四話 「試練」
「うんうん、すっごく才能あるよベルムは!
教えた甲斐があったもんさ、僕の次に上手い」
目の前の人物が鼻をこすりながら笑顔でそう答えた。
手から出た小さな、あったかいもの。心もポカポカする。
それが魔法を使った最初の実感。
両親が旅に出てからメリークの家に預けられ。
魔法というものを知った。
元気を出してもらおうと、小さな子供が考えた遊びだったのだろう。
炎。当時、加減が分からず、危うく家が大惨事となり禁止となった。
――
「メリーク、ちゃんと生きて逃げただろうな…」
背中の熱さに耐えながら、昔を思い出し次の一手を思いつく。
三匹同時に、二足歩行の魔物が襲い掛かる!!
ありったけの魔力を込めて解き放つ。
使える右手をかざしながら。
驚いた。無理もない。
風のように吹き荒れる炎の舞。魔物全てを包み込んだ。
「きゃあ!!」
少女の声。
しまった、まさか巻き込んでしまったか。
違った、彼女は後ろから燃える炎に圧倒され尻もちをついていたところだ。
最後の一匹を倒し切ったところか。だが。
二人の男性はいない。
静寂。
辺りには生きた人間が二人。
死にかけの男と。男を見つめる少女。
虚ろな二つの水晶の中にパチパチと燃える揺れが入っていた。
取り敢えず、助かったみたいだなあんた。
そんな言葉を投げかけて、目がうつろになる。視界が悪い。
どうやら身体も精神ももたないみたいだ…。
最後に綺麗な少女の顔を見る事が出来た。
抗った甲斐があったな。
――ベルムは、暗闇に落ちた。
◆◆◆
時間は昼と見える頃、避暑地なのか一切の光が届かない…地下水路の流れる音を側に小汚いスペースがあった。
埃に満ちた箱が並ぶ最奥地…そこで最後の足音が止む。
12人、いや13人。1人増えたみたいだ。
どうやら本当の数らしい。
黒フードを被る背の高い者を取り囲むように他の者は対峙していた。
大きな剣を腰に差した金髪の好青年、目が細く白い髭がピンと張った老人、弓を持つ黄色の髪の女等…やはり普通の人間達も混じる。
「お待ちしてましたよ…」
黒フードの指導者は、四日前に起こった殺戮ショーに姿を現さなかった1人に言葉を投げかけた。
そのものはどんな身なりをしているのか、誰も分からない。
にたりと口を緩めて周りを見渡し、彼?彼女?性別不明の影が言う。
「…いずれ滅びゆくニンゲンだ。
帝王がじれったく行うより効率のいいもの。
我らが先に頂こう。終焉を運ぶ導師達。その暁には我が国に歓迎しようぞ」
パチパチ、パチと数名の手の叩く音。
悪名高い笑い声も時折入り込む。
「同法の宿願、叶える時だ。
今から伝達する。お前らの仕事を」
拍手がやんだ後、黒フードが再び口を開く。
揺れ動く事件の最中、何かが起こり得ようとしていたのだ。
それは、確実に…人類を滅ぶ策の類であった、が。
誰も止めることはできない。