第7話
入口から独特の入りづらい雰囲気が漂ってくる。
まるで目の前にそびえ立つ大きな壁があるみたいだ。
だが、このままでは何も変わらない。
自分を変えるほど大袈裟ではないが、今の現状を打破するにはその高き壁を乗り越える他ない。
勇気を出して店内に一歩足を踏み入れる。
自動ドアが開き、店員が元気な声で、いらっしゃいませと迎え入れてくれた。
店員の声に緊張しついつい硬直してしまう。
「ご来店ありがとうございます。本日はどういたしましたか?」
「あっ……えっと、携帯が壊れて……」
店員さんに昨日起きてしまった惨状を事細かに説明した。
「ソファにてお客様情報を記入していただいてもよろしいでしょうか?」
店員さんは情報を調べるためか紙が挟まったボードとボールペンを渡してきた。
ソファに座り必須項目を記入していく。
氏名、住所、不具合内容、家で使用している電気等わかる範囲で記入を終わらせ流れているテレビを見て店員さんが来るのを待った。
5分ほど経っただろうか、店員さんがやってきた。
「お待たせいたしました。本日担当させていただきます、西山と申します。一ノ瀬様の情報調べさせていただきました」
「はい」
「今お使いのスマホは2021年の10月に契約されてますね」
「あと少しで2年ってところですか」
「そうですね。そのタイミングで端末を返却させて貰って新たな端末を購入してもらうこともできましたが今回の場合ですと……」
「やっぱり電源も入らないし無理ですよね? ハハハ」
西山さんが話しづらそうにしているのでつい踏み込んで笑って誤魔化してしまった。
私自身出来ることは全て試したし、このスマートフォンを開発した人でなければ解決は無理だろうと思っていたからだ。
「一応こちらでもお預かりしてみますね」
店員さん側の方でも色々と試行錯誤してみるようだ。
これで直ってくれると嬉しい限りなのだが……期待して直らなかった時のダメージがでかいため期待するのはやめておくとしよう。
アンケートと端末を預け、何もすることがない私は現実逃避をするかのように流れているテレビを見た。
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