第二次撃翔進攻戦 中編
どうも、物凄い遅れましたが読んでいただけると幸いです。
イラスト欲しいなぁ。
撃翔進攻警報が発令されてから2日後の軍人本部は荒れ果てていた。依頼掲示板には依頼紙が掲示板から全て消え、連結隊は全て解散され、陸軍隊長室には苦情を大声で叫ぶ軍人がドアを叩き、そして俺が暇で手伝っている真武取扱所には真武のメンテが殺到している。
「すいません、俺の真武すぐにメンテしてくれませんか?」
「おい、お前。順番は守れよ。先にメンテしてもらうのは俺だ」
「ここは公平に決めようよ」
「ふっ、みんなこの美しい僕を差し置いてメンテしてもらおうだなんてそうはいかないよ。さぁ」
「昨日メンテしてもらったんだけど、もう一回メンテしてくれよ」
何か1人めんどくさい奴がいる気がするが、そのような殺到もダイヤとウィルラは顔に汗を浮かべながら対応している。
「レイス、ちょっと鉱黒石、硬緑草、炎熱岩、撃刃爪を素材庫から持ってきて。大至急!」
「了解だ」
そう言って俺は素材庫に入り、近くにあった台車を押して目的物を載せて汗をかきながら一生懸命頑張っているウィルラの元に置く。
「ん、ありがと。それじゃあ、剛脈葉、波削砂をある分追加で」
「了解」
とまぁ、このような感じでウィルラにこき使われていい体の運動となっている。何か悲しいな、俺も。
やがて警報が発令されてからおよそ4時間後、取扱所に群がっていた軍人は残り2~3人となり、俺の仕事量も減ってきた。おかげで素材庫にあった素材はほとんどと言うほど消えてしまっている。
素材庫にある残りの素材の事も考えながらウィルラは真武を調整し、ダイヤはそのアシストをして俺はそれを見ている。
「えーっと、野太刀の真武を軍人はいますか?」
ダイヤがカウンターで声をかけると小難しそうにベンチに座っていた男の軍人が駆け寄ってくる。
「あ、はい。その真武、俺のです」
「メンテ及び調整が終わりました。代金は500TMです」
取扱所の料金システムはいたって簡単。普通のメンテならさっきダイヤが言っていたように500TMである。真武のオーダーメイドは最低でも3000TM、より高品質な素材を使うメンテはそれにプラス1000TM、真武の売却は使用頻度によって価格が変わる。
野太刀の軍人は500TMをダイヤに払うとその場から駆け足で去っていった。
「ふぅ、終わったな。お疲れさん」
「今までの中で一番殺到したんじゃないかしら?」
「そう………だな」
「で、レイス。何でこんなに殺到したのか理由を聞かせてくれるかしら?」
あの、目が笑ってないんですけど。
仕方なく俺はウィルラの威圧に負けてさっき聞いたことなどを大雑把に説明する。
「ふーん、いくつか腑に落ちないところがあるけどそこはいいわ。用はその撃翔と戦うために真武のメンテに来たという事でいいのよね?」
「そうだな。実際、第一次とは違って軍人本部にも撃翔に備えたものがあるから犠牲者は少なくなると思うけど」
「で、レイス。お前はこの戦争に参加するのか?」
「当たり前だ。大佐、もとい陸軍の副準隊長が参加しなかったら軍隊はまとまらないだろ?」
「ごもっとも。それなら俺も参加させてもらうぜ。お前の後ろを守る死神としてな」
「そうか、頼りにしてるぜ」
俺とダイヤはしっかりと手と手をぶつけ合った後強く握りしめる。ダイヤの手は俺よりも大きく取扱所でできたマメが俺の掌に触れる。
「じゃ、後は頑張ってね。私はシェルターの中でしか応援できないけど、生きて帰ってくるのよ。特にダイヤ!」
「あ、ああ」
ウィルラに蹴落とされながらダイヤと俺は一緒に取扱所を去った。
本部の廊下を歩いているとこっちに走ってくる2人の人影が見えた。しかもその影はよく見知った人影だった。
「どうした、ガクスとヴァスト。そんなに急いで」
「どうしたもこうしたの無いだろ。お前、あのバカから何の聞いてないのか?」
何のことかさっぱりなので黙って首を横に振る。ダイヤも分からないといった表情だ。
「ちっ、あのバカ。レイスには連絡してないのかよ」
「だから何なんだよ」
「………陸軍総集室にて臨時の総集がかかったんだよ。バカ主催でな」
なるほどな。撃翔進攻戦に向けての集まりであろう。………まさか。
「なぁ、その総集ってアレあるのか?」
「………今まさにそれだ。そのために俺とガクスはお前を探しに来た」
「総集がかかってから何分ほど経過した?」
「15分くらいだ。さほど問題にはならないと思うが急いだ方がいいと思うぞ。ダイヤもな」
チラリとダイヤの表情を窺うと、どうやらダイヤもアレの事に気付いたみたいだ。
「分かった。今から行く」
そういうと俺は来た道(廊下)を振り返って叫びながら総集室へと向かう。
「あのヤローォォォォォォォ!!!」
陸軍総集室はこの軍人本部にいる陸軍が全員入ることができる大きな講堂だ。その大きさは俺にも分かったいなく、ただ一つだけ言えるのは本部の4階全てが陸軍総集室となっていることだけだ。声は専用のスピーカーで総集室全体に広がるようになっており、壇上の人の映像は何mかに区切ってモニターがある。壁と床は白い高級大理石でできており、窓は3cmほどの防弾ガラスでできている。
