その場で転生 ー 死んだらその場で生まれ変わる世界感 ー
ー 日本・某所自衛隊駐屯地 ー
その敷地内に建てられた建造物。
仮説で建てられたにしては高層ビル並みの大きさのあるその建物の中に入ると、そこには巨大なロボットが格納庫に鎮座している。
工具を持った整備員たちが、いそいそと作業を終えてロボットの周りから退避する。
「整備完了。 もう動いていいぞ」
整備班長が、壁沿いの通路から、そうロボットへ声をかける。 すると・・・
『あいよ、どうもお疲れさん』
ロボットらしかぬ口調で、ロボットが返答する。
そう、ロボットが返答したのだ。
ロボットはそれからすぐに、ロボットアニメっぽい直立ハンガーから歩いて離れ、格納庫内の、巨大ロボット大のクッションソファーにもたれかかると、これまた巨大なゲーム機を持って、くつろぎ始めた。
俺の名前は、『アリカネ・ユウキ』。
今そこでゲームしてる巨大ロボットだ。
展開急すぎて混乱してると思うが、言わせてもらうと、元からロボットじゃあない。
俺は元々人間だった。
この身体になった経緯は、俺は会社員で、ブラックな労働環境の中でポックリ過労死したら、次の瞬間には人型ロボット兵器になっていた。
しかも、異世界に飛ばされたとかじゃなくて、『現実世界』の丁度『死んだ所』で生まれ変わったんだよな。
日本やアメリカという国があるのも同じだし、日本の年号もアメリカの現大統領だって全部俺が死ぬ直前と全く一緒だ。
パラレルワールドの可能性もあるけど、言ったら精神科を勧められたので確実に元の現実世界だろう
そう思ってる。
とても信じられないと思うが、そういう設定なんで諦めてください。
と、モノローグ調に生い立ち話してると、格納庫の扉から、女が入ってきた。 もちろん普通サイズの人間の女な。
名前は、『アヤ・サヤカ』、陸上自衛隊三佐だ。
で、俺の近況の話に戻ると、俺の身柄は自衛隊に、まあ管理つーか監視つーか、一応保護って形で所属しているような状況になっている。
なんでそんなことになるかって? 当たり前だろ、一般男性が町中で巨大ロボットに変異したら、ポリスもSPもすっ飛んで来るに決まってるだろ。
瓢箪型の島で釣りしながらのんびりスローライフ出来る訳がない。
まあ、ともかく、国は俺みたいな変態した人類を暴れさせないように税金使って隔離もしくは厳重監視している状況で、俺含む一度死んでから異常な戦闘能力に目覚めた奴らはそんな税金生活する代わりとして、悪党として暴れる同じようなバケモノを鎮圧する一種の特殊部隊に入れられているワケ。
で、さっき説明した女が、俺の上官ってワケ、OK?
「国民の税金で生活してるくせに、随分だらしない過ごし方をしているな」
『入っていきなり挨拶だな、税金っても使われてるのはこの馬鹿でかい牢獄とかカメラ衛星に使われてんだろ。 俺が税金でピザ食ってるわけじゃねぇだろ』
「同じことだ。 これで国のために働かず反乱企てているなら、今すぐに私の手で殺してるだろう」
『コワっ、俺と「同類」のやつが暴走しない限り半ニートな生活送らせてもらってるのに謀反するとか、バカしかやらんだろ。 俺だって他人の税金で生活してる自覚あるし、罪悪感もあんだよ、これでもな』
こんな感じで、何気ない日常会話を交わしていた。
だが、ほぼ毎日から毎週ペースで、もう日常の一部になりつつある非日常の音がすぐ近くまで迫っていた。
その合図の、格納庫内に響くアニメみたいな警報の音を聞くたびそんなことを思うな、俺。
《某県市街地にて、『突然変異者』による『暴動』が発生、直ちに現場に向かってくれ》
ビル群や家々の間をすり抜け、俺はアスファルトを踏みしめて現場へ向かっていた。
俺が走る後ろから、アヤ三佐が装甲車に乗ってついて来る。
スフィンクス型宇宙戦艦でもあれば、移動も楽なのだが、2020年代を越えてもどの軍隊でも巨大ロボット兵器は採用していないので、そんな物ないし仕方がないが。 まあ、この身体は痛みも疲労も感じないので、大丈夫だが。
とにかく、徒歩で移動しながら、通信機から聞こえる、『ドナルド・スタンリー 大佐』ーーー名前と階級で察した通りアメリカ特殊部隊の所属だーーーの声から、任務作戦内容を受け取っていた。
《今回の事件の首謀者は、「コウハタ・タロウタ」、男性、二十代前半。 死亡時刻は、本日午前10時頃、つまり、変異したのも同時刻だ。 自宅アパートメント内で大量の睡眠薬を服用して自害したらしい》
死んでから時間経ってないのに把握しすぎだって?
そりゃそうだろ、今の日本じゃ、犯罪率の増加から全ての住居に、それどころか人が生活してる全ての場所に国からの監視カメラが取り付けてあるんだから。
ドナルド大佐が説明を続ける。
《暴動の理由原因についてだが、彼は前日、交際していた女性を間男に取られ、そこから心身自失状態になり、今回の変異に繋がっている。
だから君たちが出動する前から変異体として行動していたことになる。
そこから、君たちの出番になった理由についてだが、 彼は変異した後、あるものの位置を何らかの能力で察知しその居場所へ一直線に進んでいた。 進行ルートを解析したところ、元恋人と間男のところへ向かっていると分かったが、この時点では緊急性がないと判断されていた。 おそらく司法と警察は、ほんの数名の人間の命で事態が収束するなら無理に阻止することもないと判断したのであろう》
未完です