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聖遺録~紫現の剣使い~  作者: リパール
崩壊と共に
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二話 「旅立ち」

時間があるので、数話分。一日一話ずつ載せます!




荷物を剣と共に背負うと、住んでいた家を振り返った。

日持ちしない食料を詰め込み台所は食器以外ほぼ何もない。

金品も大きなものは置きっぱなしだが、他は大体身に着けた。


遠出をよくするようになってから家を空ける事が多くなる。

独り身の空き巣を警戒してか、生活に必要な家具をおいては何もない。


空き巣というよりも、魔物を注意してのこと。

百にも満たないうちの村の誰かが行える筈がないからだ。


これは性格だろうか

いや、いつか遠くに行って旅をしたいという気持ちが奥底に眠っているからかもしれない。


もう帰って来ないのも知らず。

彼はいつも通り、行ってきます。と声をかけてその場を後にした。

少し右に撥ねた紫色の前髪を気にしながら。


小さな家々を通り過ぎ

メリークが住む場所にやって来た。

ヤーク村代表とも言える大きな門をくぐり中に入る。

小柄で忙しそうな男性が目に入った。


「おじさん、お久しぶりです」


頭を少し下げ、あいさつした。


「ん?ベルムかね。やぁやぁ、大きくなったな

 といっても1か月も経たないか。

 今日も随分と大層な装備だこと、気を付けたまえよ」


少し冗談を挟みながら、彼の元に行く事を許可される。

親子そろって口調が軽い。



部屋の扉をこんこんと叩く。

ガコン、と木の板を外す音がした。厳重だな。


「…来たか。入りたまえ」


悪い表情で言う彼に続き、部屋を潜る。

ごちゃごちゃと物が散乱し、座るスペースが無かったが

彼は無理矢理ある箇所を一掃する。そこに小さな机を持ってきた。


「親父に気づかれず裏口から入って来ただろう?

 これから、ジーン救出計画を始めようと思う」


まだ荷物を纏めきれてないのか、袋に食べ物を詰めながら話し出す。


「ああ、普通に表から入って来たけど」


ぴくり、と眉を顰めるが何事も無かったかのようにする。


「…まあ、これから村を出るわけだ

 魔物が出るからね。今回は馬車でなく徒歩だ

 君はあいつらと戦ったことがあるか?あの凶暴な奴らを」


震えながら、恐怖を噛みしめ聞いてきた。

17歳より前も、村から数キロならよかったためよく出歩いていた。

小狼、狼、猪。食べ物を得るために狩りは今日まで続けた。

それらが魔物に含まれるのか分からない為、沈黙で通しておく。


「あれは怖い…こっちを見ると、得物を見つけたという風に

 いきなり襲い掛かってくるんだ!!だからなるべく避けていきたい」


食べ物ならあるだろう?と袋をぱんぱん叩いた。

確かに体力の面を考えると、こいつは戦わない方がいいかもしれない。


乾いた板に植物の液を塗った、てかてか光る包みの蓋を開ける。

彼が取り出したのはそれなりの値が付きそうな短刀。

一回入ったことがある鍛冶屋なるもので売ってそうな代物だ。

刃はほとんど使われていないのか、磨かれずに綺麗のまま。

今回の為に準備したのだろうか。


「餞別だ、君の剣は自作だろう?

 まぁ暫く村を離れるとはいえ、危険がないとは限らない。

 そんな今にも壊れそうなのを相棒にしているとこっちが不安だ」


こんな上等なものを貰ってもいいだろうか、おそるおそる手に取った。


「僕のはこっち」


立てかけてあったコレクションの中で一つ、抜き取ったのは

やはり新品。あまり武器に詳しくなくても凄くいいものだと思えるような。


「そっちは2年ばかり使っていた、お下がりさ

 しっかり磨いておくんだぞ。僕が、結構派手に遊んだからね」


もう一度手渡された品をしっかり見たが、やはりどこにも傷はない。

呆れ果て、彼が準備するまで無言で座った。



メリークは重たい荷物を持ち上げると、俺についてこいと催促をした。

馬車を使った方がいいのではないだろうか。

だが、一度徒歩と決めた彼に変更の考えはない。

こっそりと裏口を出て、二人は街の方角に向かって歩き始めた。


◆◆◆


ベルム、メリークから

随分離れた場所

4日前ほどであろうか。



12の影が崖から少し下を眺めていた。


悲鳴。悲鳴。雄叫び。悲鳴。

繰り返される人の叫ぶ音、反応する呻き声。

少しづつ、その国は内部から瓦解する。

空を飛ぶ者、大きな体格の者、俊敏な速さを持つ者。

どこからか湧いてきた沢山の魔物は突然の事にパニックになる民衆を潰し、潰す。潰す。

この景色を見つめる目にはそれぞれ、哀れ、楽しみ、悲しみ、無心等

十人十色反応が違った。


その中でも特に反応を示した黒フードの長身の男。


「ハハハ!!レスタード王国はこの通り。

 見ろよ…見ろ、ククこんなに気分がいいのは久しぶりだ」


フードから僅かに見える銀髪。彼は滅びゆく国を見るメンバーを束ねているらしい。

振り返ると11人が静かに顔を動かした。


口元が白い髭で覆われた老人。茶髪の冒険者風の男。赤髪の女剣士。金髪の青年。

一見してそこらにいそうな身なりを整えた者。

顔に赤い入れ墨をした男。黒フードの隣に佇む覆面。

見るからに怪しそうな者も一緒にいる。

共通して分かるのは彼らがこの国が滅びゆくのを眺めている同士である事。


「まず一個目。

 我らが終わらせよう…人の絶望を、救済しよう。

 これほど潰れれば、残る民もいまい。クク、クハハハ!!」


彼は死にゆく人々の絶望の叫びを賛美に捉え、大いに笑った。

落ち着いた後も、にこにこと笑顔を絶やさない。


動き始める。

ベルムが村を出る少し前にあった悲劇。

激しく動き回る魔物たちは、止まってくれる筈もなく。

喰いつくした後はどうするのだろう。決まっている。

またどこかに喰らいに行くのみだ。

それは鎖のように。連鎖する。

実はメリーク達が目指す街は、この国とも近かったりするのだ。



◆◆◆






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