総集室の扉を思いっ切り開けると、何人かの陸軍は肩を震わせてしまったが、俺はそんなことは気にせずに壇上に立っているあのバカの胸ぐらを掴む。
「や、やぁ。レイス君。お、遅かったね?」
バカは何食わぬ顔で、それもどこか楽し気に話しかけてきた。
俺はその顔にちょったした苛立ちを感じ、少しだけ胸ぐらを掴む手を強く握る。バカの軍服が伸びそうだ。
「遅れたのはどこの誰のせいだと思っているんだ?」
「い、いやだなぁ。ちゃんと連絡かけたよ?」
「ほざけ。投影板には何の連絡もないし、放送ならいくら取扱所にいたって聞こえる」
「そ、それは………」
バカはまた何か言い訳を考えているみたいだ。なら、ここはこのバカの事をよく知っている第三者に聞こうとするか。
「レイガ、いるか?」
俺はバカの上あたりの虚空に向かって言う。するとバカのポケットから簡易的な人の形をした紙が飛んできて俺の横に来ると眩い白い光を発して紙が人へと変わる。
「悪いな、レイガ。たったこれだけの事で読んだりして」
するとレイガは鬼の形相のような顔でバカを睨みつけて言う。
「いえ、レイスさんが誤る必要はありません。それにわざとレイスさんに連絡しなかったのは他でもないこの人なんですから」
「ちょっ、レイガ君!?」
今の反応を見る限りレイガの言っていることは正しいみたいだ。もうちょっと聞き出してみるか。
「レイガ、コイツが連絡しなかった理由は分かるか?」
「はい、本当はレイスさん、ガクスさん、ヴァストさんの3人だけ連絡せず、遅刻してくる姿を見たかったらしいです。けど、疑い深い3人の事なのですぐにこのことに気付くだろうと思ったこの人は、レイスさんだけ連絡をしないようにしました」
「ほう………」
淡々とレイガの話は続く。
「また、『どうせレイス君の事だから取扱所にでもいるんだろうな』と思ったこの人はダイヤさんにも連絡をかけませんでした。そして連絡をかけ終わった後に『さて、何分で気付くかな?』などと不敵な笑いを浮かべていました」
「ありがとう、レイガ。後でお前もコイツを上の方に差し出しに行くの来るか?」
「ぜひ行かせてください」
「ちょっと、そういうタチが悪い冗談はやめて!? それより、レイス君。言わなくていいの?」
「………」
俺は奴の胸ぐらを掴んでいた腕を無造作に投げ、壇上に立つ。
そしてちょっとした咳ばらいをすると、壇上に置いてある机に手を置いて話を始める。
「陸軍総副準隊長のレイス・フォールーズだ。君たちも知っていると思うが、撃翔がこの島に向かって進撃してきている。そこで、我々の役目はその撃翔を迎撃し撤退へと追い込むことだ。ここでみんなに班を4つに分かれてもらいたい」
そういうと軍人は一斉に動き出して4つの長蛇の列を作り出した。その時間わずか3分。
「別れたようだな。では右から1班、2班、3班、4班とする。ガクス、スクリーンを出してくれ」
「了解」
ガクスはちょっと不器用な手つきでスクリーンを出して映像をスクリーンに映写する。
俺は指示棒を取り出してスクリーンの映像に合わせて棒を当てる。
「撃翔は今、ここから南東方面の海上からこの島に向かっている。おそらくこの島の領海内には海軍が出動して先に撃翔との交戦が始まると予想される。我々の目的は海軍が迎撃そびれた撃翔を陸から迎撃することだ。空中歩行術が使える軍人は優先してそれを使用して交戦してくれ。逆に歩行術が使えない軍人は撃翔を挑発して攻撃できる範囲まで引き寄せろ」
空中歩行術とは空気を一瞬だけ固めて足場を作り、まるで空中を歩いているかのように見せる戦闘術の一つだ。だが、空気を固める技術が非常に難しく、ほとんどの軍人がこれを習得できない。俺もこれを使えたことは一度もない。氷や冷気を操る能力の軍人は簡単に習得できるみたいだ。
ここで奴が俺が話している間に入り込んで話し始める。
「レイス君の話にちょっとだけ付け足し。海軍が撃翔を迎撃そびれた時は海軍が通信機を使って本部に撃翔の情報を伝えてくれる。その情報は君たちの投影板にリアルタイムで報告されるから確認は忘れないようにしてね。また、僕の指示も投影板を使って伝えるから忘れないでね」
「町の人々は地下のシェルターに避難しているが、避難していない人もいる可能性がある。もし、それを見つけた時は迎撃よりも救出、避難の指示を優先して人々の命を守れ」
「………で、レイス。班を4つに分けた理由はなんだ?」
ヴァストが壁にもたれ腕を組みながら問いかけてくる。
「そう言えばまだ言ってなかったな。4つに分けた理由は様々な場所で迎撃してもらうためだ」
俺は指示棒を再び取り出して切り替わったスクリーンの映像に棒を当てる。
