお姿、動画におさめさせていただきました。尊い。


「あのストーカー娘、趣旨を間違っているじゃない! もう!」


 思わずわたしは、上空で停止浮遊している魅夜子の手のひらドローンを見上げて叫ぶ。

 犯人をおびき寄せて捕まえる、この一部始終を動画におさめ、嫌がらせをやめさせる交渉のひとつにするつもりだったのだが。


「魅夜子! わたしも! わたしにも動画の王子をちょうだい!」


 ぴょんぴょん跳ねながら、のんきな声をあげたフーちゃんを、わたしは睨みつけた。


 わたしだって!

 遠慮しているから黙っているけれど、わたしだって!

 王子のカッコイイ動画、すっごくほしいんだから!



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