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コミュ症作家の恋日記  作者: ディーノ
【第一章 神の哀れみ】
2/4

二日目 暗影渦巻く悪魔の巣窟への道

(あらた):......なんじゃこりゃ?

(こいずみ):まぁ、驚くのも無理はないだろう。ここはいわゆるVRワールドというものだ。

新:え?現代の量子力学とか生物学とか電子工学ってそんなに発達してたっけ?

古:嘘だ。

新:なんだよ!

古:正直、俺も大きく驚愕していることを認めざるを得ないな。

新:あれか?最近ではお馴染みの異世界転移ってやつか?

古:だろうな......、ん?なんだこれは?

新:紙か......?なになに、「茶番が長くなってしまい申しありません。ここからあらすじをとなると私のクソザコナメクジな文章力によって大変gdgd化してしまいます。恐れ多きながら、このまま本編へとばされることを推奨致します。ただ『は?もうgdgdなんですけどwマジちょーつまんないしー。時間の無駄じゃん。ブラウザバックしちゃおーwww』とかはダメ!!ゼッタイ!!今ブラウザバックしようとしたやつもう絶交な。一生話しかけてやんないもんね。しようとしなかった人は大好き。結婚しよう。式はどこで挙げる?俺は沖縄とかいいと思うんだよね。浜辺の教会って素敵じゃん?あ、ケーキカットは絶対にも忘れずにね!最近やらない人多いみたいだけど、夫婦初めての共同作業っていったらコレしかないっしょ!って、もう尺がヤバヤバじゃん!!やっぱあらすじすらしないわ!前回分かんないやつは見直してどうぞ」?なんだこれ。失礼にも程があんだろ。

古:最後に「本編をどうぞ」って書いてあるみたいだな。ど、どうぞー。

 さて俺は先程執筆活動を仕事と述べていたが、厳密に言えば仕事でもなんでもなくただの趣味なのだ。

 最近では評価もそれなりに上がり、総合ランキング第76位を頂いた。とは言いつつも、まだまだ小説家というダンジョンの入口にすら着けていない状況が故に、別に今すぐにでも執筆を止めることはできるのだ。

 しかし俺は断じて執筆の手を、いやタイピングの手を止めてはならない。

 理由なんぞ至って簡単。俺には現実世界における俺をよく知った上で、俺の小説を楽しみに待っていてくれる大切な読者様がいるからだ。

 その天使のようなお方の名は――


「......い、おい!!」


 突然、左耳に大音量が響き俺を惑わしていた睡魔を遠ざける。どうやら俺は、半分程眠りに落ちながら自転車に乗っていたらしい。


「おいお前、居眠り運転とか危険にも程があるだろ?」


 どうやらこの男は、本気で俺の心配をしてくれているらしい。恐らく今俺の左を走行中の彼が、俺から極悪非道な睡魔を遠ざけてくれたのだろう。感謝せねばなるまい。


「ありがとう、新田」


 新田昌志(あらたまさし)。それがコイツの名前だ。俺と同級生で俺が小5の頃引っ越してきたとき以来の付き合いだ。

 新田は俺にあのネット小説投稿サイトを紹介した張本人であり、執筆活動を共にする小説家仲間でもある。俺は未だにサイトで修行中なのにも関わらず、コイツは年中どこかの大賞に応募する作品を作り続けてるんだから大したものだ。