「1班はここ、本部及び町を守ってもらうため、もうちょっと人手が欲しい。2班は亡霊の岬近くの平原を担当、3班と4班は大密林近くの平原及び大密林に入ってくる撃翔を迎撃してくれ。これでこの島の東部分は全て陸軍が担当することになる」
「ここで付け足し。海軍は基本的に東及び南側の領海内を担当してもらい、空軍も同じく領空内を担当してもらう。また、特殊軍人隊にはこの島全域を担当してもらうことになっている」
「は!? 特殊軍人隊!?」
特殊軍人隊とは2つ以上の軍隊に所属しているエリートの軍人の事だ。特殊軍人隊に入隊する条件はたった1つ。2つ以上の軍隊で最上ランクの称号を手に入れることだ。俺が知っている特殊軍人隊に入隊している軍人は、巫女でありながら俺とほぼ同じ能力を持っているスイハ・リョウハクが入っている。
「そう。つまりは………」
「完全総力戦ってわけか」
「そういうこと。総力戦だからと言って君たちが特攻隊のような危険を冒すことはない。僕たちの最大の目的は『撃翔を迎撃しつつ、誰一人欠ける事なく戻ってくる』事だから」
何故だろう。一瞬コイツが本当の隊長に見えた。
「1班は俺、2班はガクス、3班はヴァスト、4班はダイヤが各班の隊長を務める。何かあったら俺たちに相談してくれ」
「レイスさん、私からも1ついいですか?」
突然レイガが俺の隣に来たので面食らってしまっただすぐに言いたいことを察する。
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます。今回の作戦、私たち式神も参加させていただきます」
今のレイガの言葉にとてつもなく驚いたのは式神の主だった。
「ちょっと、レイガ君!? 何言ってるの?」
「言葉通りです。ご心配なく、私たちは自分自身の霊力で戦うのであなたの霊力は必要ありません」
「………うっ。で、でもそれだったら誰が僕を補佐してくれるのさ?」
「レイヴに頼んであります」
「………レイヴ君なら、いいか」
コイツの式神の扱い方がよく分かった気がした。
「話が途切れてしまいましたが、1班には私、レイガが、2班には暗闇の地獄神ことレイビが、3班には鬼神の破壊者ことレイバが、4班には虚空の狙撃者ことレイソが同行いたします」
「ちょっと、みんな行っちゃうの?」
「はい、さっき式神専用の通信手段を使って聞いてみたところ、満場一致でした」
「………」
反論できないみたいだ。
「という訳で皆さん宜しくお願いいたします」
レイガは深々とお辞儀をすると紙に戻って奴のポケットの中に入っていった。
「作戦報告及び作戦会議はこれにて終了だ。質問がある軍人はこの後俺の所に来てくれ。解散!」
そういうと、何人かの軍人は俺の傍に来て、それ以外の軍人はぞろぞろと総集室から出ていった。
その後、俺は作戦に関する質問の返答をした後、総集室に残っていたいつものメンバーと話をしていた。ダイヤもあの人ごみに紛れて去って行ったみたいだ。
「しっかしまぁ、タイミングと言うものが悪すぎるわね」
カノンが呆れながら言うとセンラがそれに対しての言葉を言う。
「仕方ありません。撃翔とはいえ所詮は鳥です」
「そ、そうかもしれないけど………」
「まぁ、何にせよこれを迎撃すればいいことじゃないか」
ガクスが呑気に言う。
「………そう甘い物じゃないだろう。過去の撃翔進攻戦の戦死者の数、把握しているのか?」
「………」
ヴァストに論破されたガクスはその話の矛先を俺に向けてきた。
「な、何だよ。………確か戦死者の数は行方不明者も合わせて約19万人だったはずだ」
レキナの授業をちょっとだけ受けといてよかったと思った瞬間だった。
「………そうだ。過去の撃翔進攻戦では撃翔に対する有効打が無かったからこのような大被害を生んでしまった。だけど、今回は違う」
「対撃翔用戦艦、海鈴型や空中歩行術の習得者数、そして訓練に訓練を重ねた軍人の数などが今回の撃翔進攻戦の有効打となるでしょう」
センラがヴァストの言いたい事を言うとヴァストはそれに頷き話そうとするが、奴が話に急に割り込んできた。
「その有効打にもう一つ追加。実はさっきヒランからの連絡でようやく完成したらしいよ」
ヒランとは奴の妹の海軍長の事であり、物凄いカリスマが溢れている人だ。実際、俺も見たことはないのでその姿などは全然知らない。
「何が?」
「およ? レイス君知らないの? ハクヤ君と一緒に真水鎮守府に行ったのに」
「いや、知らないな」
確かハクヤは海軍長に新型電探の事で話があるという事から俺と一緒にあそこに行ったんだよな。どうりでさっきの集合の時にハクヤの姿が無いわけだ。まだ話が続いていたのだろう。
「そう。えーっと、完成したのは『ハクヤ君の能力を埋め込んだ新型電探』だって」
「「「「「ええええ!?」」」」」
この場にいた俺たち全員が驚愕の声を上げる。
「そ、そんなに驚くことかな?」
「そりゃあ驚くに決まってるだろ」
「能力を埋め込む? そんなことできるはずがないだろ」
「いえ、可能です」
俺たちの質問攻めを断ち切ったのはレイガだった。いつの間に出てきたんだ?
