球流れ #03
入店から1時間半ほど。
適度に料理とアルコールを摂取し、お互いに、ほろ酔いと泥酔の中間地点。話は弾んでいたが、やや速度とテンションは落ちる頃合。萩原が聞いた。
「ヒーロはギャンブルとかするの?」
「うーん、テレビゲームとかはするし、将棋とかもやる。だけど、お金を掛けてまではやろうと思わないかな。競馬とかは競走馬を育てるゲームをやってたから、ちょっとは興味あるけど。ハギーは何かやってるの?」
「オレはパチンコに嵌はまってるかな」
「パチンコかー。僕、半年くらい前まではタバコ吸ってたの。その時の話だけど、タバコを吸える場所って少ないでしょ。だから吸いたくなったら、パチンコ屋さんに駆け込んでたな。タバコを吸いながら、パチンコを見ちゃうんだけど、楽しそうだなーって思ったよ。やり方が分からないから敬遠してたけど、実際に楽しいの?」
やや疲れ気味だった萩原の表情が明るくなった。
「あぁ、すごく楽しいぞ。何事にも代え難いくらいに。やり方なら俺が教えてあげれるし、ここら辺はたくさんあるから、この後、ちょっとだけでも行くか?」
居酒屋を出たのは20時頃であった。
「歌舞伎町のパチンコ屋ってずっとやってるのー?というか、お酒が入ってるのに大丈夫?」
「だいたい23時まで。それに遊びなんだから、酔っ払ってる方が楽しいよ」
そう言って萩原と広枝は、近くのパチンコ屋に足を運んだ。
居酒屋と同じか、週末のせいもありパチンコ屋は盛況だった。
広枝が店内の轟音に眉間みけんを寄せてる間に、萩原が二人分座れる席を見つけ、隣同士で座りあった。先ほどの居酒屋以上に会話が聞き取り辛い中で、広枝は耳打ちで遊戯の仕方を教わった。
「右上のここに千円札を入れる。台のここを押すと500円分の玉が出てくる。レバーを回すと玉を打ち出す。玉がここに入ると画面が動いて、運良く数字が揃うと大当たり」
ジェスチャーを交まじえた、とても簡素な説明だったが、初めての広枝にとってはシンプルで分かりやすかった。
「ふーん」軽めの欠伸をしながら広枝は言われた通りに打ち始めた。
暫くして液晶に映ったキャラクターが忙く動く。三つの数字が回転を始め、止まった。が、揃わない。幾度も、幾度も。
次も、その次も揃わなかったが、液晶が急に暗転し、画面が赤く光り出した。
突然、映像が流れたかと思えば、「リーチ」という文字。
右隣りの萩原の肩を叩いて、指を指した。萩原は、にこやかに微笑みながら、首を軽く左右に振った。その行動に広枝は意味も解かいさずに高揚し、画面を注視した。
凝こった演出だったが数字は揃わなかった。がしかし、そこから更に場面が展開し、新しい映像と共に、再抽選が始まった。もう一度萩原の肩を叩いたが、先ほどと同じように微笑みながら「あたるかも」と言う口角こうかくが読みとれた。
広枝はレバーを握る右手を力ませ、数字が揃う瞬間を凝視した。揃いそうだった。その刹那、当たりを確信し内心喜んだ。が、数字は滑り、三つの数字は揃わなかった。正直、力が抜けるように落胆した。
萩原は耳打ちで伝えた。
「よくあることだよ。でもああいうのを熱いって言うんだ。当たるかもと思った一瞬、楽しかっただろ?」
確かに楽しかった。正確には興奮してしまった。