十話
「で、話とは何だ?」
オヤカタさまが仰います。
ワタクシは、今、オヤカタさまのお隣の席に座らされております。この場所は、本来は本妻が、お座りになる席です。それなのに
『何れはノブナガの席になるのだから、今から慣れておく方が良い』と仰り、無理に座らされたのです。何れは、ノブナガの席になるって…全く…オヤカタさまは…
「おれは修行をやめる。寺も継がねえ」
ミツヒデ様がそう仰ると
「もう、根をあげたのか?お前も、案外根性がないのぉ」
と、オヤカタさまのお声が、イラついているように感じます。
「根性があるとかないとかの問題じゃないんだよ」
ミツヒデ様も、少々イラついておられるようです。
「では、どういう問題だ?」
やはり、オヤカタさまは、いつになく苛立っておられます。
「オヤカタさま、落ち着いて下さい」
ワタクシが、そう言うと、
「ワシは落ち着いている」
いいえ、落ち着いてなどおられません。と、つい、云いたくなりましたが、流石に、その言葉は呑み込みました。
「理由を仰って下さい、ミツヒデさま」
ワタクシが、つい、口をだしてしまいました。
「理由?もともと、おれは寺も神社も継ぐ気なんて、さらさらなかったし、どっちもヒデヨシが継げば良いだろう?おれよりも、ヒデヨシの方が、優秀なんだから」
「自分より、ヒデヨシの方が優秀?お前は、本当にそう思っているのか?」
「……」
「まぁ、良い。だが、修行は続けて貰うし、寺を継ぐことも決定事項だ。お前には決定権などない。全てはこのワシが、決めるのじゃ」
はぁ、相変わらず、ワンマンな性格でござます。
オヤカタさま…