「喜劇に参加するつもりはありません」前日話と裏側では
〜前日譚〜
[第2王子サナン視点]
その日、とある会議が行われた。その議題というのが
「ディレイア王国のパーティーに誰が参加するか、ですか?父上、どこぞの色ボケした公爵辺りに行ってもらえればよいのでは?」
王太子であるクレメス兄さんの言ったようにディレイアに行く者を決めるというものだ。
ちなみにその公爵は妹であるセレナに熱烈にストーカーやアピールしている未だ独身の40を迎えたばかりの男である。なんでもセレナが7歳の頃に惹かれたらしい。当時はまだ公爵ではなかったがモテていたのに関わらずロリコン疑惑浮上で少し引かれていた。クレメス兄様、厄介払いしたいだけですよね?
「確かに奴は地位もあるが、師団から護衛がつきたがらないのだ。」
国の代表だから国から護衛を出す必要がある。
因みにその公爵は所用で会議を欠席している。
まぁ所用を命じたのは兄さんだけど。
沈黙が降りたその時
「だったら私が行きますねー、パーティー」
なんと、呑気に発言したのは第8師団長として参加していたセレナであった。
「セレナ、本気で言っているのか?ディレイアなんかにお前がいく必要なんてない」
クレメス兄さんが真顔で問いかけるが、僕もそう思う。
だが、肝心の本人は
「王族の中で護衛が少なくて済むの、私くらいじゃない?私自身強いし、護衛は第8師団を連れればいいし。第8師団は数こそ少ないけど、他師団と同等でしょ?なんかあった時に少ない人数で殲滅できると思うよー。」
普通に聞いたら、驕っているとも取られかねない発言。しかし他の師団長は皆、その通りだという顔をしている。一部は恍惚とした表情を浮かべているが、気にしないことにした。総司令官、お前そんな表情するキャラじゃないよね?一種のホラーである。
考え込んだ兄上は重い口を開いた。
「あまり気が進まないが、セレナの言うことも一理あるね。父上もそれでいいですよね?セレナ、気に触ったことがあったら即殲滅するんだよ?」
「クレメス兄様冗談はやめてよー。そんな私の気分で潰すなんて嫌すぎる」
セレナ、クレメス兄さんは本気だ。
まぁ、パーティーの件はセレナに決まったのである。
〜パーティーの裏側〜
[とある団員視点]
僕はセレナ王女殿下が率いてらっしゃる第8師団の、諜報担当である第3部隊に所属している平隊員だ。今回のパーティーには第8師団が護衛の任に就いたので今現在ディレイア王国にいるわけだが、緊急事態が発生した。(余談だが、今回第8師団から少数選ばれ、見事僕は選ばれた!)僕の目の前には荒ぶる仲間たち。
「それは本当?だとしたら笑えないよね?いや笑いながら殺戮を繰り広げればいいの?」
「いやーこれが本当なんだよね!ずっとパーティーを魔法で視ていた隊長もだけど、私、影に潜んで一部始終見てたんだよね!そしたらあの屑どもセレナ様を罵倒したんだよ!もう殺っちゃっていいよね!」
「ディレイア如き戦争になっても敵にならないし、いいんじゃねー?」
そうだ、そうだと騒ぎ立てる仲間たち。
いやはやどうしたものか?いやね、僕もぶっちゃけ屑どもがどうなろうがどうでもいいし、セレナ王女殿下を侮辱されて腹立つんだけど、あれ?反対する理由なくね?
そんな感じで悩んでいたら
「それ、本当ですか?至高の存在であるセレナ様を罵倒されたというのは?————そんなの許さない、許せない、許してなるものかァアア!!」
陰が薄い諜報向きなのに情報担当の隊ではなく、第5部隊の隊長の任に就いているコナー・マルセン隊長。いつもの影の薄さはどこへやら、鬼気迫る叫びをあげた。いや、怖いです。ホラーです。
「そうそう許せないですよね、戦争するしかないですよね!第8師団は半数とはいえもともとの力が圧倒的にうちが優位ですから!」
それに賛同する仲間たち。
わいのわいのし
セレナ王女殿下が止めにはいったのは夜中のことである。