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嚙む
冬に騙されていたい
この肌を嚙んでほしい
そうすることが存在の確かめ方
ここにいるっていってよ
脈動と並ぶ鳴動の先へ
反転したって 世界はやさしくならないから
この肌を嚙んでほしい
跡が残るように強く
歳をとると
目が見えなくなっていき
やがて指が細り
醜い悪魔へと身も心も成り果てるなら
いまちょうど 美しいだけのわたしを
只管に愛してほしいの!
――コンクリートの中に
――埋めた夢が腐らずにまだ
――わたしを待っている気がする
冬に騙さていたい
この肌を嚙んでほしい。