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ゆきだるまのさがしもの

作者: 瑞樹凛

よろしくお願いします。




 雪の降る日、外には沢山の雪が積もっています。

 僕は雪だるまを作り始めました。

 できたのは僕の背と同じくらい大きな雪だるまです。


 すると雪だるまは、


「白ばかりでつまらないよ」


 と言いました。


「もっと綺麗な色が欲しい。そうだ、君の綺麗なエメラルドグリーンの瞳を僕にちょうだいよ」


 僕は悩みました。


「片方だけだったら、あげてもいいよ。そしたら君はもっと綺麗になるよね」


「足りないよ。両方ともちょうだい」


「両方あげちゃったら、君の素敵な姿を見ることができなくなってしまうよ」


「……それもそうだね」


 そう言って、雪だるまは僕からエメラルドグリーンの右目をもらうと、炭があったところにはめ込みました。

 雪だるまは少し嬉しそうでしたが、すぐに元気がなくなりました。


「やっぱりまだ足りないや」


「もっと綺麗な色がほしいの?」


「うん。ボクはもっと綺麗な色がほしい」


「じゃあ僕と一緒に探しに行こうよ。いいものがあるんだ」


 僕と雪だるまは、素敵な色を探しに行きました。

 はじめにきたのは僕のお家の玄関です。


「僕のこの長靴と手袋をあげるよ。買ってもらったばっかりで、まだつけてないんだ。綺麗な青色なんだよ」


「それはいいね。……でもまだ足りないや」


 悲しそうに呟いて、雪だるまは少し小さくなりました。

 次に僕たちは近所の山へ行きました。

 僕がいつも遊んでいる山です。


「ここにはね、僕の宝物が埋めてあるんだ!」


 そう言って、僕は大きな木の根本をスコップで掘りました。

 雪の中からはお菓子の缶ケースが出てきました。

 開けると、キラキラ光るビー玉や色んな色の瓶のフタが入っています。


「特別に僕の宝物をあげるよ」


 僕は雪だるまのお腹に素敵なビー玉とフタをはめてあげました。


「すごくかっこよくなったね!」


 雪だるまはキラキラと綺麗な色で彩られて、とても輝いて見えます。

 僕は嬉しくなりました。けれども、


「でも、まだ足りないや」


 雪だるまは残念そうに言いました。

 そしてまた少し小さくなりました。


 僕と雪だるまは色んな素敵な色を探しに行きました。その度に雪だるまはどんどん綺麗に、そして小さくなっていきました。


 雪だるまはおそるおそる僕に聞きました。


「僕はもうすぐ消えてなくなってしまうけど、いいのかい?」


「どういうこと?」


 雪だるまはもう僕の背の半分くらいになっていました。


「僕は雪だから、いつかは消えてしまうんだ。それでも、君の大事なものを僕にあげてしまっていいのかい?」


 ぽつりと雪だるまは話しました。


「うん、僕は君がどんどんかっこよくなっていくのが嬉しいんだ」


 僕は腰に手を当てて、えっへんと胸を張りました。


「そっか」


 雪だるまは少し考えてから、


「僕が探していたのは、きみの綺麗なエメラルドグリーンの瞳や、ビー玉や、瓶のフタや、手袋や長靴なんかじゃなかったんだ」


 と言いました。

 それを聞いて僕は悲しくなりました。


「じゃあいったい何を探していたの?」


「僕の欲しかったものは、きみの優しさだったんだ」


「君のエメラルドグリーンの瞳があまりにも優しい色をしていたから、僕も欲しいと思っちゃったんだ。でもね、優しい心を持っているから、きみの瞳は綺麗だったんだね」


 雪だるまは納得したように、


「君に右目を返すね」


 と、言いました。


「いいの?」


 僕は不思議に思いました。

 せっかくかっこよくなったのに、と思いました。


「僕はね、真っ白なまま消えちゃうのが怖かったんだ。でもそんな僕に優しくしてくれて、ありがとう。さがしものがね、ようやく見つかったよ」


 雪だるまはとても嬉しそうでした。





 次の日、僕はまた雪だるまを作ります。

 消えてしまうかもしれないけれど、僕の大切なお友達です。


 僕は雪だるまと仲良くできたかな?

 そして、また遊べたらいいのに、と僕は思いました。




 おしまい




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― 新着の感想 ―
[一言] 生まれた時は真っ白だった雪だるま。 親切な少年のお陰で「心」という色を纏えてよかったですね。 親切な少年の作る次の雪だるまも優しい子になりそうです。
[一言] 見返りを求めたい優しさというものは、本当に貴重で美しいものですね。雪だるまが溶けてしまったのは、少年の優しさで冷たかった心が温められたからなのかもしれません。これから少年が作る雪だるまたちの…
[良い点] 雪だるまの探し物が見つかってよかった!
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