「可能って、いったいどうやって?」
「レイスさん達は『贈受物』はご存知ですか?」
聴いたことも無い言葉だったので俺は首を横に振るが、センラだけはその質問に答えた。
「ちょっとくらいなら聞いたことがあります。確かそれは自分の能力のエネルギーを凝縮したものと」
「はい、大体合っています。贈受物は基本的に自分の能力を相手に渡し、相手が自分の能力を使えるようになるというものの中間部分の事を言います」
「中間部分?」
「はい。例えば、皆既日食を例に取ります。皆既日食を見ようとしても、太陽の光は強くて直視することができません。そこで、太陽の光を抑制してみることができる遮光プレートを使えば目を傷めることなく皆既日食が見ることができますね。この場合、太陽の光が能力で、遮光プレートが贈受物になるというのは分かりますか?」
「んー。な、何となく」
カノンが苦しそうな笑顔でレイガに応答する。
「用は能力の発動を少しでも抑制するためのものが今言った遮光プレートになります」
「………そういうことか」
ヴァストが理解できたような得意げな顔になる。
「………受け取った能力自体はすぐに使えるが相手が消費する魔力、霊力量は術者より膨大になる。その消費量を少しでも抑えるのが贈受物なんだろ?」
「正解です。流石ですね」
「でもよ、それが何で海軍の電探と関係があるんだ?」
ガクスが気難しそうな表情で問いかける。
「電探は皆さん知っての通り、海上で敵を見つけるためのレーダーです。そして、ハクヤさんの能力は『物を探知する能力』。もうお気づきですよね?」
そこまで言われて俺はやっとハクヤが海軍長に呼ばれた理由が掴めた。
「ハクヤの能力を生かして電探の索敵機能を向上させるためか?」
「そうです」
「でもよ、1つだけ腑に落ちないところがあるんだがいいか?」
「何でしょう」
「ハクヤの能力をそのまま使えば索敵機能も向上すると思うんだが、何で贈受物を使うんだ? さっきの話から、贈受物って能力を抑制するためのものなんだろ?」
「………正確には魔力、霊力の抑制だ」
ヴァストに指摘されたが、何も言い返せない。
今の俺の質問を聞いてセンラが小さな声で「そう言えばそうですね。何ででしょう?」と言っていた。
一呼吸おいてレイガが話し始める。
「それは電探に負荷をなるべく掛けないためです」
「というと?」
「ハクヤさんの能力を埋め込んだ新型電探は海鈴型の2番艦、海鐘に取り付けてあります。贈受物を埋め込まずに電探を使用すると、電探にハクヤさんの能力の魔力や霊力がそのまま流れ込み、短時間や暴走といったことが発生する可能性があります。従って、少しでも長く使用できるように、暴走しないためにも贈受物を取り付けて使用しないといけないんです」
「………なるほどな。で、贈受物を取り付けた電探は何時間くらい持つんだ?」
「そうですね。………ハクヤさんの能力や魔力、霊力量を考えるとざっと1週間ほどですかね」
「………1週間か。それまでにこれが終わればいいんだが」
撃翔進攻戦は1週間で終わるはずがない。それはみんなも分かっているはずだ。
「そう言えば、その新型電探の機能とかはどうなっているのかしら」
カノンの質問に奴が答える。
「旧海鐘電探は自艦から約70kmだったけど、ハクヤ君の能力を使って使用するとなんとこの約6倍近いところまで探知することができるんだ。ま、その分使用する電力量はバカにならないんだけどね」
「それくらいの範囲を探知できるんならこっちの準備もできるな」
「そうだな」
横目で奴がレイガに残りの式神が封じ込められている紙3枚を渡して、時計を確認していた。俺も流されて時計を確認すると時刻は昼過ぎだった。流石におなかも減ってきたので何か食べようと提案しようとすると、総集室に取り付けられているスピーカーからノイズのような音が走り、野太い男の人の声が響き渡る。
『全軍人に次ぐ。これよりヒトヨンマルマルから撃翔進攻戦防衛部隊の出撃を命ずる。昼食を済ませてないものは速やかにとり、出撃の準備を整えよ! 繰り返す。これより―』
放送が終わるとみんなで顔を合わせた。
「だとよ。とりあえず、食いに行くか」
「そうだな。腹が減っては戦はできぬってどこかの国の言葉にあるし」
残りの3人は頷くと俺たちと一緒に総集室を去った。
後ろを振り返るとレイガが式神を実体化させていた。
軽い昼食を済ませると俺たちは寮の部屋へと一時的に戻って心の準備をしていた。
いよいよ、撃翔進攻戦が開始するのか。まだ実感がわかないけど俺は副準隊長としてやることはやるだけだ。誰も死なせない、死なせてたまるもんか。フォールーズの名に懸けて。
撃翔進攻戦か。正直こんな大きな戦いに参加するとは思わなかったがこれも軍人の運命なんだろうな。しかも2班の隊長に昇格したんだ。やるだけの事はやって、生きてまたレイス達と調査依頼をしに行きたいぜ。さぁ、俺の鼓動を刻ませろ!
