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- Blue Blue Moon -

作者: 三叉 黄龍

えー何も考えずに読んだほうがいいです。ストーリー性は低いので詩ぽく読んでください♪

蒼く薄暗い中で僕は泳いでいた。

それは濃過ぎて黒青色の絵の具に水を加えたような色だった。

そんな黒に近い青色のセカイで僕は魚のようにゆらゆらと泳いでいる。

見るものすべてが作り物めいていて、薄暗さのために影か物かがわからない。街灯もないので辺りは青色だ。

そんなとき、立ち止まってふと見上げた空。

何気ない動作で視界はガラリと変わる。

だけど、背景色は変わらない。まるでそれだけは確かだというように。そこには月が黒檀の櫛で髪を梳いていた。

丘を、野原を、木々を淡く照らし出していた。

たしか、何処かの国の神話には月は女神として出てくると聞いたことがある。

それはちょうど三日月が髪を梳く女の横顔のように見えたからもしれない。

そして、僕は目線を落とす。

だったら僕たちは月の貴婦人に飼われている魚だ。

暗く閉じ込められたセカイの水槽で飼われている。

そんなことを思って、また僕は泳ぎ始めた。

★★★★★★

まだ僕は泳ぎ続けていた。

月がその顔をあげて、空から僕を覗きこんでいる。

今度は貴婦人というよりも巨大な目だ。

でも、そんな悪い気はしない。

だってその瞳はとても優しい月光で僕を包み込んでくれているから。

そして、辺りはその月光で薄く見えている。

暗い闇は木陰へと身を隠していた。どこかこの夜が温かい。

しばらく僕が泳ぎ続けていると、突然何かが僕の目の前に現れた。

この夜に似合わない色。

まるで黒に対抗するような色。

それでも堂々とこの夜の中にいるそいつは白猫だった。毛並みの良い純白の猫。

『一緒に泳がないか?』と僕は心の中でそう訪ねた。

けどそいつは澄した顔でピョコピョコと横切って行く。

その横顔はまさに自らが王だと語る者のように、自らが英雄だと誇る者のように。

だが、その表情とは裏腹にピョコピョコと跳ねるようにして歩くのが気にかかって、よく見ると、その右後ろ足がない。付け根からなかった。

ああ、そうか。

こいつはこんな状態でも立派に生き、自らを誇っているのか。

人間がかつて持っていたそれは文明の進歩によって忘れ去られていったのだ。

動物は生まれて、死ぬまで自らの死に対する妥協を許さない。

死よりもなお苦しい生を必死に生きる。

だからそれが尊く、そして立派なのだ。

ただ、あの白猫は道をなんの気もなしに歩いただけ。

だが、それを忘れてしまった僕がその姿に憧れと尊敬の念を持つのだ。

ヒトは笑う。

自らより小さく、儚い生命を。

しかし、そんな小さく、儚い生命にもできる一生懸命さをヒトは忘れている。

なら、どちらが上位の生命体なのだろうか。

生きることで自らを誇る動物とそれさえできない人間と。

その答えを僕は知らない。

もしかして、夜の中で必死に生きるあの猫はその答えを知っていて、人間をあざ笑っているのかもしれない。

白と黒。これは相反する二つの色。でも、この夜に出会ったあの白猫は夜に見守られながら闇の奥へと溶けていった。

見上げた空の月も真珠色の雲に溶けていく。

そして、僕はまた泳ぎ始めた。

★★★★★★★★

気がつけば、遠い遠い場所。

膨大な夢のような場所。

僕たちが始まった景色、原始風景のその場所を眺めていた。

そう、僕は漂いながら、海についた―――。

水面は優しい太古からの音を奏で、さらさらと揺れている。

ザザアァン―――ザザアァン

繰り返し、繰り返しながら僕の胸で波音が踊っている。

静かに、まるで僕をそっと包み込むようなやわらかい静謐。それがどこからか滲み出ていた。

ピン、と糸を張って、闇と濃い蒼黒ものを分けた水平線。

その空と海がもっとも近くて、もっとも遠いその場所に僕は吸い寄せられた。

その場所は空と海の交わる境界線。

だったら、空に近いその場所で見る月は格別じゃないか―――。

月は静かに、海と同じような優しさで僕を撫でている。

その淡い光の手は遠い遠い場所から伸びている。

僕の手はその場所まで届かない。

ただ僕は顔を上げ、その優しい愛撫を受け入れることしかできなかった。

けど、一つだけ。たった一つだけ方法がある。

それは海にある月だ。

さわさわ、と揺れる月なら触れることができるかもしれない。そう思って、僕は小船を出した。

広大な水面。それはまるで空のようだった。

遠い昔、海は空のように表現されることもあった。

海という広大で、力強く、神秘的な憧れが空と合ったのだろう。

そして、海がもつ鏡面性。

始まりの海はあまりに純粋で、無垢だったから、与えられた何かをそのままの形で返してしまう。

ほら、この海の中に上がっている月のように。与えられた光を返してしまう―――。

二つの月。

本物と偽物。

本物の月が触れないと分かっているから、せめて偽物、と。

けれど、その美しさは確かに本物だった。

人が作り上げる美の贋物とはまるで違う。人が真似れる美ではない。

まるで違った月なのに、どうしてこんなにも(ひか)れてしまうのだろうか?

さわさわ、と揺れる水面に、

優しい静謐を抱く海の上に、

僕は綺麗なお月様を探しにいく。

遠い遠い始まりの海で

遠い遠い場所にいる月を

僕は探しにいく。

まるで、空を自由に飛べる魔法使いのような気分で、

僕は月のもとへいく

- Blue Blue Moon.end.-


最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪

月夜にフラフラと散歩をするのも良いものですよ?

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