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魚の夢
冬は具体
くっきりとした輪郭があり
目の前にそれはある
雨としてではなく
寒気としてではなく
冬はそれ自身として
あきらかに具体
体感温度の下降と
きみの熱のたしかさ
たかだか二十平米もない部屋で
窮屈そうね 哀しそうね
笑みを見せないように唇の人差し指
窓が雨に濡れて
まるで外界は海のように
果てしなく海
冬は具体
いいようもなく具体
鋭い冬の針々が
身を劈いてやまない
みすいの夜に沈んでいく
あすの朝は戯けのふり
魚は夢を見る
どうして魚であるのか
しらない
きみの熱だけがたしか