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異時代の聖女?

「わたしは別に構いませんけど……」


 ナルタナはだからどうしたという様な顔をする。彼女からしてみれば余計な心配なのかもしれない。


「まぁ、大丈夫だよな! ご飯とかは置いておくから、歌詞でも覚えていてくれよ!」

「はい! しっかり歌える様にしておきますね」


 今日のスタジオでの彼女の実力が、本来の物ではないのはわかっていた。それでもあれだけの形に出来るのだから完成すればもっと凄い事が体感できるだろう。


「俺も……練習しておかないとな……」


 そう呟くと、俺は別の部屋でスマートフォンで音源を流し練習をする事にした。


 ボーカロイド……DTMと呼ばれる打ち込み系のサウンドで、ベースとしてはそこまで難しくは無い。強いて言うなら腕の数やドラムセットの場所を考慮しない打ち込みのドラムやそもそも音源に無いギターフレーズを作る方が時間はかかるだろう。


 この曲は、基本的には8ビートで刻む、縦のリズムが大事なこのアレンジは慣れた物だ。


「俺はいいけど……YOUさん、どうする気なんだろう? まぁ修二は刻みながらメロディを要領良く入れるアレンジをするだろうな……」


 以前、3PAINのときに見たYOUさんはまさに自由の塊の様なドラムだった。練習ではボーカルが決まっていなかった事もあり詰めるより全体を意識して細かい事はしていない様にも思える。


「そう考えると、まだまだ伸び代があるんだな」


 そのまま日付が変わるまで練習をする。いつでもスタジオで弾けるくらいまでは覚えたところで俺はベッドに横になった。


♦︎


 次の日、少し早く目が覚めるとナルタナの声が聞こえて来る。何か話している様な語りかける様な口調に少し怖くなった。


「ナルタナ?」


 俺の問いかけにも返事はなく、そのまま語りかけ続けた。しばらくしてナルタナの声が聞こえなくなると彼女は俺に話しかけた。


「奏さん、おはようございます」

「あ……おはよう」


「すいません、朝の祈りをしていたので」


 彼女は聖女なのだ。朝の祈りくらいするだろうと特に気にならない事だと思う。


 俺は普段通りに洗濯機を回す。ナルタナはその間にコンビニに朝ご飯を買いに行くと言った。


「昨日のところにパンを買いに行ってもよろしいですか?」

「そしたらこれで買ってきてよ」

「これは?」


 俺は、小さい皮の小銭入れ用の財布にお金を入れておいたものを渡す。


「共用の財布。俺のとナルタナのから1万づつ入れているからご飯とか一緒に使ったりする物はこれから出す様にしようぜ?」

「はい、その方がわたしも助かります」


 俺は気を使いがちなナルタナが納得しそうな形を考えていた。彼女はそれを持つとコンビニに出かけて行った。


そうする事で、ナルタナは欲しいものなんかを言いやすくなるし、確認もしやすくなるだろうと思う。


「まぁ、大丈夫だよな?」

そんな事を考えながらインスタントコーヒーを入れる準備をする。周りをみると綺麗に片付けられた音楽プレーヤーが見える。イメージ通りというのか、整理整頓をしっかりしてそうな感じはする。


 それとはべつに彼女はいつも俺の後に寝て、俺より先に起きている事に気がつく。プレーヤーが、片付けてあると言うことは、練習を終えてから寝ている可能性が高い。


「それでもあいつ、いつ何処で寝ているんだ?」


 そんな独り言を呟いているとコンビニからの帰って来た。


「お帰り、大丈夫だった?」

「はい、奏さんはおにぎりで良かったですよね?」

「ああ、覚えてたんだな」


 ナルタナの買ってきたおにぎりを食べ終わると、歯を磨き洗濯物を干し始める。彼女はまだパンを食べている様でベランダからその姿が見える。


 ふと、洗濯を一通り干し終えるとと違和感を感じた。本来あるはずのアレが無い。別にそれを見たいから干していた訳では無いのだが少し気になった。


「あのさ……ナルタナ?」

「ふへ?」


 ナルタナは歯磨きしている様で歯ブラシを咥えたまま返事をする。


「あのさ、ナルタナの下着は自分で洗っているのか? いや、別にそれならそれでいいんだけど……」

「ひたぎ? はいへふか?」


「あ、歯磨き終わってからでいいよ……」


 ナルタナはコクリと頷くと、口を濯いだ。

「ちょっとまて、ナルタナその歯ブラシ俺のじゃないか?」

「ダメでしたか? ナイフの変わりみたいな物で奏さんがしていたのでしなければならないのかと……」


 ナイフ? ナルタナの世界ではナイフで歯磨きするのか?


「いや、俺は別にいいんだけ……いや良くない、引き出しに新しいのが入っているからそれをナルタナ用にしていいよ」

「ごめんなさい……専用があるのですね」


 正直ここまで違うのかを思う。ナイフという位だから食器と同じ感覚だったのだろうか。


「歯磨きの事はいいんだけど、もしかして下着自体ナルタナの世界には無いのか?」

「その、Tシャツというのとレギンスというのがそれに当たるのではないですか?」


 なるほど、形が全然違うと思った訳だ!という事は彼女は今ノーブラノーパンなのか? 心の奥底の理性が流石にまずいと訴えかけてきた。


「そうじゃ無いから、また今度買いに行こう!」


 俺は少し思考停止していた。どう見ても現代人にしか見えない彼女は文化が違うのだ。修二が心配していたのはこういう事も含んでいたのか?


 出身を聞いた時に文化や時代の感覚を聞いていても修二ならおかしくは無いと思った。


 俺は少し不安になりながらも、バイトに行く事になった。何があるかわからないと思いながらも携帯すら持っていないナルタナには留守番をしていて欲しいと伝える以上の事は出来なかった。


 バイトに向かう途中、修二に連絡する。

「修二? 今大丈夫か?」

「おお、今からバイトじゃ無いのかよ?」


「そうなんだけどさ、とりあえずナルタナには留守番する様に伝えているんだよね」

「まぁ、それくらいしかできないよな」


「でも、彼女は真面目だから大丈夫じゃ無いかなと……」

「ナルタナちゃんが真面目? そうかなぁ結構ぶっ飛んでいる様に見えるけどなぁ」


「そうかなぁ……」

「だって、奏の家にすんなり住むんだぜ? しかもそれ以外でも大分順応してるし、彼女の世界はもっと融通が効いた世界だったんじゃ無いか?」


「なるほどなぁ……」

「でも、だからといって留守番しろって言うのはその辺り考えても守りそうだから大丈夫だろうけどなぁ」


 俺は修二の言葉に少し安心した。多分そうやって安心する理由が欲しかったのだ。


 だけど、俺たちの予想は裏切られ、バイトを終え家に帰ると部屋にはナルタナは居なかった。

最後までありがとうございます!

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