トライアングルレッスンD ひろしと初水族館デート
ピロピロ~ン
携帯の目覚ましアラームがなって目覚めた朝。
俺はおもむろに身支度を始めながら空を見上げた。
(今日、ゆいこを水族館に誘ったけど雲行きが怪しい)
(雨、降るかな?)
(そういえば、ゆいこに想いを伝えたあの日も雨だったな…)
6月のある日、学校の帰り道で突然降り出した雨の中、ずぶ濡れになりながら歩いていたゆいこを見つけ傘を片手に駆けよった。
「風邪ひくぞ、入っていけよ」と言うと
「あっ ひろし…」
と少し気恥ずかしそうにうつむきながら
「ありがとう」と一言だけ言い
一つの傘のなか寄りそって歩いた。
その時俺は、以前から抱いていた想いを口にしていた。
「あのさ、ゆいこ…オレ…ずっと言おうと思っていた事があるんだ」
「オレのこと 男としてどう思う?」
「……えっ?」
キョトンとしたゆいこ
その後少し照れながら
「ひろしは…大事な人だよ…」
その日お互いの想いが伝わった。
そして数ヶ月後の今日、初めて二人っきりで出かける。
(幼馴染みで昔から知っているのに、何で緊張しているんだろ? オレ…)
と思いながら玄関を出るとたくみがいた。
「よっ 今から行くのか? ゆいことのデート!」
と笑顔で話しかけてきた。
「ヘマすんなよ~」
「ヘマってなんだよ?」
「お前じゃあるまいし、しないよ」
そこへ
「待たせてごめ~ん」
と言いながらゆいこが駆けよって来た。
「あまり走ると転ぶぞ~」
ふざけたようにたくみが言う。
そんな会話の後、ゆいこと俺は微妙な距離感で歩き始めた。
その姿を見送るたくみの複雑な気持ちを、俺は感じていた。
(ごめんたくみ……こればかりは譲れなかったよ)
と 思いながらゆいこと二人歩いていると、やっぱり雨が降り出した。
「あっ 雨!傘忘れたぁ」
「大丈夫、俺持って来たから」
と あの日と同じように、一つの傘のなか寄りそいながら始まった初デート。
「あの日と同じだね」
「そうだな……」
そう言って俺は 一瞬立ち止まり微笑みかけたあと
肩を寄せ合うように水族館へと向かった。
昨年の巽さんお誕生日企画、トライアングルレッスンDは、【デート】をテーマとした作品を投稿。
小説家になろうラジオ内で読まれた様々なデートの作品に、キュンキュンしました。