#15 貴族と病気とハイ・ワイバーン
「ヒャッホ~~」
スッゲー気持ちいい。
試運転はしたけどここまで速度を出した事は無かったからな。
風が気持ちいい。
地面に接地してないから振動で尻が痛くならない。
地面から50cmほど浮いているので、目立たないように街道から離れて走れる。
こうして遠出をしてみると、あのダンジョンと森は、魔物が強かったんだと思う。
ダンジョンから半日程走ったがもう魔物は少ない。
出てきても小さい
まぁ1mから2mはあるが遅いし、力が弱いし、軟らかい。
まだダンジョン一階の角ウサギの方が強い。
食料の心配はないが、良い素材を少し期待してたので残念だ。
一応旅の目的は3つある。
・地球人の行方
・エリーさんに挨拶
・まだ見ぬ素材を求めて
あともう少ししたら野営をしよう。
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そして野営の魔道具も作った。
名前は【ワンルーム】と呼んでる。
ゆっくりお風呂に入りたかったし、安心して寝たかったので、コンテナ型で広いマンション風の部屋を作った。
外壁は固い金属製で出入口は上だ。
これを地面の土と入れ換えて設置する。
つまり地下室だ。
一応地面の上でも使えるように、横にも入り口はある。
俺のマジックバッグの収納力(魔力総量)にかなり余裕があるから出来た芸当だ。
・・・収納の限界は計ってない。
つーか計り方が分からなかった。
まぁその内限界がきたらわかるでしょ。
ちなみにマジックバッグは魔道具なのだか厳密には時空間魔法の制御端末だ。
時空間魔法は特殊な魔法で、時間や空間の概念がしっかりイメージ出来ないと魔方陣を描いても発動しない。
そして発動しても亜空間に入っているものを把握していないと取り出せない。
魔方陣を弄れば中のものを確認することも出来るが、毎回魔方陣を描くのが面倒なので作った。
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「ふい~~~」
やっぱり風呂はいい。
石鹸などは錬金術を利用して作ったし、かなり自分の周りは便利になってきた。
この世界に風呂はあまり普及していない。
トイレも水洗ではないし、ボットンだった。
魔道具や錬金術でこのワンルームは地球の現代風にしてある。
屋敷もある程度ジルさんと改造した。
風呂から上がり姿見の前でポージングしてみる。
それにしても俺の体は鍛えがいがない。
鏡で体を見ても力を入れないとムキッとならない。
鍛えれば力や体力はついていくのだが、見た目が全く変わらない。
線も細いし、・・・・・まぁ呪いの事を考えれば都合はいいか。
寝る前に工房でマジツクバッグの改造をする。
これまで音声で防具や武器をセットで取り出して、自動装備出来ないか試行錯誤していた。
基本的に鎧や兜等の装備品は可愛く作れなかったが、旅に出る時にジルさんとテル、ミカさんの3人で可愛い防具を作ったらしく、プレゼントしてくれた。
その時ジルさんと話して、解決案があったので、早速やろうとしている。
そんなこんなで寝るまで改造をしていた。
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翌朝から浮遊バイクで疾走している。
そして魔物を狩りながら進むと遠目に街?が見えてきた。
四方を高い壁に囲まれた砦のような物々しい雰囲気だ。
国境の街だからかも知れないが、街の壁の更に外周には木でできた柵のようなものまであり、その間には堀まである。
あれが【ダリス帝国】の国境の街【トリカール】だと思う。
方角はあっているはずだから多分トリカールだよね?
ちょっと不安になってきた。
そういえば地図欲しいな。
米と一緒に探してみよう。
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人目につかない場所で浮遊をバイク降りてから街まで歩いていく。
その道中にも馬車や多くの人々がトリカールへ向かって行くが、人族しか見当たらない。
少し不思議に思いながら順番待ちしているとやっと俺の番が来た。
「身分証を提示して下さい」
「はい」
「・・・・・・ちょっと待ってて下さい」
後ろに順番待ちが並んでるのに5分待ちぼうけ・・・・。
ギルドカード使えねぇ。
名前書いてお金払う方が楽だな。
「お待たせしました、確認が取れましたのでどうぞ」
ギルドカード返された、行っていいのかな?
「はいどーも、行っていい?」
「はい、お通り下さい」
いきなり仰々しくなったな。
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街の中ではいつも通りコートの前を閉めてフードをかぶる。
外とは違い街の中は普通だった。
アトランの街に似ているな。
違うのは街の人々だ。
人族がやたらと多い。
アトランに慣れてたせいか少し違和感があるな。
取り敢えず大通りを進み、まずはゴルさんに言われた通り冒険者ギルドに向かう。
ゴルさんがここのギルドで、地球人達の情報をもらえるようにしてくれているからだ。
後は道中の素材の買い取りかな。
トリカールのギルドはアトランと似ていた、まずは買い取りだな。
「すいません、買い取りお願いします」
「はい、ギルドカードはごさいますか?」
受付の女性にはウサミミがあった、そして巨乳の美人さんだ。
獣人さんは種類多いな。
そしてギルドは美人ばかり雇うのかな?
