#29 森とローザと誘拐犯
昨日許可を貰ったので早速ダンジョンだ。
ローザも行きたがったので一緒に連れてく。
「ローザはここのダンジョンは初めてなのか、試しに入ったりとかしなかったんだ」
「一人でダンジョンに入るのはちょっと無理です、普通はパーティーを組みますよ」
「そう言えばそうか、つーかお前は何でメイド服なんだよ、普段はいいけどこれから行くのはダンジョンだぞ、装備一式あげたよな?」
「貰った装備はもったいなくて使えないです、大切にとっておきます、それにタツキ様は人の事言えませんよ」
言われて自分の姿を確認する。
この前作った白のロングパーカーに黒い姫タイツ、モチロン短パンは履いている。
黒いブーツも竜革で作り直してレッド製の板を何枚も埋め込んでいる。
それと竜革で作り直したベルトにいつもの装備だ。
髪はポニーテールにまとめて慧眼鏡もしているし、マジックバッグの腕輪もしている。
まぁ武器はまだ出してないからダンジョン探索装備には見えないな。
「俺はしょうがないんだよ、つーか使えよ!壊れたらまた作るから」
「一応持ってきてますよ、でも私はタツキ様のメイドです、この服がいいんです、それにこの服かなり丈夫ですから」
「まぁ丈夫だけど、俺と並ぶとただの女の子二人組じゃん、ダンジョン入る時も受付の人達、変な顔してたぞ」
「気のせいです、それよりテルミーナ様との修行の成果を見てくださいね」
「まぁいいや、どれだけ頑張ったか見せてくれ」
「はい」
受付で聞いた情報では、エルニアのダンジョンは『森林の迷宮』と呼ばれている。
最高到達階層は37階層。
主に虫系や獣系の魔物が多いらしい。
階層全てが森らしく、大体が大木の根本に下層への階段があるらしい。
五階層毎にボスの魔物が階段を守っている。
「俺の出番無いな」
「あんまり強い魔物はいないですね」
三時間くらいで4階層まで進んで来たが、出てくる魔物全てをローザは魔法一撃で仕留めていく。
ローザは魔力の放出量が多いので、色々な魔法を同時に撃ち即座に殲滅していく。
打ち出す速度も上がってるし、ローザもかなり頑張ったんだなぁ。
「そう言えば、あれからまた魔力増えたのか?」
「はい、まだ持ちますよ、魔力が切れたらお願いしますね」
「いいよ、そろそろ変わろう、ぶっちゃけ暇だから」
「そうですか、じゃあお願いしますね」
「おう、任せとけ」
それからは俺が前に出て戦っていった。
見た目12才くらいの女の子に戦わせて後ろで見てるのも罪悪感あるしな。
それよりもダンジョンの中は森なので、屋敷周りの森で戦ってきた俺には懐かしく感じる。
魔物もそこまで強くないので魔銃で撃ったり、接近して斬ったり殴ったりいつも通りに戦っていく。
ダンジョンで魔物を倒すと一部の素材と魔石に変わるので解体の手間もなく順調に進んでいく。
一日目は13階層の広めの安全地帯で結界を張り、ワンルームを地上に出して休むことにした。
「相変わらず凄いですね」
「何がよ?」
「戦いもそうですけど、作るものが凄いです!」
「だって落ち着いてお風呂入りたいじゃん、ローザだってそうだろ」
「入りたいですけど、それを実現させちゃうのが凄いです」
「クリーンの魔法でもいいけど、やっぱり湯船が一番だからな、さぁ今日は冒険は終わり、ゆっくり休もう」
「はい」
その後、食事をとり風呂に入りソファーで寛いでいると、
「タツキ様はムラムラしないんですか?それとも『呪い』のせいで性欲無いんですか?」
「ブハッ、ごほっごほっ、突然何言い出してんだよ!」
「だってテルミーナ様や私たちに全然手を出さないじゃ無いですか」
「いやいや、だってまだみんな子供じゃん、俺的にはまだそういう対象じゃ無いんだよ、何よりそう言うのは心に決めた一人とするもんだ」
「テルミーナ様も私達も望んでるのにですか?それにみんな問題無い年ですよ」
「何それ?テルともそんな話してるの?つーかお前酔ってるのか?」
「酔ってますよ!全然手を出してくれないんですもん、それに私ももう18才ですからね、子供だって産めますよ」
「もうお前らもそんな年なんだな、まぁこの世界では一夫多妻も普通なのは知ってるけどなぁ、つーかお前らの中には男もいるじゃん」
「そうですけど、ロイとクリフも全然大丈夫です」
「いったい何が大丈夫なんだよ(汗)・・・俺は一度地球に戻ろうと思ってるから無責任な事は出来ないよ」
「それじゃあ私たちの気持ちはどうすればいいんですか?私たちはどうやって恩返しすればいいんですか?」
「恩返しって(汗)十分返して貰ったよ、お前らが来てから屋敷での生活も楽しかったし、色々手伝ってくれただろ、家族が増えたみたいで嬉しかったよ、テル達も楽しそうにしてたしな、だから恩返しは十分してもらってるよ、それに恩返しでエロいことされても俺は嬉しくないよ、そういうのは好きな人が出来た時の為に取っておけよ」
「そうなんですか?」
「そりゃそうだよ、義務感や商売も否定はしないけど、相思相愛が一番だろ」
「タツキ様はみんなの事好きですよね」
「そりゃ当たり前だろ、それより錬金術の修行は上手くいってるのか?」
「はい、中々筋がいいって誉められました、でも1つ分からないんですよね?」
「何がだ?」
「何で失敗すると爆発するんですか?」
「あ~それは俺もエリーさんも分からない(笑)そう言うもんだと思っとけばいいさ」
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次の日の探索中
「何もしてないよな?」
「ご想像にお任せします」
「お前、マジで答えろよ」
「うふふ、内緒です」
朝起きるとローザが下着姿でベッドに入り込んで来てた。
早く鍵作ろう、そして今回のダンジョンではもう寝ない!