………撃翔進攻戦、この島で起こった大被害の歴史。俺はその歴史の1ページを飾ることになるのか。だが、それも悪くない。命尽きるまで戦い叫んで、俺の戦果をこの歴史に埋め込んでやる。
私はこの戦いにできれば参加したくなかった。私が死ぬのは嫌だし、同時に皆が死んでいくのも嫌。だけどそんなことは言ってられない。私は………この戦いで変わるんだ! 虚空を飛んでいく1発の弾丸のように。
私はこの戦いで皆さんの足を引っ張りたくない。そのような決意があるからこそ私は今、この場所にいて戦えるんだ。平和な生活を送るためにも私は………戦うんだ!
―この戦い、必ず勝ってみせる!!
現在時刻マルゴーヨンナナ。夜明けの静かな波の音が聞こえる海上に、海鐘のデッキから風で涼んでいる僕―サバはいた。
僕たち第2索敵戦隊はほかの海軍の艦隊より前に出ている。その理由は簡単。
「そろそろ目的地点の座標だ。贈受物電探を起動。敵撃翔の動きを感知せよ!」
僕がデッキからそう言うと海鐘の船員たちは「了解!」と言って電探を起動し始めた。
僕の海鐘にはハクヤ君の能力を授かった新型電探、贈受物電探があるためほかの艦隊よりも先に進まないといけない。この電探の能力はかなり遠い範囲のものでも探知することができる。ただ、所詮は改良して贈受物を埋め込んだだけなのでレーダーの敵である電波欺瞞紙などには効果があまりない。
暫くして目標の座標の海上に着くと海鐘は少し速度を落として索敵に専念する。
「サバ大佐、では行って参ります」
「気を付けて行ってこい」
カタパルトには海軍の軍人が1人だけ乗れるような小型の水上偵察機もある。その数5機。
僕はその5機の小型の偵察機に載っていく海軍の青年や女性を笑顔で敬礼しながら見送ると司令塔内へと入っていった。
司令塔内の指令室はいつも以上に慌ただしかった。無理もないだろう。これは訓練ではなく、本当の実戦なんだから。
やがて暫くすると電探の探知を管理している女性の海軍人が声を上げる。
「サバ大佐、電探に感あり。大量の撃翔がここから右約40度の方向にこちらを目指して進撃中」
「撃翔の種類は?」
「雀が7、カラスが3の割合です」
ハクヤ君の能力を受け取った贈受物電探は今までの電探とは違って敵の種類までも見分けることができる。つまり、これによって敵の編成が分かるという事になる。
雀やカラスは撃翔の中でも数がとても多いはず。
「威力偵察部隊、あるいは特攻部隊………」
小さく呟いたはずが女性の海軍兵にまで聞こえてしまったらしく、答えてくる。
「前者の方が正しいかと。撃翔も喜んで後者を選ぶわけないですし」
「そう、だよね。いくら偵察部隊とはいえ、島にまで行く可能性がある。ここで少し迎撃するよ」
「了解しました」
僕は指令室にある隊長席に座ると手元にある通信機のマイクに向かって話す。
「第2索敵戦隊に旗艦海鐘より命ず。これより敵威力偵察部隊との迎撃戦を開始する。各艦は砲雷激戦の準備を開始、合図が届き次第交戦せよ」
ガガガッとノイズが走るとスピーカーから声が聞こえてきた。
『海鈴、了解』
『海撥、了解』
『海笛、了解』
『海鼓、了解』
同じ海鈴型の艦長から応答の声がそれぞれ聞こえる。
それぞれの応答の声が終わると同時に艦員の声が指令室に響く。
「大佐、撃翔の距離ここから約50。………40。………」
艦員の声通り、僕の肉眼でも撃翔の群れが黒い点のように見える。
「機関速度徐々に上げ、鳥撃弾装填、いつでも砲撃できるようにしろ」
鳥撃弾とは対撃翔用の海軍兵器の1つである。弾の中に無数の弾丸が装填されていて、撃翔に当たると破裂してそこからその弾丸が飛び出すという仕組みの兵器だ。もちろん、空中で破裂させて弾丸を飛び出させるというのもいいが、そうすると余分な弾が発生してしまうためなるべく撃翔にあてるのが基本的である。
やがて撃翔が肉眼でその姿を確認できるようになると僕はマイクに向かって声を荒げる。
「海戦防護壁起動、全艦隊、カウント後に砲撃開始!」
海戦防護壁とは対撃翔用の海軍兵器の1つである。敵は鳥で自由に攻撃ができるが、こっちは船で思うように攻撃を躱すことができない。そこで開発されたのがこの海戦防護壁である。これを起動させると暫くの間、撃翔の攻撃を防ぐことができ、こっちの攻撃の的にさせることができる。ただ、デメリットが一つあり、この海戦防護壁は艦員の魔力、霊力によってできているため、それが切れるとこれは暫くの間使えなくなる。
撃翔が真上まで来そうなところまで来ると僕はマイクを持ってさらに攻撃を荒げる。
「3、2、1、砲撃開始! 撃て、撃て!!!」
ドオォン!
