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2024年、夏。
日本中を感動の渦に巻き込んだ東京オリンピックも終わり、日本では少子化問題も解消され、逆に人口爆発が懸念され始めていた。
食糧問題や化石燃料の枯渇、水不足など、人口爆発に伴う世界的な問題も後を絶たなかった。
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俺中崎翔は、今年で高校2年生になった。軽音楽部に所属し、恋人と呼べる存在こそいなかったものの、そこそこ充実した毎日を送っていた。
7月20日。蝉の大合唱が耳に障るこの時期にようやく夏休みの始まりを告げる、終業式である。もちろん、校長の話など真面目に聞いている者は少なく、皆夏休み前ともあり表情は緩んでいた。
「なあ、翔!26日の花火大会さ、いつもの3人で行こうぜ!」
式の途中というのに真後ろを向いている瀬戸遼太郎は、俺のバンドのギターボーカルである。成績は芳しくないが、悪巧みにだけは長けている。
「分かったからとりあえず前向けよ…先生睨んでるだろ」
「はいはい」
式も終わり、下校の時間になった。
「おしゃ!翔!夏美!帰るぞ!」
神原夏美は、俺達と同じバンドのベース担当だ。昔からやっていたらしく、俺たちとは桁違いに上手い。(ちなみに俺はドラム担当)
「つか遼太郎よ、お前26日補習じゃなかったっけ?」
「あ…w」
「私もだw」
「花火大会どころじゃねえなw勉強しろよw」
「いやー、流石に夕方には終わるっしょー」
「あーでも、田村なら夜までやらされるかもねー…数学でしょ?」
「うん。まあ英語と物理もだけどなw」
「はぁー、練習時間減っちまうな」
「俺はお前より上達早えからいんだよ。むしろちょうどいいハンデだぜ」
「そーんな悠長なこと言ってると1年生に抜かれるよー」
「わかってるっつの…ん?」
「どした?遼太郎」
「いや…あれ見てみ」
遼太郎が指差した先には、「34」と書かれた緑色のゴムボールのようなものが落ちていた。
「なんだこれ?」
「さあ…?」
「あ、こっちにも二つあるよ。「11」と「840」」
その時、3人の携帯電話が同時に鳴り響いた。
「メールだ」
「俺も」
「私も」
「えーと……あ?どういうことだ…?」
「読むの早いな優等生くんよwで、なんだって?」
大まかな内容はこんなものだった。
日本人諸君、ごきげんよう。
たった今、全世界に人類の半数だけボールを散布した。それには数字が書いてあると思うが、まあそれはさておきとりあえず一人一つボールを入手してくれたまえ。ボールに触れると、こちらの世界に転送されるよう設定している。なお、僕も気が短いのでね。三十分で締め切らせてもらう。では、また後ほど会おう。健闘を祈る。
「「「……は?」」」
図らずも3人の声がハモった。
「こちらの世界って…何?wマンガでよくある設定的な?w」
「さあwおもしろそうだから行ってみる?w」
「あんま気乗りしないなー…バクハツとかしたらどうするよ」
「いいじゃーん、楽しそうで♪じゃ、俺は
先に行かせてもらうぜ!11番もーらいっ!」
「おい、待てって!遼太郎!」
引き止めたが、もう遅く、遼太郎は一瞬で消えてしまった。
「消え…た…?」
「マジかよ…」
「私たちも行こうよ!ほら!840番あげるから!」
「なんだよ夏実まで…ってか、その数字の意味もわかんねえしよー」
「先に行くね!」
そう言うと、夏実は消えてしまった。
「行くしかないか…」
>>続く