3/3
2
次に母を殺した。
好い母だったが、僕を娘と認めない母は母じゃない。
ゆっくりと首を絞め、
宙に浮かせて叩き潰した。
飛び散った肉片を鴉が啄ばみ、
平穏な街をカオスに染める。
星辰の明滅のように一瞬で、
音のいらない単調な殺戮。
暫く遅れて響く有象無象の金切り声が実に気にくわない。
その一点の不満を除けばあとは心地よく清々しい気持ちだ。
背徳の幸福に絶頂すら覚える。
快楽の為に人を斃し、血肉を喰らい、酒を零し、陵辱の限りを尽くす。誰一人残すまいと。
この悦びを享受しつづけようと。
夜の帳が下りたらしい。
黒滔滔と流れる空の河に
橙に明るく煌めく星。
赤い地面の僕と酷似している。
しかし画竜点睛を欠く思いだ。
橙が足りない。
僕は心臓を抉り天に掲げた。
星は雲に隠れてしまった。
ふと目を覚ますと
隣でアラームが鳴り響いている。それを止めて 時計に目をやると、7:24の文字。
僕は安堵して「夢か…」とつぶやいた。変な物語だったが、夢特有のリアリティがグロテスクさを引き立てる。思い出しただけで吐いてしまいそうだ。
気持ちを切り替えよう。今日は16歳の誕生日だ。