ホントに知らないうちにパパは嫌だぞ。
そんな事になるならせめて楽しみたいぞ!
・・・違う違う、そうじゃない!
取り敢えず忘れよう。
探索に集中だ。
15階層から下は罠が増えてきた。
変なガスを撒いてくる樹木や落とし穴からの蟻の魔物の大群。
嫌らしい魔物も増えてきた。
「「ひぃぃぃッ」」
思わずローザと二人で叫んだ。
大きさ50cm程のゴキの大群だ。
ダンジョンの森の中の開けた所に出たと思ったら、一面黒い絨毯みたいにビッシリいよった。
100匹以上はいたな。
すぐさまローザと二人で火の玉連発して焼け野原にしてやったけどあれはもう見たくない(汗)
その後も順調に進んでいき、29階層で一夜を明かした。
もちろん俺は寝なかった。
暇だったから工房で魔道具をひたすら作ってた。
そして3日目におかしな事が起きた。
「変な反応あるな」
「どこですか?」
「そこの壁に妙な魔力か見えるぞ」
「・・・本当ですね、タツキ様はこの魔言語読めますか?」
「偽装と結界っぽいんだけど一部間違ってるんだよな、そのせいで魔力が漏れてるんだろう」
「良く読めますね、私も魔法の定型文は何とか覚えましたけど流石ですね」
「魔道具作りやってれば覚えていくもんだよ、それよりもここは何だろう?」
妙な反応があったのは31階層に入ってすぐの壁だ。
30階層の転移魔方陣から階段を下りたすぐの場所だった。
「確認してみますか?」
「そうだな、まずはこの魔法を解除してからサーチだなぁ」
魔力を込めた『桜』で斬ると魔方陣は霧散した。
「便利な刀ですね」
「そうだな、作った時は魔法まで斬れるとは思わなかったよ、それよりも中に人っぽい反応が複数あるぞ」
「本当ですね、皆さん随分魔力が多いようですが?何かの集まりですかね?」
「集まりにしては固まり過ぎだろ、みんな引っ付いてる、それよりも離れた所にも数人いるな、そっちの魔力は普通だぞ、もしかして拐われた人たちか?」
「どうしますか?」
「魔方陣斬っちゃったからな~、いずれ見つかった事に気付くよな、・・・ちょっと中見に行くか、ローザは後ろから付いて来い」
「分かりました」
それから洞窟の様な場所に入っていく。
洞窟の中もダンジョンの一部らしい。
一本道を進み、反応の多い広間に行くと10人以上のエルフが縛られて拘束用の首輪をされて捕まっていた。
「見張りはいないな」
「向こうの部屋に数人いますよ、多分油断してるんだと思います」
「じゃあ先にそいつら捕まえとこう」
『パンッパンッ』
手加減用の魔銃で通路から見えたやつらを倒していく。
「グワッ」
「何だ!」
「敵襲だ!」
結構いるな。
「ローザ殺さずに制圧だ」
「はいっ!」
俺は木刀(手加減)と『蒼』で切り込む。
こういう時は『蒼』は便利だ。
武器や防具は斬るけど人は斬れずに衝撃だけ与える。
『ゴンッ』「ぐあっ」『スパンッ』「えっ」『ゴンッ』
ローザが合間を縫って弱めの電撃を飛ばす。
そしてリーダーっぽい一人を残して確認する。
「お前らが誘拐犯だな」
「・・・・」
「腕の一本でも斬ろうか?そしたら喋るかな?」
「そうですね、それとも燃やしましょうか?」
「待てっ!俺にそんな事をしたら国際問題だぞ!わかってるのか!」
「知るかよ!お前が誰かも知らねぇよ、早く喋れよ!」
「誰が話すものかっ!」
どうしよう、これ(怒)
やっぱりこの姿で凄んでも効果無いか。
成竜はもう解体しちゃったしな・・・。
そうだ!威圧ってスキルあったな。
確か敵意や殺意を意識するんだっけ?
敵意を意識するってどうすんだろ?
取り敢えずやってみよう。
殴る、殴る、殴る・・・・・・・
あれっ?動かなくなったな。
効いてないのか?それとも出来てないのか?
