選択授業
選択授業というものがあり、国語や音楽など自分の好きなものを選べるのだった。
「何する?」
俺は彼女に聞きに行くと、彼女は紙を見せてくる。
そこには「国語」とか書かれていた。
「何で国語なんだ?」
「先生が好きだから」
「好きって…おい」
俺は嫉妬したが、国語の先生は50代くらいなので、ライバルにはなりそうもないかと、自分で自分を納得させる。
「あなたも嫌いなタイプじゃないでしょう?」
「まあな。明るい先生だし」
声が拡声器を使ったように大きく、ユニークなことを話す先生だった。
まるで子どもが大人になったような、そんな感じがするのだ。
「じゃあ俺も国語にするかな」
「うん。そうしよう」
俺は紙に国語と書くと、彼女と一緒に担任に提出しに行く。
担任は優しいといえばいいか、気が弱いといえばいいのが、そんなタイプだった。
「2人とも国語ね。分かりました」
「よろしくお願いします」
2人で頭を下げると、教室に戻る前に、国語の先生の部屋へ向かう。
「おう、どうした、お前ら」
部屋には、先生しかいなかった。
放課後なので、部活を見に行ったのかもしれない。
先生が明るく出迎えてくれたので、俺も気楽に話しかける。
「先生、選択授業、国語にしたから」
「私もです」
彼女が小さく手を上げる。
先生は椅子ごとこちらを向くと、おいで、おいでと手招きしてくる。
何だろうと思っていると、1人ずつ飴を渡される。
イチゴ味で有名なものだった。
「内緒な」
「ありがとう、先生」
「先生、サンキュな」
互いに礼を言うと、口の中に飴を入れる。
優しくて甘いイチゴ味。
先生の優しさがつまったような、そんな味だった。
「それで? 2人とも国語にしてくれたのか?」
「おう。先生なら面白いことをやりそうだし。な?」
「うん!! 先生の授業、面白いもの」
「そうか、そうか」
先生はにやりと笑うと、プリントを見せてくる。
「何これ? …平家物語?」
「これがどうかしたんですか?」
「選択授業で絵を描いたり、学園祭で朗読しようと思ってな」
「へえ」
2人で顔を見合わせると、先生がプリントを1枚ずつ手渡してくる。
「どんな絵を描きたいか、悩め。それから、毎日、声に出して読むこと。分かったか?」
「分かりました!!」
彼女は楽しそうにプリントを胸に抱える。
俺はといえば、微妙な表情だった。
「俺、絵は苦手なんだけど」
「いいんだよ、何でも。一生懸命描けば、自分のためになる」
「そうかよ。分かった」
「私は朗読のほうが気になるけど」
彼女が不安そうに言うと、先生は声を立てて笑う。
「大丈夫だ。今から度胸をつけないとな。親御さんにも見に来てもらえ」
「えー」
2人で声を合わせると、先生がくるりと椅子を机に向かわせる。
「じゃあそういうことで。楽しみにしとけ」
「はーい」
「分かりました」
俺と彼女は飴を食べ終えると、部屋を後にする。
不安はあるが、やってみる価値はありそうだと思う。
「頑張ろうか」
「おう。そうだな」
人気のない廊下を歩きながら、教室に向かったのだった。




