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心臓
つめたく
しんと尖った
窓のつめたさに
布巾ごしで ただ
ゆきの粒粒をかぞえている
いつからか気圏とよばれたそらから
ほんのいっしゅん積るためだけに
雪はしゃらしゃらと降ってくる
突っ立った郵便受け
雪道のバイク
味のうすい胡麻和え
置き去りの自転車
この
冷めきった世界のすみで
どれだけの冬を
ゆきの粒粒を
かぞえたままでいよう
草木はとっくに枯れてしまった
どこかからサイレンの音が聞こえる
寒さは肉体の末端から
徐々に心臓へと手を伸ばす
それはきみの心臓を掴む
きみの心臓をいつか。