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厨二病...?

“お前はいつも俺のところに来るのだな。“


小さい頃の夢を見た。家の近くの枯れかけた湖にいつもいる着物の綺麗な女の人。凛とした声で笑いかけてくれて、会いにいったら必ずすぐに来てくれた。悲しい時も楽しい時もいつでも話しをするために会いに行った。


“...ぃ...ちゃん!...ちゃん?おらへんの?“


3日間。うちが風邪で3日間来んかったらそれから彼女を見ることは無くなった。それから1年したら枯れかけてた湖は完全に枯れてもうたんや。あの人は誰なんか、うちは今でもわからへんけどあの湖は彼女のおかげで枯れてへんかったようなきがしてた。


「ん...。夢...。」


ぼんやりと目を開けると見たことのない和室にいた。頭が痛いけれど、少しずつ思い出していく。そうや、うちは自殺しようとしたんや。それやったらここは天国?地獄?死ぬ間際に死神が見えた気がしたからやはり地獄やろうか。死ぬときには幼い頃の夢を見るというのはほんまやってんな。


「はぁ、死後の世界てこんなもんなんや。」

「何が死後の世界じゃ。女。」

「え...きゃぁ!自分いつから!?」

「寝とる時からずっとおったけぇ。」


大きい独り言を呟いても寂しく部屋で消えるだけだろうと思っていたから、ため息ついでに思いのほか普通やなという素直な気持ちを言ったら、低くてすっと心に届くような声で、答えが帰ってきてむっちゃ焦る。体をねじってそっちを向くと、高い位置にある窓から差し込んだ光に照らされてきらきらと銀色に光る白髪が見えた。さらりと長い髪の間から切れ長の金色が覗いている。素直な感想は、綺麗。一瞬女かと思ったが分厚そうな着物から見える胸板がそうではないとわからせた。


「あ、ところでここは?地獄?」

「やからいっとるじゃろ。死後の世界やないぜよ。」

「でもうち死んだし...。」

「助けたんじゃよ。俺が。」

「え...。」


さも当たり前のようにそう言いのけたその人に“何で...“と呟くと“俺の家で死なれると後味が悪い“と返された。彼の家?あの境内が?それで神社やのに誰もいなかったのか、と納得しかけるが、すぐにそんな筈ないと首を振った。すぐ前の階段のところに神社って書いてあったし!


「そうじゃよ。俺がその神社の神やけのぅ。」

「.........は?え、あ、あれか。厨二?」

「ちゅうに?俺はそんな名前やなか。」


あかん、自覚無い方の厨二病や。もう一度ちらっと盗み見ると整った顔が見えた。


「確かに人と言うには綺麗すぎるし肌も白いし、男の人にしては髪もさらさらでめっちゃ長いし着物姿むっちゃ絵になってるし胸板はやばいけどな!?」

「褒め殺しじゃの。」

「あー、おん。」


って、何の話ししてたんだっけ。えーっと、と少し前の会話を思い出す。そうだうちのこと助けてくれたってとこから神とかどーとかになったんだ。


「そうだ、助けてくださったのはありがとうございます。」


布団の上に正座して深く頭を下げる。良く考えたらあれくらいで死ぬなんてどうかしてた。どうせ死んでも誰かに迷惑かけるんやろうし...っていうか現に今も迷惑かけてるし、それなら最後まであがこう。にこっと笑うと“もう死ぬ気はなさそうじゃな“と笑い返してくれてぽんぽんと頭を撫でてくれた。


「女、名前は何ていうんじゃ?」

「渡邊和桜。自分は?」

「俺の名前は言えんけぇ、好きなように呼びんしゃい。」


人のを聞いておいてなんだこいつは...と思いつつ呼びにくいから適当に考えようとしていると、頭に手を置いたまま“和桜...“と呼ばれる。ぼんやりと体の中があったかくなる気がして不安とかそういうのが体の外へ流れていく気がした。同時に頬を涙がつたい、その男を見上げる。


「俺の加護で守ってやるけぇ。」

「...!」


人前で泣いたのはいついらいだろう。恥ずかしいし迷惑かけたくないし必死で溜めていたものが流れていく。うっうっと泣き慣れずに詰まるうちの背を何度も撫でられた。もしかしたら本当に彼は神様かもしれない。そんなことを思いながら泣き続けた。初めて会ったのにこんなに良くしてくれて、泣かせてくれて、セリフは相変わらず厨二病っぽいけど優しい人。もう一度彼のことを見上げ、美しい白髪を見たうちはぽつ、とつぶやいた。


「ハク...。ハクって、呼ぶ...。」


まさか、取り返しのつかないことになるなんて少しも思わぬままに。

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