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春風のヒストリア  作者: モトハル
春風_神官学校編
22/61

ウォーリスの野望

「ところで、祭壇の準備は順調ですか?」


「ええ。なんとか」


ウォーリスのにこやかな問いに、デルタは少しぶっきらぼうに答えた。


つい先日、国王就任式の前日に行われる神官学校入学式に出席したい、と新国王になるエリウス三世が急に言い出した。


入学式の全権を握る本校新副校長ドイルは、新国王に取り入るまたとない機会を得たと張り切り豪勢な入学式を提案したが、エリウス三世はその案を却下した。


そればかりか、例年本校の校舎横のブリテン聖教会中央聖堂で行われる入学式をやめ、今年は分校の校庭で入学式を実施すると言った。


神官学校の学校行事は聖教会の神事を兼ねていたので聖教会は本校を通じて強く反対したが、新国王は頑なに譲らず結局全職員生徒を分校に集めて開催される事になった。


だがその際、聖教会の意向を受けた本校が分校に一つの指示を出した。


それは、一時的な祭壇を建てるというものだった。


祭壇に関する責任の所在に関しては、設置指示と費用は本校が、入学式当日の運営人員の提供と安全運行を分校が担う事になったので、安全を最優先すべくデルタは寄宿舎の屋上に小さな祭壇を建てる案を提示したのだが本校は抵抗した。


祭壇は神事に堪えうる美しい物でなければならないし、新国王が登るのにふさわしいものでなければならないと言って、分校の校庭に大きな祭壇を建てるよう主張した。


結局、本校が求めた条件のひとつである、大聖堂の鐘塔しょうとうと同じ高さという無茶苦茶な提案を、三階建の寄宿舎より少し大きい程度まで引き下げる事で両者は折り合った。


祭壇はドイルの指示のもと、本校が連れてきた宮大工達によって三日をかけて建設されたのだが、来賓席の設置や生徒達の座席や誘導経路の確認に時間を取られた分校の教師陣は、春休みの期間も忙しく働かされる事になった。


さらに今回は新国王の警備問題があり、全責任を負わされたデルタら教師達は安全確保に追われて泊まり込みの作業が続き疲弊していた。


もちろんこれは、分校が月落人確保に動きにくくするための嫌がらせを主目的にしたもだったのだが、ソフィエに春風を奪われたウォーリス達はまんまと出し抜かれた形になった。


ウォーリス達の次の狙いは入学式の失敗だった。


ここで新国王に何かあれば責任者のデルタはその職を追われるのは必至で、デルタさえいなくなれば月落人を奪還する事も容易であり、分校など直ちに閉鎖させる腹づもりだった。


ウォーリスには何か策があるようだったのは、デルタは勘づいていたが、何を仕掛けるつもりなのかはまだわからなかった。


優しく冷たい笑みを浮かべたウォーリスはデルタを見ていた。


"我々の勝ちは揺るぎない。


デルタの追放は、新国王の死によって成し遂げられるのだ。


その後分校がかくまっているはずの月落人を手に入れればよい。


暗黒神ワーの復活に必要な供物にするために"


声を出さずにウォーリスは不気味に笑った。

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