「はい、素材が多いので倉庫で出しましょうか?」
ギルドカードを出す。
「はい、確認しま・・・す」
「それと後である人たちの情報が欲しいんですが、どこで聞けばいいですか?」
「・・・・・・倉庫で素材の買い取りの後に、個室にて対応します」
「わかりました、じゃあ倉庫行きましょう」
そして倉庫で素材を出す。
ごまかす為にバッグから出すように見せる。
魔物のサイズが小さいので、今回は大型トラック1台分位だ。
因みに解体はしてない。
だって欲しい素材無いからヤル気出ないし。
「これで全部です」
「・・・・・・・・・」
「どれくらい時間かかりますか?」
「・・・・・・・あっ、時間ですね、多分明日の昼頃です」
「じゃあそれでお願いします」
「すいません、こちらの魔物はどこにいましたか?」
受付のお姉さんが指差したのは4m位のトカゲモドキだ。
こいつは大きかったが、動きは遅いしそんなに強くなかった。
「ん~、この大きなトカゲですか?」
「はい、この地竜です」
「地竜?これが竜?」
慧眼鏡に魔力を通して鑑定してみると確かに【地竜】と出た。
「そいつを狩ったのは、この街から100kmくらいの場所ですよ、街道からは離れた場所です」
「そうですか、他にはいませんでしたか?」
「見える範囲にはいなかったですよ」
「ありがとうございます、街から離れた場所なら大丈夫です」
街に近いか気になったのか。
「街の近くにはたいした魔物はいなかったですよ」
「ありがとうございます、では個室にご案内します」
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個室はゴルさんの部屋に似ていた、ただここは女性っぽい。
カーテンの色や小物にそんな感じがする。
・・・・それにしてもギルドマスターって待たせるな~。
まぁ忙しいだろうし待つか。
「待たせたわね、トリカールのギルドマスター、マリアナよ」
「初めまして、タツキです、お忙しいところすいません」
「あなたがゴルディアスがAランクに認めたタツキね」
「多分そのタツキです、ゴルさん知ってるんですか?」
「まぁ昔の仲間よ、それよりあなたは何者なの?」
「ゴルさんに聞いてません?つーか何者と言われてもどう答えればいいか?」
「ゴルディアスには、迷い混んだ地球人ということと、新たなダンジョンを見つけた、後はかなり強いらしいくらいね」
「そんな感じですよ」
「その強さが問題なのよ、地竜は単独で討伐出来る魔物じゃ無いわよ」
「??まぁ多少硬いし、力は強いですけど、鈍いし、遠距離無いし、そこまでですか?」
「確かに動きは速くないけど、硬さよ、普通の武器は通らないわよ」
「刀で切れたし、魔銃も通用しましたよ」
「・・・ちょっとその武器見せてくれる」
「いいですよ」
『ゴトン、ゴトン』
武器を出すとマリアナさんは手にとって見始めた。
つーか真剣に見てるな。
・・・暇だ!
「まだですか?」
「これどこで買ったの?ちょっと見たこと無いんだけど」
「俺が作ったんですよ」
「作ったの!」
「そうですよ、売り物はあんまり質が良くないし、服や魔道具作るついでに」
「ついでで出来るもんなの?」
「出来たからいいじゃないですか、気にしない、気にしない、それより地球人の情報は?」
「・・・・あなた軽いわね、まあいいわ、情報ね、ゴルディアスの頼みだから教えるけど条件があるわ」
「どんな?」
「まずギルドから聞いたと言わない事」
「もちろん、いいですよ」
「後は1つ依頼を受けて欲しいの」
「・・・依頼の内容は?」
「とある人物の病気の治療と、それに伴う魔物の討伐よ」
「とある人物?誰?」
「それは依頼を受けないと話せないわ」
「・・・・治せない病気もありますよ、つーか俺の専門じゃ無いし」
「もちろん治療師はこちらで用意するわよ、メインは素材の採取」
「病人には会えますか?」
「もちろん受けてもらえれば顔合わせはするわよ」
「じゃあいいですよ、やってみます」
「本当にいいの?魔物の名前を言ってないわよ」
「あぁ、どんな魔物ですか?」
「ハイ・ワイバーンよ」
「・・・言いにくい名前、どんなやつです」
「姿形はワイバーンだけど、サイズが2倍くらいね、ブレスまで吐くわ」
「そいつの居場所はわかりますか?」
「ええ、街から北の山、山頂付近に巣穴があるわよ」
「了解です、顔合わせの後に行ってきます、顔合わせはいつですか?」
「タツキが良ければこれから行こうと思うけど?」
「いいですよ、行きましょう」
「分かった、用意するわ」
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そんなこんなで馬車でお屋敷にやって来ました!