と砲撃音とその砲撃によって揺れ動く海鐘。
指令室の窓からは砲撃した後に生じる黒煙と、鳥撃弾を受けて海へと落ちる撃翔の姿があった。そして鋭い嘴で海鐘を突こうとする緑色の雀、長い嘴で海戦防護壁を噛み砕こうとする蒼いカラス。それを引きはがすかのように砲撃音を轟かせ迎撃する海鐘の主砲。
倒した撃翔は血を流しながら海に落ちるが、海深くには沈まずに黒い煙となって霧散する。どうして撃翔が黒い煙となって霧散するのか未だに解明できてないらしいが、僕はそれが一番いいと思っている。海が赤くなってしまうのは仕方ないが、死体を海に沈ませないのは海を愛する僕にとって好都合だったからだ。
撃翔の攻撃に激しく揺れ動く海鐘だが、そんなことでは動じない。
「様子はどうだ?」
僕は今の状況を艦員に尋ねる。
「優勢です。鳥撃弾の効果によって1発約10羽程度の撃翔を倒せていて、シースルーウォールの被害もそこまで重くありません」
シースルーウォールとは海戦防護壁の別名である。
やがて砲撃音が止み艦体が揺れ治まると1人の艦員が声を上げる。
「敵威力偵察部隊、撤退開始。こちらを振り返ることなく撤退していきます」
「撤退した撃翔数は?」
「約30羽。そのうち、雀が9、カラスが1の割合です」
威力偵察部隊としてはかなりの痛手を被ったことになるだろう。
「大佐、海笛からの伝言です。『敵威力偵察部隊、数羽迎撃失敗』」
やっぱり抜かれたか。
僕だってここで全ての撃翔を迎撃できるとは思ってない。突破された撃翔はほかの海軍艦隊が交戦してくれるはずだ。
「第3水上打撃部隊に繋げ」
「了解です」
僕はマイクを手に取ると冷静さを取り戻すために深呼吸をして話す。
「第2索敵戦隊旗艦海鐘から第3水上打撃部隊に伝言。数羽の撃翔の迎撃に失敗。発見次第攻撃を開始してくれ」
ノイズが走り、声が聞こえる
『第3水上打撃部隊旗艦夜星、了解』
第3水上打撃部隊旗艦の夜星は夜風型軽巡洋艦の2番艦であり、海鈴型と同じく対撃翔用の艦艇である。何で夜星が旗艦になっているのか僕にも分からないが恐らく、撃翔の目を誤魔化せるためだろう。あえて戦艦を旗艦にせず、軽巡洋艦を旗艦にすることによって戦艦が攻撃できるチャンスを与えたという感じだろう。
暫くしてスピーカーから夜星の艦長の声が聞こえてきた。
『第3水上打撃部隊旗艦夜星だ。第2索敵戦隊が迎撃失敗した撃翔を撃破、霧散完了』
「了解。ご苦労様」
僕は通信を切ると指令席に深くもたれかかって改めて座りなおす。
「大佐、お疲れ様です」
艦員の一人が僕の傍によって来る。
「何、こんなことでへこたれていたら次の第2陣、第3陣は倒れているよ」
「ふっ、そうですね」
艦員が笑うと、天井に設置されている赤いランプが点滅し始める。
「これは………」
「水上偵察機からですね」
「シースニー、繋いでくれ」
「了解です」
艦員―シースニー・カーレントは慣れた手つきで回線を繋げて僕の指令机に表示させる。
「どうした? 連絡するにはやけに早いような」
ノイズがかかってよく聞き取りにくい。
『大佐、………うは映ってないんですか?』
「撃翔? それならさっき偵察部隊と思わせる集団を撃破したよ」
だが、水上偵察機のが海軍人は声を荒げる。
『ち、違います! 銀白色の………燕の集団です!』
「何!?」
僕は反射的に机を思いっ切り叩いて立つ。そして確認する。
「シースニー、電探は?」
「は、反応なしです!」
僕は再び机を叩く。
「くそ! 距離は?」
『………80くらいです』
それくらいなら間に合う可能性がある。
電波欺瞞紙鳥をこのタイミングで出撃させてくるとは思わなかった。やっぱりハクヤ君の能力をもってしても電波欺瞞紙鳥には敵わなかったようだ。
僕はマイクを手に持つ。
「第2索敵戦隊全艦に告ぐ。これより敵撃翔第2陣を迎撃する。敵には電波欺瞞紙鳥の姿あり。十分注意して迎撃せよ!」
『海鈴、了解』
『海撥、了解』
『海笛、了解』
『海鼓、了解』
全艦から了解の声を聞くと僕はマイクを置いて、目をこじらせて指令室の窓からこっちに飛んでくるだろう撃翔を見る。
「シースニー、電探の索敵機能を最大にしてくれ。電波欺瞞紙鳥がいようともその集団の撃翔を発見して方向を探ってくれ」
