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いにしえの獣  作者: 明日香狂香
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逃亡

 れると二人ふたりたびた。このくになかにいては、いつどこにあらわれるかわからないからだ。

 やま尾根おねわたり、かわ横切よこぎる。ちかくにかんじることはあっても、出会であうことはなかった。老人ろうじん子供こどもだ。精鋭せいえいつかればひとたまりもなかっただろう。

みぎへ。」

 カナタがゼノにげる。もり木々(きぎ)大地だいち草花くさばな場所ばしょおしえてくれる。

植物しょくぶつ大地だいちとつながっておる。植物しょくぶつ意志いしは、それすなわち大地だいち意志いしだ。」

 ゼノの口癖くちぐせだ。


 手配てはいていない。平民へいみんたちがカナタたちのことをることはかった。しかし、国境付近こっきょうふきん警備けいびきびしい。おおくのへいが、カナタたちをさがしていることだろう。このさき人家じんかる。二人ふたりにはまち食料しょくりょう調達ちょうたつしておく必要ひつようがあった。すすけたぼろぬのつつみ、旅人たびびと親子おやこよそおう。

 カナタはおおきなまちはきらいだった。おも石畳いしだたみさえつけられ、無残むざんそろえられた植物しょくぶつたちの悲鳴ひめいこえこえるからだ。

 数名すうめい兵隊へいたいたちとすれちがう。かれらはまちなら露店ろてん果物くだもの無造作むぞうさり、やわらほおばりはじめた。

「タダはまずいでしょ。」

 一人ひとりへい先頭せんとう上官じょうかん耳打みみうちする。

「ほらよ!」

 上官じょうかん小銭こぜにげた。あわててひろ店主てんしゅ兵隊へいたいたちはあざあらう。


わんな。」

 ゼノはカナタにだけこえるようにった。

「あれは、このまちおさめる貴族きぞく近衛このえじゃ。ごとこすなよ。」

 ゼノがそうおわわらないうちに、さきほどの上官じょうかん甲高かんだか怒鳴どなごえひびいた。

「このやろう。よくもおれのくつにションベンしやがったな。」

 くと、しろ一匹いっぴき子犬こいぬ兵隊へいたいたちの足元あいもとにいた。

「こいつめ!」

 一人ひとり兵士へいし子犬こいぬはらげた。子犬こいぬ道端みちばたへとんだ。まわりの兵隊へいたいたちもつづける。

がってろ。」

 上官じょうかんこしけんくと、一気いっきろした。

「カチン。」

 けんくうり、石畳いしだたみたった。かれけんろすより一瞬早いっしゅんはやく、カナタが子犬こいぬかかえてはしけたのだ。

まるな。」

 ゼノはカナタにさけびながら兵士へいしたちのわきをすりけた。

 一瞬いっしゅんのこと唖然あぜんとする兵士へいしたち。

え!」

 激高げっこうする上官じょうかんこえに、われにかえった兵士へいしたちが二人ふたりあとおうとした。

「ガチャ、ガチャ、ドタッ!」

 兵士へいしたちはあしがもつれ顔面がんまんから石畳いしだたみ次々(つぎつぎ)たおれこむ。かれらのズボンがずりち、あしからまったのだ。

「やつらのベルトをった。すこしは時間じかんかせげるだろう。まったく、ってるそばからやってくれるわい。」

 ゼノは老人ろうじんとはおもえないはやさでわらいながらまちそとへとかった。カナタは子犬こいぬふくなかかくしながらあとった。

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