「タツキ様、どうか抑えて下さい」
「えっ、何が?」
「タツキ様の威圧が私にも漏れてきてキツいです、その男はもう気絶してますからもう止めて下さい」
「そうなの!止める止める、止まった?」
「はい、もう大丈夫です、それでどうしましょう?」
「取り敢えずこいつら縛っといてくれ、起こしてもう一度聞いてみよう」
縛った後で軽く殴って起こす。
『ゴンッ』
「イタッ」
「起きたな、さぁ話せ」
「・・・・・・」
『ゴンッ』
面倒なのでもう一度軽く殴る。
「貴様っ!無礼だろう」
「うるせぇよ犯罪者、何が無礼なんだよ」
「貴族に手をあげるのは無礼だろう」
「ほ~貴族さんですか、まさかダリス帝国の貴族か?」
「その通りだ!分かったなら縄を解け!」
「本当にお前貴族なのか?何でこんなダンジョンの奥に居るんだよ」
「それは、我らの崇高な使命の為だ」
「・・・まさか反乱軍の一味か?」
「反乱軍のなどと呼ぶな!我らは魔族を討とうと聖戦を起こした勇士だ」
「つーかお前らの言う魔族って何よ?」
「獣擬きの獣人やオーガ擬きの鬼人どもの事だ、亜人種も奴等と仲良くしている他国も同罪だ、この世界は純粋な人族によってこそ支配されるべきなのだ」
うわぁ~、初めてだ。
この世界に来て初めて人を殺したいって思った(笑)
「我らは神から神託を賜ったのだ、魔族を滅ぼせと!貴様にわかるか?これは聖戦なのだ」
殴りたいのを我慢して聞いてみる。
「その聖戦でなぜエルフを拐うんだ?」
「エルフは生け贄だ、膨大な魔力を使い異界から神の眷族を召喚するのだ!もちろんエルフは魔族では無いから殺しはしない、魔力の供給をしてもらうだけだ」
こいつらの言ってる神って邪神の事か、眷族はこの前の正体不明のあいつか。
邪神に利用されてるのかな?
でも元から腐ってる所を利用されてるんだろうな。
つーか本当にこいつ斬りたい!
取り敢えず木刀で殴って気絶させる。
「タツキ様、捕縛と拐われてた人たちへの説明はしてきました」
「ありがとうローザ、こいつどうしようか?」
「心情的にはこの場で殺してもいいと思います」
「俺もそうだよ、でも女王様に渡した方がいいだろうな」
「そうですね」
「つーか何でここまで歪んだ思想になるんだろうな?聞いてて気分悪くなったわ」
「そうですね、種族的な劣等感からの選民思想でしょうか?」
「劣等感?人族がか?」
「はい、一般的に人族は良く言えば平均的、悪く言えば特出した所がない種族と言われています、それを気にしすぎる人が差別したりするんでしょうね」
「ローザ、お前いきなり知的な発言するな」
「こう見えてお姉さんですから、それにエルフにも傲慢な人がいるでしょう、少し考えた事があるんですよ」
「は~、人族同士でも違いはあるのにな、所詮はスタートラインの違いだろ、平均なんて最高じゃん、何でも目指せるじゃん」
「お屋敷に居たときにそれは痛感しました、何よりもその後の努力なんですよね、今では私もかなりの腕力になりましたから(笑)」
「まぁぶん殴って叱ってくれる人がいなかったのかもな」
「『ぶん殴って』は要らないですよ、それよりこれからどうしますか?」
「ダンジョン探索は中止にして一旦帰ろう、流石に大所帯過ぎる」
「分かりました」
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「エリーさん、ただいま~」
「あらっ早かったわね・・・・・何よその人たちは?」
誘拐犯と被害者たちを誰に渡したらいいか分からなかったのでまとめてエリーさんの屋敷に連れてきた。
つーかエルフにも協力者がいそうだから念のためだ。
ダンジョンの入り口で色々合ったがエリーさんの名前を出して押し通した。
なので30人程の大所帯で押しかけた。
「ダンジョンで見つけた誘拐犯と被害者たち」
「何でそんな事になるのよ!それにどうしてここに連れてきたの?」
「なんかエルフ側にも協力者が居そうなんだよ、何よりもエリーさんなら信用出来るから」
「それじゃあ仕方ないわね、早速マリーに連絡をするわ」
「任した!じゃあダンジョン帰るわ」
「待ちなさいよ、色々聞きたいこともあるし、恩賞とかもあるから居ないと困るわよ」
「え~、魔石まだ集まって無いんだよ、あと少しだから早く採りに行きたいのに、・・・・ローザ説明とかは任した!」
「分かりました」
「分からないでよ、ローザはタツキを止めなさいよ」
「生憎と止める方法が無いです、タツキ様は面倒事は嫌いですし、何より止まると思いますか?」
「・・・そうだったわね、何とかしとくから早く帰って来なさいよ」
「エリーさんありがとう、すぐ帰るわ」
「それと帰ってきたらマリーに会ってあげてね」
「あいよ、じゃあ行ってきま~す」
そうして俺はダンジョンに一人戻った。




