「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
雪だるまはサーファーの夢をみる
俺は超売れっ子作家だ。
週に四本の連載を抱え、雪だるまの助手ジョッシュと暮らしている。
「そういえば、ジョッシュはどこの出身なんだ? やはり北国なのかな」
ジョッシュに関しては、日本人で小説家、書籍化もしている商業雪だるまだということしか知らない。
わからないことだらけで疑問は尽きないが、あまりプライベートについて詮索するのも……な。
まあ、これぐらいなら問題ないだろう。
「はい、北海道のプユニ岬です先生」
そうか、やはりな。良かった……これで沖縄の那覇とか言われたらツッコミ不可避だった。
「……北海道はわかるんだけど、プニュ岬? なんだか柔らかそうな岬だな」
「フフフ、先生違います、プユニ岬です、知床と言えばわかりますか?」
「おおっ!! 一度行ってみたかったんだよ知床!! 流氷とか見られるんだろう?」
「そうですね……懐かしいなあ。よくサーフィンしていたんですよ」
なんだって!? 北海道でもサーフィンって出来るのか?
「……知らないんですか? 北海道ってサーフィン天国なんですよ? そのために移住してくるサーファーも多いんです」
知らなかった……偏見は恐ろしい。作家としてあるまじき姿勢だな。反省しよう。
「だけどジョッシュ、海に入ったら溶けてしまうんじゃないのか?」
「ハハハ、私は真冬の海を主戦場にするサーファーですから、むしろパワーアップします」
たしかに氷にコーティングされて強化されそうではあるな……。そうか、ジョッシュはサーファーだったのか。
「せっかくのサーフィンシーズンなのに手伝ってもらって悪いな。年末年始は帰省したらどうだ?」
優秀な助手のおかげで仕事は順調だ。数年ぶりに休暇をとっても良いかもしれない。
「ありがとうございます!! 先生はどうされるんですか?」
「俺か? 俺は……帰る実家もないし、コタツでミカンでも食べてゆっくりするつもりだ」
「もし先生さえ良ければ、一緒に行きませんか? 北海道。時期的に流氷は難しいですけど、美味しいものもたくさんありますし、運が良ければ、だるま渡りが見られるかもしれません」
「ほほう!! それは良いかもしれないな。北海道のグルメといえば……」
「新鮮な冷凍食品が楽しめますよ。道産子なら当たり前です」
……そうなのか? やはり北海道民は胃袋が氷でできているのだろうか?
「ところで、だるま渡りって何?」
「海を渡って密入国してくる雪だるまのことです」
オーマイガーー!! 雪だるまはロシア人だったのか?
平行世界の北海道のお話です。(ΦωΦ)フフフ…。