第二話 冷凍庫の中身
私が小学五年生になってもお母さんは夜、私を寝かせて彼氏の元へ行きます。でも毎年その彼氏は違う人になります。
小学二年生の時見た、幼児を調理しているお母さんの姿はきっと夢でした。あの夜私は寝ぼけていて、おまけに怖がってトイレに行ったので変なものを見てしまったのです。きっとそうです。だって人肉を食べるなんて恐ろしい事、私のお母さんがするはずありません。
私はもう幼い子供ではありません。小学五年生です。深夜、一人でトイレにだって行けます。ただ目が覚めないだけです。もう私は夢と現実の違いがはっきりとわかります。
料理だってできます。最近はよく、目玉焼きを作ったり、生姜焼きを焼いたりしています。
学校から帰ると、冷凍庫の中からいつも通り生姜焼き用の肉を取り出しました。保存用袋に入ってかっちんこっちんに凍っています。それを電子レンジで三百ワット、一分ほど加熱するのを二回ほどやると焼きやすく解凍されます。もちろんこれは人肉なんかじゃありません。昨日私がおつかいに行って買って来た豚肉です。自分で下味を付け、冷凍しておいたのです。袋をフライパンに開け肉を焼きます。おいしそうに焼ける音が聞こえます。
肉を焼きながら、要領よく次の工程に移ります。トマトスープを作るため、冷凍トマトを冷凍庫から取り出します。確かあれは先週、よく凍らせるために冷凍庫の奥底に入れたはずでした。トマトは凍らせるととても皮が?きやすいのです。
手を突っ込み、冷たい冷凍庫の中を探ります。確か保存容器にまとめて入れたので、それなりに大きいはずです。
これだ! と思った物があったので、ぐっと引っ張りました。
それは誰がどう見ても人の手でした。赤ん坊の手です。小さな手のひらが開かれ、カチコチに固まっています。誰がどう言い訳しても動物の物では無いのです。私はぎょっとして冷凍庫の上で手を放しました。
心拍数が早くなって、それを落ち着かせる為にとりあえず冷凍庫を閉めます。これで冷凍庫の中に手は消えました。でも、開けたら丸見えです。私はぎょっとしながらもその手を冷凍庫の奥深くに隠し、上にアイスクリームの箱を載せ、冷凍庫を閉めました。
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