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十勇士  作者: ak
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01

京都府撫子市。

今日内では第三位の人口を有するこの町は現在、観光名所が多かったり夏の厳しい京都では珍しく避暑地となっていたりと人が途切れることがない盛んな町であった。


その町では巨大な敷地を有するひとつの有名な学校が存在した。

その学校は昔から名門の家々や後に有名人となった人物などを輩出するなど関西では有名な学校だった。


その学校にはひとつの伝統があった。

優秀な生徒の中からさらに優秀な生徒を選りすぐって学校の看板にするというものだった。

この伝統は学校創設から脈々と受け継がれている伝統で、最初は帝の近衛長を勤めるための優秀な人材を探し出し育てる意味があったとも言われている。


歴代の生徒はそれぞれ非常に優秀な人材だったと語り継がれている。

特に、ある時期に集まった十人の生徒は特に優秀で、ひとりひとりが100人にひとりの天才だとも言われており、敬意を表して「十勇士」などと言われていたそうだ。



神龍寺学園。

巨大な敷地と中・高校生合わせた膨大な生徒を有するこの学校は、実績と伝統ある学園として関西にその名を轟かせていた。

体育系・文科系の学校でも強豪の部活は多く、個人個人で素晴らしい実績を残している者も多い。

そんな学校だが中学から高校へのエスカレーター式で、中学は面接重視で試験はそこまで難しくないとされているが、高校からの入学は試験が難しくなっており毎年、入学してくるものは少ない。

池上浩太いけがみ こうたは珍しい方の生徒だった。


「ようやく・・・ようやくこの学校に入学できたんだよね・・・」


眼前に見えるのは噴水を中心とした広場と奥にそびえる木造建築の校舎。話によると木造建築ではなく、木造建築に見えるように造った建物らしい。入学説明会で生徒会長が説明していた。


「ありさちゃん・・・」


彼がこの学校を受験しようとしたきっかけ。それは昔から憧れていた幼馴染の女の子が自分と一緒の学校に通いたいと言ってくれたからだった。

親にも教師にも、同級生にも無理だと言われていた彼は猛勉強の末、この学校に入学することが出来た。

恐らくぎりぎりの成績で受かったのだろうと予測している。ぎりぎりといっても普通の高校なら余裕で入れるほどの成績のはずだ。

とても辛かったし、元々の成績が学年の中間ほどでしかなかった彼にとって簡単なことではなかった。

最後の一年は特にいろいろとやりたいことを諦めたりもした。

しかし、憧れの女性が隣で教えてくれたので頑張れた。


「ううっ・・・思い出したら涙が出てきた」


それでも受かったのだから頑張れる。

決意を新たにして再び前を見ると待ちに待った幼馴染が手を振っている。

走って近づいていくと微笑んでくれた。


「もう、遅いよ? 私が案内してあげるんだからもっと早く!」


「ご、ごめん」


「冗談だよ! 時間通りだから安心して。こういうところが浩太くんのいい所だよ」


「ありがとう・・・」


踊りだしそうなくらい嬉しかった。本当に踊りだしたら変人なので踊らないが。

実は少しくらい期待してもいいんじゃないかと受験中から考えていた。恥ずかしい上に勘違いだったら気まずくなってしまいそうで言えはしないが・・・。


「それじゃあいろいろと説明してあげる。まずは手前を見て」


先ほどから見えている大きな校舎。やはりどう見ても木道建築にしか見えない。


「これは、今は建築業界ですっごく有名になっているこの学校の卒業生が卒業のときに作った図面を元に作ったんだって!」


「え? じゃあこの校舎は高校生が作ったの!?」


「ま、図面だけどね。それでも凄いよね!」


「うん・・・」


圧巻させられる。昔の良さを醸し出しつつ、決して古い印象を持たせない。この建物にはそんな迫力がある。


「他にも校舎はいくつもあって、部活動のための建物だったり特別な理由で使われる建物だったりするの」


「特別?」


「うん。例えば委員会とか」


ああれを見て、と指差した先には普通の建物が並んでいた。すぐそばに立っている旗には校章が朝日にきらめいている。


「?」


「あれは委員会の建物で、一階を風紀委員が二階を生徒会が使っているの」


「どの部屋を?」


「全部よ」


「!?」


何気なく見ていた建物をもう一度見る。その建物は縦長で遠めに見ても少なくとも教室八つ分はあるように見える。


「・・・この学校って凄いんだね・・・」


「そうだよね! 私も入学したときはそう思っていたんだけど今はなんともないの。感覚が麻痺しちゃったのかも」


かわいらしく舌を出す。その姿に心臓がどきりとしてしまうが凝視するのは失礼かと思い慌てて自分たちの学び舎のほうを向いた。


「あ、あの建物は!?」


焦っているのがばれないように慌てて話題を探す。本校舎の置くに一軒だけ離れて建っている建物を慌てて指差した。


「ん? あー、あれ?」


そんな浩太の焦りにも気付いていないらしく指差した建物を見る。


「あれは浩太くんもすぐに知ることになると思うけど、“十勇士”が使っている建物だよ」


「じゅ、十勇士?」


そう、と言って頷く。


「学校の中でも特に優秀な生徒を集めた組織なんだって。結構、権力を持っているみたい」


「権力って・・・」


学生に権力などあるのだろうか?

などと疑問に思うものの、この学校の思想は「選民主義」らしい。

実力があり、実績があるものに多くの権利が与えられるシステム構成なのだと聞いた。

いろいろと批判の声もあるが、実際にそれを超えるほどの実績を残しているという。


(これから僕、クラスに馴染めるかなぁ・・・)


不安に思っていると顔に出ていたらしい、手を握って心配ないよ、とばかりに微笑んでくれた。


「いろいろ不安もあると思うけど大丈夫だよ! 私が守ってあげるしすぐに慣れる!」


「あ、ありがとう! ありさちゃん!」


何だか体の奥底から温かいものが沸いてくるようだった。


「うん、だから・・・」



「よう、ありさじゃねぇか」



何か言おうとしたとき、後ろから男たちが声をかけてきた。茶髪にピアス、ワックスで髪を立てているのか剣山のように空に向かって突き上げている。


「お前何してんの? その冴えないチビは知り合いか?」


「う、うん・・・」


明らかに見下している態度にカチンときたが、それ以上に気になるのが男たちが来た途端にありさが元気をなくしてうつむいた事だった。


「まぁ、いいや。今日の放課後忘れんなよ。来なかったら・・・」


「来る! ・・・・来るよ・・・」


「あっそ、じゃあ行こうぜ」


そう言って男たちは去って行った。

沈黙が訪れる。


「あ、あの・・・」


「次に行こうか! 案内するよ!」


いたたまれない気分になって声をかけようとすると言葉をかぶせるように元気に歩き出す。しかし、どう見ても空元気だった。


(あの男たちは何者なんだろう?)


後ろを歩きながら考える。


相手はどう見ても不良だった。

それにどう見てもあの顔は友達と接するような態度じゃなかった。怯えたような、恐ろしそうな、そんな態度だ。


(あの男たちに脅されている?)


勘違いだろうか?

もしそうなら自分が動いても迷惑になるだけかもしれない。


(ち、違う!)


臆病風に吹かれている場合じゃない。取り返しがつかないことが起こるかもしれない!



「ありさちゃんが困ってる。僕が・・・僕が何とかしなくちゃ・・・!」


四話で一区切りつけるつもりです

続くのかっ!?

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