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体育倉庫 〜俺と彼の祝い方〜

作者: 凪久

 「暇だなぁ〜」

つぶやき、体の姿勢を変える。

天井付近にある格子窓から、月の光が射し込む。

体育倉庫に閉じ込められて、かれこれ三時間。

 

 そろそろ、出たいなぁ〜



 事の始まりは、担任に押し付けられた体育倉庫への荷物運び。


「暇なら、これ頼むわ。五十嵐いがらし

段ボールに入った年期のあるテニスラケットやその他もろもろ。


和泉いずみ、お前も手伝ってやれ」

担任が、近くにいた同級生を呼び止める。


「ええっ〜。俺、これから寄る所があるんで」

「ああ、お前いっつも、屋上で授業さぼってんのに何だそれは」

何やら、不穏な空気が…


「あの、俺、別に一人で平気ですから…」

二人の間に、慌てて割って入る。


「何言ってんだ、あそこの扉は…」

「僕、手伝いますよ」

担任が話をしようとしたとき、誰かが声をかけてきた。

見ると、今まで教室のすみで本を読んでいた男子生徒がいる。

メガネをかけ、どこまでも無表情な顔。


諏訪すわ…!」

俺の友人、諏訪徹哉すわてつやだ。本来こんな面倒な仕事に首を突っ込む奴ではなかったはずだが…


「じゃあ、頼む」

俺が言うと、諏訪は黙って頷いた。


体育倉庫の扉は、立て付けが悪く、誰かが扉を抑えなければ閉じ込められる危険があった。

俺が扉を抑え、諏訪が荷物をなかに入れる。


「終わった〜?」

「まだ、もう少し…うわっ!」

ガッシャァンと何かが崩れる音が聞こえてきた。けむりが辺りに立ち込める。

倉庫のなかは電気が点いておらず、薄暗い。


「諏訪っ!」

俺はバカだった。

扉から離れ、体育倉庫に足を踏み入れてしまったのだ。


        ばあぁんっ!!


 無情にも、扉は大きな音をたて閉まった。


 

 それから、俺と諏訪は現在までここにいる次第だ。

諏訪はさっきから懐中電灯で照らして、本を読んでいる。


「諏訪…何で懐中電灯、持ってるんだ?」

「………」

本に夢中になっているのか、無視。

ああ、そうですか。はいはい。

俺はマットの上に横になり、しばらく寝ることにした。…のだが、


 ぐうぅ〜

お腹の虫が鳴る。そういえば、何も食べてない。


なんだか、みじめで泣けてきた。


ポンッと何かを諏訪が投げて寄こす。手に取ると、カロリーメイト。


「諏訪…!お前って奴は…」

本気で泣けてきた。対するあいつは無表情だけど。



「なあ、何で手伝おうと思ったんだ?」

カロリーメイトを食べた俺が尋ねる。


「…直人なおとは今日、何の日か覚えてる?」

本から目を離さず、諏訪が質問で返す。


今日…?えーと、歴史的重大事件があった日…?いや、そんなこと知らないよ。

他は…俺の誕生日でもないし……んっ?誕生日?……あ、


「ああー!諏訪の誕生日だ!」

「やっと、気づいたか」

俺は制服のポケットを探って、一個の飴を諏訪に渡す。


「…えー、諏訪君、誕生日おめでとう」

「ありがとう」

飴を受け取ると、諏訪がおもむろに立ち上がる。


「じゃあ、帰るか」

「…へっ?」

積み上げられた用具をどけ始める。

しばらくすると、壁に正面の扉とは違う、別の扉があらわれる。


「えっ?えっ?ど、どういうこと?」

困惑する俺に、諏訪が冷静な声で言う。


「僕、もともとここで本を読むこと多かったんだ。だから、懐中電灯持ってたんだよ。

それで、ある日この扉を見つけたんだ」

「じゃあ、お前最初から知ってたんだな。出られるってこと…」

「うん」

こっくりと頷く。


「諏訪…お前、俺におめでとうって言ってほしくてわざと…」

「うん、そうだよ」

俺は頭を抱えた。

対する諏訪は、



         嬉しそうに、笑った。


ぱっと思いついて書いてみました。雑になってしまったかなと感じますが、いかがでしょう?

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