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平野の家

***

 

 基本的に誘うのは平野からのことが多い。



 というか、俺の方からというのは多分これまで二、三回しかないと思う。



 だから今日もいつも通り――だといいのだけど、少しだけ俺の中で不安が拭えないことがあった。



 それは、さっきのメッセージがあまりにも短すぎたことだ。



 まだ出会って一年ほどしか経っていないけど、大体平野の性格やら普段仲良くしている友達などはある程度把握している。



 明るくて社交的で、言うなれば誰にでも笑顔で接することのできる女の子だ。



本人の気にしているマスコットのような可愛さも相まって、去年はクラス内でもカースト上位の存在だった。



 普段のメッセージも絵文字やら顔文字やら、流行りのアニメのスタンプを使ったりといかにも女子高生らしさ全開の平野が、たったあれだけの短文しか送ってこない。



 実はこれは今日が初めてというわけではなく、何度か経験している。



 それら全てに共通しているのは、短文メッセージの時は平野の機嫌がすこぶる悪いということである。



 




 念のために周りに人がいないことを確認して玄関のチャイムを鳴らす。



 昭和の名残と空気感が漂うおばあちゃんの家とは違い、平野の家とその周辺は西欧風の一戸建てである。ここら一帯は小学生の時に開発された土地らしい。



「早く入って」



 ドアが開き、制服姿の平野は顔だけを外に出して俺を玄関へ招き入れた。



 顔が全く笑っていない。いつもより声のトーンが低い。やはり短文の法則は間違っていなかったと立証された。



玄関で靴を脱ぎ、真正面にある階段を上がって一番最初の部屋が平野の自室だ。



 鍵だけを開けてくれた平野はそそくさと奥に消えてしまったため、 一人寂しく階段を上っていく。



 これ自体はあまり珍しくもない。運動後のエネルギー補給として、いつも飲み物やお菓子を準備してくれるのだ。



 部屋の扉は三分の一ほど開いていた。平野はまだ一階にいるのだろうか。部屋の前で突っ立っているのもあれなので、先に中に入らせてもらおう。



 そう思い扉を押して一歩踏み入れた途端、右腕の手首を思いっきり引っ張られた。



「平野? いるならいるって――」



「んっ」



 俺が言い終える前に、唇を塞がれる。



 小柄で細い腕のどこからそんな力が湧いてくるのか、両手で俺の肩をがっしりと掴んで必死に背伸びをする平野。



 いつもは俺が少し膝を曲げたり顔を下に向けたりするのだが、いきなりのことでしばらくそのまま硬直していたのだ。



 たっぷり一分ほど、平野は俺の口の中に舌を入れたまま離そうとしなかった。



「どうしたんだ、そんないきなり」



「……別に、今日はそういう気分なの。もう一週間以上してないんだよ」



 俺は背負っていたカバンを部屋の端に置かせてもらい、その間に平野はブレザーとその下に来ていたセーターを脱いでいく。



「ほら、滝沢も早く」



 こういう時は大人しく従っていた方がいい――と過去の経験で学んでいる。春休みの間はほとんど互いの予定がつかず会えなかったため、発散できる機会がなかった。



 ご機嫌斜めなのは、それが原因なのだろうか。



けど今までにもそれぐらい間の空いたことはあったはずだけど……。



 話をするのは終わった後の方がいいと判断した俺は、平野と同じように制服を脱いでいく。



 互いに下着姿になったところで平野の方から、俺を押し倒す形で一緒にベッドの上になだれ込んだ。



「滝沢……今日は夜まで帰さないからね」



「いや、おばあちゃんに夕方に帰るって――」

 


 俺の顔全体を貪るかのごとく、さっきよりも激しいキスを求められる。



 平野が上に乗り、空いた手は俺の胸板を優しくなぞっていく。



そして俺の下腹部あたりの突起した部分に同じ箇所をあてがい、円を描くように腰を動かし始めた。



まだ始まったばかりだというのに、少しでも油断したらものの数分で終わってしまいそうだ。



 すっかり平野に支配された俺は、本能の赴くままに純白の下着に包まれた二つの大きな膨らみに手を伸ばす。

 


 片手では収まりきらない。乱暴に動かすと今にもはみ出てきそうだ。



 前からちょくちょく思っていたけど、初めての時よりも成長している気がした。



「……ねえ、苦しくなってきた」



「俺も……」



 俺の手は平野に誘導されて、ホックを外すように促される。



 同時に、平野も俺の下着に手をかけた。




 ――もう我慢できない



 ――今日は前戯なくても大丈夫。




 そう言ってゴムの袋を破った平野と俺は少しして、同時に果てた。



 


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