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いにしえの獣  作者: 明日香狂香
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約束の日

「カナタ、よくきなさい。」

 夕暮ゆうぐれのなか父親ちちおやおとことなりすわるとゆっくりと、しかし力強ちからづよ口調くちょうはなしはじめた。

「もう十歳じゅっさいだな。おまえはこれからあるひとたびねばならない。とうさんもかあさんも、いままでおまえには真実しんじつのみをはなしてきたつもりだ。ただ1つの事柄ことがらのぞいては。」

 この十年間じゅうねんかんおもみしめるように、父親ちちおや言葉ことばまらせた。いつもとはちが緊張感きんちょうかんただよっている。

「おまえわたしたちのじつではない。さらにとうさんとかあさんも本当ほんとうの夫婦ふうふではない。」

っていました。」

 おとこおかうえからとおくの夕日ゆうひつめながらキッパリとった。

くさおしえてくれました。」

「そうか。」

 父親ちちおや安心あんしんしたように微笑ほほえんだ。

「おまえには、あのかたおなじように植物しょくぶつこえちからがあるようだ。おまえ十年前じゅうねんまえ、そのひとからあずかった。わたしたちはおまえまれについてなにかされていない。すこしでも真実しんじつりたければ、これからやってくるそのひとくがいい。わたしとかあさんは仮初かりそめおやとして一緒いっしょらしながらおまえそだててきた。しかし、それも今夜限こんやかぎりだ。」

 おとこはうっすらとなみだかべていた。そしてそれがこぼれないようにかおげてしずあか太陽たいようつめていた。

「これから、とうさんとかあさんはどうするのですか。」

 おとこおな夕日ゆうひながめながらたずねた。

「ここで二人ふたりらすよ。おまえがいつでもかえってこられるように。もっともこんなおれたちでもおまえおやおもってくれるならだが。」

ぼくにとってのおやとうさんとかあさんしかいません。そしてここが唯一ゆいいつぼくいえです。」

 おとこ父親ちちおやかおながら毅然きぜんこたえた。

とうさんとかあさんはある戦争せんそうからげてきた。そしてあのかたった。3にん方々旅(ほうぼうたび)をした。そしてカナタ、おまえ出会であった。あのかたは『こので3にんらせ』とってった。これがわたたちのかぎりの真実しんじつだ。さあ、もうもどろう。かあさんがうまい夕飯ゆうめしつくってっているぞ。」


 夜更ゆふけに、あわただしく老人ろうじんたずねてきた。

「やつらがかんづいた。すぐにあのつれれてく。おまえたちはここで時間稼じかんかせぎをしておくれ。ぬなよ。あのみくしみのふちとらわれぬために。」

 そういいのこすと、老人ろうじんねむっているカナタをかかえて、裏口うらぐちからった。

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