「り、了解しました」
電探の索敵音が静寂の指令室に響かせる。
「………」
こうしている間にも撃翔は近づいている。なんとしてでも早く見つけてくれ。
「………大佐、正面方向です!」
「よくやった!」
マイクを手に持つ。
「第2索敵戦隊全艦に再び次ぐ。敵撃翔は我が艦隊の正面方向から突撃してくる。鳥撃弾装填、海戦防護壁展開、迎撃準備せよ!」
言い終わるともう肉眼でその姿を確認できる距離まで撃翔はいた。
銀白色に輝く巨大な翼に雪を思わせるような真っ白い嘴。どうやらあの燕の翼が電波欺瞞紙の働きを行っていて電探の探知機能を妨害しているのだろう。だとすれば真っ先倒すのはあの燕だ。
敵の編成としては最前列にその燕、後ろにカラスや鳩が輪形陣のような人を組んで飛んできている。輪形陣なら効率がいい。
「各艦、戦闘開始! 撃て、撃て!!!」
ほんの数分前に聞いた砲塔の轟く音や撃翔の断末魔、霧散した霧や砲塔の黒煙などが聞こえ目に入る。
砲塔が傾き、優雅に空を飛びまわる撃翔に向かって鳥撃弾を撃ち放つ。それを受けた撃翔はギュアァァァ!! と鳥そのものを忘れていそうな断末魔を残しながら霧散する。
海戦防護壁に守られているからと言って撃翔の攻撃が船体に当たることはある。指令室の窓からもカラスの撃翔の攻撃によって穿かれ、煙が出ているデッキが見える。また、攻撃もさっきより激しく船体が大きく右へ左へ傾く。
燕の撃翔が目の前を飛ぶと、僕は瞬間的に声を荒げて叫ぶ。
「海鐘式徹甲弾、装填!」
海鐘式徹甲弾とはこの艦だけが持っている特殊兵器だ。鳥撃弾のように拡散したりしないが、鋭い鋼鉄や砲塔の勢いで艦艇をも大穴を開けれるという徹甲弾だ。また、水中に潜ると徹甲弾の後ろに付けられた誘導式プロペラによって誘導し爆発を起こさせるものでもある。
銀白色の燕が砲塔の斉射範囲に入ると僕は叫ぶ。
「主砲、副砲、全門斉射!!」
海鐘に搭載されている40cm連装砲と13cm三連装副砲が同時に火を噴き、海鐘式徹甲弾を銀白色の燕に向かって斉射する。
だが、燕は海鐘式徹甲弾の弾幕を何ともなかったかのように優雅に回避し、カウンターとしてその白い嘴で船体を大きく揺らしてくる。
「くっ、もっと奴を近づけさせろ! 斉射は指示する!」
銀白色の燕は海鈴など、後ろの艦にも挑発をしているかのように戦隊を揺らして自分自身は攻撃していないみたいだ。鳥撃弾の効果により周りにいたカラスや鳩の撃翔は次々に霧散していくが、燕の撃翔はその鳥撃弾の弾丸さえも優雅に躱していく。
もしかして………。
僕はある可能性を思いついた。もしこれが本当ならあの燕の撃翔との戦闘を長引かせるとまずいことになる。
「シースニー、こっちも電波欺瞞紙を撒いてくれ」
「え? あ、はい。了解しました」
シースニーはほかの艦員と一緒に指令室を出ていった。これでこの指令室には僕だけがいることになる。
何度か戦隊が多く揺れたのち、銀白色の燕の動きが急に変わった。さっきまで優雅に滑空していた燕だが、突然苦しそうに急に角度を変えたり海に潜ったりし始めた。
かすかに見えるが、海鐘の排煙と一緒にシースニー達が撒いてくれた電波欺瞞紙がキラッと輝いて見えた。
バン! と指令室の扉が無造作に開けられるとそこにはさっき電波欺瞞紙を撒きに行ったシースニー達艦員がいた。
「大佐、これはどういうことですか?」
艦員の一人が訊いてくる。
「あの燕は電波欺瞞紙だけの役割だけじゃなく、鉄を回避する電探としての役割も持っているみたいなんだ。鳥撃弾の弾丸も一切当たってないようだし、高性能の電探で弾丸を回避しているんだろうし、その証拠に、海鐘式徹甲弾だって鉄だしね」
「な、なるほど。という事は………」
「あとは君たち、砲撃者の実力だよ。海鐘式徹甲弾、次発装填!」
艦員たちも驚きの表情からいつもの表情に戻ると自分の持ち場について作業をし始める。
僕は苦しそうに空を飛びまわる燕を主砲の斉射範囲に入るまで目で追い続ける。
そして斉射範囲内に燕が入ると僕は間髪入れず声を荒げる。
「主砲、全門斉射!!」
ドォォォォン!!
一斉に海鐘の主砲が轟音を轟かせる。
放たれた海鐘式徹甲弾は弾幕を張り、銀白色の燕を胴体から撃ち穿いた。
ギュクアァァァ!!!