 ついでにいえば柔道部と相撲部の掛け持ちで、どちらもそれなりの実力を持っているスゴ腕スポーツマンという顔も持っている。

 と、こんな多面体の新田ではあるが一応欠点もあり、それを言うと物凄く面倒くさい事態になりかねない。


「なーお前、好きな人できたか?」


「......できない......。あー、恋してぇ!!なんとか恋してぇ!!彼女がほしいー!」


 こんな風に。


「お前はいいよな!彼女とは言わずとも好きな人がいてさ!!」


「あーはいはい、そうですねー」


「流すなよー」


「間違っちゃいないけど面倒くせぇ」


 そうやっていつもとなんら変わりなく会話を続けていると、いつの間にか目的の建物が見えてきた。


「あー、あの純白の校舎は闇の住人である俺達には眩しすぎる。だから二人で帰って学級文庫大賞2018に応募する作品を書こうじゃないか」


「独りで書いてろよ。俺には会いたい人がいるから帰らないぞー」


 そう呟きながら、俺は建物の壁に掛けられている時計を見た。針が7時50分前後を指していることを確認するとほんの少しペダルを漕ぐ足に力を入れる。


「おい悠兎、お前あと15分で着席しないと遅刻だぞ!」


「えい......、俺はそこまで足遅くないと思うんですが......」


「ごちゃごちゃ言うんじゃなぁい!!」


 ニヤニヤ笑いを浮かべる新田を横目に、俺は後ろから聞こえるうっとおしい......、いやありがたいお言葉を大変粗末にも聴覚から遮断しようと試みる。しかし俺の思いとは裏腹に、我らがサッカー部顧問クソ赤城治喜(あかぎはるのぶ)様のお声は山のように巨大だったのだ。


「やっぱサッカー部の顧問はおっかねぇなぁ」


「ホント、やめてほしい。15分あれば余裕だっての」


 善き目覚ましに怒鳴られながらもようやく駐輪場に辿り着いた俺達は、また耳を痛めるのはごめんだとでも言うように(実際言ったのだが)いそいそと教室に歩を進めた。

 俺の教室は2年2組、新田の教室は2年1組のためコイツとは途中で別れてしまう。そう、俺はたった独りで暗影渦巻く悪魔の巣窟へと足を踏み入れねばならないのだ。と言っている間にもそれは時々刻々と迫ってきている。

 そして遂に問題の場所へと来てしまった。


「んじゃ、また後でな」


「あぁ、んじゃな」


 新田に一時の別れを告げると、俺は全身をかけてドアを開き全霊をかけて一歩踏み出した―― 


「痛ッ!?」


「よっ、おはよ」


 俺は背中に激痛を感じつつ、呆れの思いを息に込めて吐き出す。

 そら、悪魔のお出ましだ。

(あらた):いやー、長くね?

(こいずみ):「致し方無いことだ。第二話というのは全話中で最も長い説明回なのだ。ゆるしてにゃん☆」って例の紙には書いてあるが。

新:いやそれ絶対に怪しいって。こんな何もない真っ暗な空間にポツンと置いてあるのって、大抵物語を進めるキーアイテムじゃん。

古:ってことはこれを手に取ったことによってストーリーが進んじゃったってわけなのか?

新:恐らくな。とにもかくにもまずはこっから出る方法を考えないとな。

古:ん?今度は上から紙が降ってきたぞ。

新:おう、どれどれ......、「とにもかくにも、まずは角煮を食べることだ。なんちゃって☆」......。悠兎、これ破いていいか?

古:あぁ、いいんじゃん?って、また上からかよ。どれどれ、「そんなことをしちゃっていいのかい?君達がここから出られるヒントが隠されているかもしれないんだよ?」だってさ。

新:なるほど、つまりこれの差出人が俺達をここに転移させた張本人ってわけか。

古:いや、そうとも限らない。今はまだ関係者という位置付けが正しいかな。

新:ん?ありゃなんだ?さっきまであんなのなかったぞ。

古:あれは......、木製の看板か?近付いてみるか。

新:読むの面倒だな......。「本日は本作品を御覧下さり誠に有り難う御座いました。今後とも本シリーズを宜しく御願い致します。次回に皆さんと再び出会えることを心より願い、結びとさせて頂きます。本日は誠に有り難う御座いました!!」かぁ。なんだかんだまともだな。

古:本作品......?もう少しこれを調べてみよう。なにかが分かるかもしれない。

新:ん、あぁ。よっし、頑張るかー。

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