表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必要なものとは  作者: ゆき
1/5

一話

僕は今部屋に居る


ストーブの前でスマートフォン片手に寝っころがって


手が届くところに愛猫シロが居る



枕はアマゾンの段ボールで角がなんともいえない


心地悪さをかもし出しているのだけれど


どうもなんか頭の下に敷かないと疲れるよね



普通はずっと視界にはない家の天井


白一色、とまではいえないけれど


少し色あせた細かい線の集合だ



もう少しで昼になるのだろう


おなかは空いた、いやでも寝ようか


そう思っていたら突然視界が明るくなって


目も開けていられなくなって僕は何度か目をぱちぱちとさせる



やがてこれはこらえきれないと思い


ほんの数ミリ、まぶたを開けたり閉じたりしていて


しだいに眩しい光といえるのか


視界は落ち着いてきたようだ



おどろいたことに、目の前に女の人が見える


とても綺麗なそれこそ空想の女神と呼ぶにふさわしい


大きくひらかれている翼に


きめこまやかな肌は白く陶器のよう


着ている服は朝露の蜘蛛の糸で出来たが如く


繊細でキラキラと光る丸い水晶のようだ



「もうしわけございません


こちらの不手際であなたを死なせてしまったのです」


女の人が言った


僕が、死んだって……?


ほんの数秒前と同じ今も段ボールを枕に


寝っころがったままだというのに?



気づけば近くにあった熱源、ストーブの暖かさは消え


部屋の天井は無く辺りは白い世界


そばに居た愛猫は居らず


しかし、どことなくこの場所は心地いい



「えっと、はじめまして」


少し姿勢を正しながら僕は呟いた


もちろん女の人が言った


「不手際」というのがなんなのかも気になるけど


まずはコミュニケーション


相手が誰か、自分も心を開いて


打ち解けるのが大事だよね


しかし僕は死んでしまったのか……



「はい、神威 晃さまで間違い無いですね


ほんとうにすみません」



「いえいえ、そう言わずに


死んでしまったのは仕方ないですよ


人はいずれ死ぬのですから、速いか遅いかの違いです


しかしなぜ僕の名前をご存じで?」



「申し遅れましたが、そうですね……世間一般


神威さまが生きていらっしゃった現世でいう


ところの私は女神になります」



女神さまだったのか


となるとここは天国になるのかな?うーん



「さきほど述べた不手際……についてですが


どうも私の住んでいる神界では


神威さまの住んでいるっしゃった


地球の生き物の魂を管理していまして


その、魂の情報を整理するときに


何らかのアクシデントが重なり


結果、神威さまの魂が破損してしまったのです」



なるほど、魂が破損して現世では居られなくなった


そんな感じなのかな


何らかのアクシデントというところが少しいい加減だけれども


こうして僕がここに居て、女神さまが出てきている以上


簡単な問題ではないのだろう



たぶん、もとのせかいにもかえれないんだろうな



「そして破損した魂の修復は出来ず


現世にいる神威さまは物質界での存在が困難になり


かろうじて精神世界に今、留まっているという状況です……」



「現世へ戻るのは、出来ない……よね


それでぼくにはどんな道があるのかな?」



「はい、詳細は少し込み入った話になるのですが


時間軸の干渉上、破損した魂の修復はほぼ不可能になります


改めて申し訳ございません……


私としては今後、神威さまに転生してもらうことに


なるのですが転生の他にも道があるので説明いたします」



転生……となると赤ちゃんからやり直しかな


でも他の道ってなんだろう



「まずさきほど言った一からの転生


これは神威さまのいらっしゃった世界、または他の世界で


一からの人生を送ることになります」



「二つ目は転移


これは他の世界にしか行けませんが


破損した身体を修復してそのまま


その世界で余生を送ることになります」



ふむ、赤ちゃんからやりなおすのは


個人的にめんどうだし……これは転移にしようかな



「わかった、僕は転移を選ぶよ」



「わかりました、転移するにあたって


神威さまが転移する世界を選択出来るのですが


何か希望などはありますか?」



そうだなあ、こういうのってもしかしたら


剣と魔法の世界に連れてってくれるのかな


あの小さい頃夢見た世界に



「剣と魔法の世界……なんてものはあるかな?」



「はい、ありますね


しかし前の世界向きに作られた身体のスペックでは


少し生きていくのが難しい世界になるので


私からアシスト、魔法のようなものを授けようと思います」



「ありがとう、そこまでしてくれれば十分だよ


昔から剣と魔法、ファンタジーの世界には憧れていたんだ」



「いえお礼をされるようなことではありません


もともとこちらの不手際が原因なのですから……」



ほんとうに女神だというのに腰が低い人……神さまだ


もうそんなこと気にしてないって



「ここまでとてもスムーズに話をさせていただき


ほんとうにありがとうございます


ただ神威さまが疑問に思われたことなどはありませんか?」



「特にないよ、さっき言った通りほんとうに気にしてないから


女神さまもそう腰低くせずほら、フレンドリー、フレンドリー」



「はい!」



よかったやっと笑顔になってくれた



「それで、アシストについてなのですが


大まかに言語、戦闘


言語は異世界のコミュニケーションを


戦闘については神威さまがイメージして


ある程度方向性を決めることが出来ます」



「たとえば?」



「そうですね……


氷を操る魔法に特化した、凄い魔法使いになったり


千の武器を操る戦士になったりですね」



魔法か!きっとそれがいい



「じゃあ女神さまが言ってくれた


氷の魔法でいいよ、いつでも異世界に送ってくれていい!」



「わかりました


それでは異世界での言語理解アシストと


氷の魔法についての知識、感覚アシストを


神威さまに贈ります」



そう女神さまがいうと、僕の頭のなかに異世界の知識


ことばについてや基本的な魔法の知識


氷の魔法についての知識などのさまざまな知識が


流れ込んできた



新しい知識が、それも突然頭のなかに流れ込んでくるなんて


混乱しちゃいそうで頭痛が起きそうな話だけど


そこまで悪い感覚ではなく


どちらかというと川のせせらぎを聴いていて


水面にぷかぷかと浮かんでいるような


心地いい感じだ



「どうでしょうか?他にも不安であれば


アシストはいくらでもお贈り致しますが」



「いやいや、ここまでしてくれるなんて


ほんとうにありがとう


さっきも言ったけど剣と魔法の世界に行けるって


ワクワクしてるんだ、とても」



「ふふっ、神威さまはほんとうに良い方です


しかし、最初に言ったよう不手際があったのは事実


これは私からの気持ちとして受け取ってくださいませんか」



そう言った女神さまは僕の手を取って


甲にキスをした



すると手の辺りが少しきらめいて


いつの間にか人差し指にゆびわが付いていた



「これは……?」



僕は少し女神さまに照れながら問う



「なにか、異世界で困ったことがあれば


その指輪にむかっておっしゃってください


その時は私が神威さまをお助けします」



「ありがとう女神さま」



少しの間ぼくらは見つめあって



「それではすぐに異世界へ行かれますか?


さきほど言ったよう、わからないこと


質問などがあればお答えします」



「大丈夫だよ、異世界に転移してほしい」



「わかりました、それでは神威さま


またいつか会える日まで」



これからぼくの冒険が、はじまるんだ


地球での人生は最後まで遅れなかったけど


女神さまがここまでしてくれて


剣と魔法の世界に行けるのなら文句ないよね



やがて視界が明るくなって


目を開けていられないほどの眩しさから


僕は目を閉じる



まるで最初の時のよう


しばらく目を細かく開け閉めしていると


だんだん光がおさまってきて


気づいたら僕は、草原に居た……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