とても燕の声とは思えないほどの断末魔を空へ響かせると、燕は海へ沈み黒い霧となって霧散した。
その際、霧散する燕が不敵な笑みを浮かべていたのを僕は見逃さなかった。
「よし!」
僕は片手で握りこぶしを作って喜んだ。だが、喜んでいる暇もない。
「全艦、敵撃翔に備え警戒せよ」
「大佐、どうしてですか? 電探に入ってからでも警戒した方がいいかと」
僕はその質問に即座に答える。
「いや、次の第3陣はすぐそばまで来ているはずだ。あの燕は主力部隊が到着するまでの時間稼ぎ要因だった可能性が高い。また、さっきも言った通り、あの燕は電探としての機能も備えている。もしあの電探が伝令の役割を持っていたら………」
「!? ま、まさか!?」
「そう、敵主力撃翔がここを避けて島に侵入する可能性が高い。もしくはこれから来る第3陣は僕たちを陽動する部隊であり、主力は別方面から飛んでくる。飛んでくる方向としては………南だろう」
「み、南方面には第4対空部隊と第2空母機動部隊しか配備されていません!」
「至急、ヒラン海軍長に繋いでくれ!」
「り、了解しました」
艦員が急いで回線を開ける。
が、いつまでたっても回線が繋がらない。
「どうした!?」
「す、すいません。何度回線を開けようとしても即座に遮断されてしまうんです」
「ま、まさか………」
僕ははして指令室の扉を開け外に出た。
「た、大佐!?」
海鐘の主砲辺りから司令塔を見上げる。澄み渡った青空に撃翔との戦いで飛び散った撃翔の血や羽がデッキのいたるところに散乱しているが、問題はそれじゃない。
さっきの燕が死に際に落としっていったであろう銀色の羽が海鐘のアンテナを押しつぶしていた。
おそらくあの羽が回線の電波を遮断しているんだろう。
僕はコートを翻すと急いで司令塔内へと戻っていった。扉を無造作に開けると艦員は少しそれに驚いていた。
「臨時電波回線を開け、今すぐにだ」
「は、はい」
司令塔内にいる艦員全員が作業し始める。数分後、回線が繋がったらしくノイズだらけの音がスピーカーから聞こえてきた。
「海軍長、聞こえますか? 第2索敵戦隊旗艦海鐘です」
僕は大声でマイクに話す。ノイズ混じりでよく聞き取りにくいが、海軍長の声は聞こえる。
海軍長は小型のカメラを各艦に一つずつ付けていて、戦いの様子だけは見ているはずだ。
「………い。何で………うか?」
「敵撃翔の主力は南方面に向かって進行中の予想。至急、別動隊の出撃許可を!」
「………りました。第3対空戦隊を………へ向かわせます」
「協力、感謝です」
小型カメラとはいえ、僕たちの会話まで全部聞こえていたんじゃないかってくらいあっさりしてして驚いた。ともかく、第3、第4対空戦隊がいるのならある程度大丈夫だろう。あっちの旗艦はフロードなんだから。
臨時電波回線を閉じると電探の音が少し激しくなってきた。
「大佐、電探に感あり。敵陽動部隊と思われる撃翔が正面方向、別主力と思われる撃翔が南南東方面から進行中。距離100」
流石ハクヤ君の贈受物電探だ。電波欺瞞紙羽があろうとも見つけてくれる。
「了解。艦員は撃翔に備えて警戒。僕は電波を直してくる」
「お気を付けて」
僕は指令室の扉付近の天井にある非常用扉を開けて梯子を上る。この梯子はあの銀色の羽があるアンテナ部分に繋がる。
バン! とアンテナ部分に繋がる出口の扉を開けるとそこにはハンモック並みの大きさの銀色の羽があった。
恐る恐る手を伸ばして持とうとするがびくともせず、羽特有の柔らかい感触が無く鉄みたいにざらざらだった。
僕は周りを確認すると手を前へ突き出して印を組む。
「我が元に集いし力よ。我が真想に答えて顕現せよ」
顕現の言霊を唱えると印を組んだ指先に小さな指揮棒が出現する。僕はそれを手に持つと気を集中させて指揮棒を持った腕を空高く掲げる。
すると海の水がそれに応えるかのように水柱を作った。そして指揮棒を銀色の羽に向けるとその水柱は重力を無視して羽に向かって進み、羽をまるで生き物のように掴む。指揮棒を思いっ切り振り下げると羽を持った水柱は羽を持ちつつ勢いよく海へと戻った。海の中に入った銀色の羽は黒い霧となって霧散した。
今発動したのは僕の能力『海を操る力』の一種である。僕はこの能力名前を『シーレントウォーク』と呼んでいる。この能力は海、いわゆる塩水を操ることができるが、海を割ったり固めたりすることはできない。また、この能力は僕の真武『海操指揮棒』が無いと扱うことができない。その分使用する霊力は大きく、海戦防護壁の使用時間を1時間も減らすほどだ。なるべくこの能力はこの戦い中使いたくない。
アンテナに傷が無いか確かめると僕はそのまま水平線を眺めた。
撃翔らしき黒い黒点がちらほらと見える。そして僕は島で戦っているであろう戦友に向けて叫ぶ。
「海は任せろ! レイス!」
その言葉に応じるかのように水平線に輝く太陽は、さらに輝きを増し僕を照りつけた。
いかがでしたでしょうか? 随分時間を空けてしまい申し訳ないです。ま、忘れていただけなんですけどね(殴
今回の話の目玉はやっぱり海戦だと思います。書いていて非常に楽しかったですし、実際に戦っている姿を想像できたので良かったです。
ただ、あくまであの海戦や船体は僕の創造しているものであって、本当のものではないのであしからず。これ違うだろうがと思うかもしれませんが、まだそういうところは初心者なので。
作戦や行動もまだまだ初心者だなぁ。
これからの予定ですが、忘れなければGWくらいには投稿できればいいなと思っています。高校生活がちょっと忙しいもので。
また、新たな小説、『少年学園日~映し日の生活記』という小説のできれば書こうかなと思っています。楽しみにしておいてくだせぇ。
では、また『少年軍人日~第二次撃翔進攻戦 後編』でお会いしましょう。