王都
ゼノ、タホト、カナタはテヘロとテヘナを連れ、ドラゴン出現の混乱に乗じて王都に潜入した。そして城のそばのアジトの1つに隠れた。入り口には彼らしか知らない暗号で存在を伝える仕掛けが施されている。やがて、イゴーとトットも合流した。
「そうか、二人は捕まってしまったか。」
ゼノは頭を抱えると、首を数度、横に振った。
「お前達の見た躯が、今、現れているドラゴンなんだな。」
タホトがイゴーとトットに確かめた。
「ドラゴンとは麒麟の魂が入っていない不完全な獣だろう。」
ゼノが口を開く。
「やつからは人間への憎しみを感じます。」
カナタは震えていた。それは、寒いからでは無く、ドラゴンから流れてくる人間への憎悪の念によって、心が押しつぶされそうになるのを必死に抗っていたからだった。
街はドラゴンが飛び回り、家々を破壊していった。強力な歯とカギ爪でお菓子のように家を砕き、巨大な翼で枯葉のように吹き飛ばした。その鋭く赤黒い目は、どこに隠れようと確実に獲物を見つけ出した。人々はとるものもとりあえず、都から我先にと逃げ出した。走って逃げるもの、馬で逃げるもの。子供や老人は逃げ遅れ、瓦礫の下敷きとなった。街のいたるところで火の手があがった。それはドラゴンが巻き起こす風によって、次々と飛び火していった。もはや、消そうとするものは誰もいなかった。
「ワシはカナタと城へ行く。お前達は、街を頼む。」
ゼノはタホトとイゴーとトットの三人に言った。
「はっ。」
彼らは、そのままドラゴンの飛ぶ街中へと消えた。
「なぜ、他の兵たちのように戦わないのです。」
カナタは、以前から疑問に思っていたことをゼノに尋ねた。
「近衛というのは、主を守るのが仕事だ。くだらんプライドや手柄を求めて戦ったりはせん。もっとも、解任されちまったからなあ。しいて言えば今の主は国の民かな。」
ゼノは照れくさそうに笑った。カナタがこんなゼノを見たのは初めてだった。