多少お偉いさんかと思ったけど、ここまでとは思わんかった。
ダンジョンの屋敷よりさらにデカイ。
なんだろうな?地球で言うとサイズは学校に近いな。
しかも門から家までやたらと遠い。
今は客間にいるのだが、マリアナさんも姿勢良く待ってる。
貴族か~言葉使いとかめんどくさいな。
一応エリーさんから色々聞いたけど興味無くてもうあんまり覚えて無いしな。
・・・取り敢えず喋るの最小限にして黙っとこ。
「お待たせしました、旦那様の用意が整いましたので、ご案内いたします。」
執事さんが現れた。
そのままついていく。
「わざわざ来てもらってすまんな、当主のハロルドだ」
40代くらいの渋いおっさんだ、ちょいワルオヤジ風だな。
ベッドに腰かけている。
・・・確かに顔色悪いな。
「初めまして、冒険者のタツキです」
「そんなにかしこまらなくて良いぞ、こちらは頼みごとをする身だ」
おお、話がわかる人だ!
「それでは失礼して、病人はハロルド様ですか?」
「そうだ、それと長男のロイドだな」
「症状はどのようなものですか?」
「最初は軽いめまいぐらいだったが、今では起き上がるのも辛い」
「ちょっと診察していいですか?」
「かまわんぞ」
「では失礼します」
そしてハロルドさんの手を触り魔力でスキャンする。
エリーさんとクレアさんに教えてもらったこの魔法は、鉱石や薬草の探索や索敵に使う魔法だ。
本来は魔力を薄いドーム状に拡げ、魔力が通過した範囲内のものを確認する。
なので欲しいものの反応を知るには経験を積むしかない。
人体の場合は、本来は体内に無いものを探して、病気を確認する。
なので万能な診察方法ではないが大半は経験を積めば分かるらしい。
エリーさんは錬金術師なので、簡単な治療の知識も教えてくれた。
そしてスキャンすると、肝臓の辺りに本来人体に無いものが溜まっている。
良くみると腸から血液を通り肝臓に流れている。
その他に異常なものは見当たらない。
物が毒っぽいので小声で相談する。
「マリアナさん、これ毒だと思いますよ」
「なんですって、本当なの?」
「多分、今も吸収しているっぽいので、ついさっき食べたり飲んだりしたものだと思うよ」
その後、食べ物から毒が見つかった。
治癒士の人が毒の分析をし、毒性は弱いが、積み重なると命に関わるとのことで直ぐに解毒剤を調合してた。
俺も確認したが薬は効いていて、徐々に毒が排泄されていった。
「これってハイ・ワイバーンいります?」
「治ったからもう良いわ」
「じゃあこれで依頼は終わりですかね」
「ええ?完了よ、それにしても良く分かったわね」
「スキャンで鉱石や薬草探すのは得意ですから」
「そういうものなの?」
「そういうものです、土の中の鉱石探すのも、人体の中の異物探すのも基本は同じです」
「そう言われるとそうかもね」
「じゃあちょっとハイ・ワイバーン狩って来ます」
「えっ、何で?依頼は終わりよ」
「いい服の素材になりそうですから」
「そんな理由でハイ・ワイバーンは狩られちゃうの?」
「そんな理由って何ですか?俺にとっては死活問題です」
「そうなの?そういえば何でタツキは『俺』って言うの」
「俺が男だからですよ、ゴルさんに聞いてないの?」
「聞いてないわよ、本当なの?」
「ギルドカード見ればわかりますよ、じゃあ明日の昼頃また来ますね」
「あ、うん、分かったわ、解体はさせておくわ」
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ハイ・ワイバーンは体長10m程で中々の大物だった。でも成竜やましてや地竜よりも軟らかいので、今回は浮遊バイクに乗って首を切り落として狩った。
ブレスや爪での攻撃を避けながらなので少しやっかいだった。
素材の皮は伸縮性に優れていて、なかなか有用そうだ。
魔石もかなりの大物。
俺の角より質は良くないが、大きさはサッカーボールくらいある。
残りの素材はギルドに売っちゃおう。
ちなみに俺の角はまだ生えてくる。
頻度は3日に1個だ。
長さが15cm位に伸びて、色も濃くなった。
そして多少生やすのを、調節出来るようになった。
今は大体夜生えてくる。
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そして夜、あれから街に戻り宿を探そうと思ったがやめた。
今日もワンルームを出して野営する。
すっかり忘れていたが、手加減用の武器が作りたかったのだ。
作るのは木刀。
簡単に折れると困るので、ダンジョン周りにあった特に頑丈な木材を使う。
そして付与魔法で『衝撃緩和』と『頑強』そして『気絶付与』を着けて、完成だ。
後は銃弾だ、持っている銃弾は貫通特化や、散弾、通常弾等の殺傷力が強い物が多いので、スライムの粘液から作ったゴムモドキでゴム弾を作る。
ちなみにハイ・ワイバーンのステーキは旨かった。
そして明日は魔物相手に新武装の実験だ。
いきなり人相手だと怖いしな(汗)




