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愚者の屍

作者: 愚者

虐待なんてなかった。健全で安全で、私にとってはありえないほどの素晴らしい家庭で育った。


僕にとってそこは素の自分を出せる唯一の居場所であった。4つ下の弟がおり、僕は長男で在った。



まあそんなことはどうでもいい。



私はかつて横暴な少年であった。傲岸不遜であり、私こそが一番であった。


目立つのは好きだった。だが悪目立ちが過ぎた。


常識はあったと思うが感情がわかってしまう。そして、私自身、感情を抑えるのが非常に苦手であった。


ある時、自らの嫉妬により友に怪我を負わせたことがあった。大人の人たちにひどく咎められたような気がした。もちろん大人の言ってることは非常に正しく、私がしたことは悪いことであった。


私は孤立した。最初は少し反発もしたが、ボクはひどいやつであると自分を知った日からなるべく自分を殺して生きてきた。


これは最も正しい決断であったと思う。話せる人も増え、僕もうれしかった。しかし、それと同時にドロドロとした感情が本来の僕なのかみんなの前で笑う仮面こそが本当の僕かわからなくなっていた。


気づけば時がたっていて、ぼくは中学生になっていた。その直前に私は転校していた。基本的に小学校から中学校へとそのまま上がってくる。僕には誰一人友達がいなかった。


前の時と同じように話しても馴染めなかった。


変な奴。


よく言われたのを覚えている。1年のころ、おそらくあまり人間を信じていなかったと思う。その時クラスでいじめられてるやつがいた。かんしゃくを起こす人ではあったものの、内心はいい人であると知っていた。私は周りに合わせて無視をしていた時もあった。しかし、私も同じような扱いを受けていたことを知った日、僕はそいつを癇癪でいじめた。あいつらのように陰湿ではなく堂々と。



私もくずである。



その時の担任にそれがバレた。親は怒っていたし担任も怒っていた。


私だけ?


あいつらもしていたのに。私は十分に糞であり、愚かであり、どうしようもないやつなのは知っている。


そのことについては無性に腹が立って仕方なかった。クラスのみんなの前でそいつに謝った。しかし、陰湿な奴らは知らないふり。



私は大人を信じなくなった。



それ以降僕は仮面をさらに強くした。



おかげさまで2年3年と友達ができ、悪くない学生生活が出来た。その時には本心?を抑え込むことにも慣れてしまっていた。


時代の流れというのは早いもの、私は高校生になった。その時もボクは変人扱いであった…もはやうれしいとまで思えてしまっていた。


ぼくは気になっている人がいた、まあ叶うことは無いと知っていたけど。気持ちだけは大きくて夜も眠れぬほどだった。その子が学校に来なくなった、連絡も次第に無くなった。ぼくは悲しかったし、思いは伝えたものの結局振られた。


知っていてもつらいものだ。


仮面はより一層強度を増した。私自身惚れ症なのもあってすぐに次へと行った。


思いを伝えられない夜の苦しさを存分に味わった日から、ぼくは好きになったらすぐに告白するようになってしまった。



これは今でも治らない、呪いのようなものに仕上がっていった。


すぐ好きになって振られてを繰り返すうちに、僕は好きになってもらえないことを知った。


知ったときにはもう大学生になっていた。


また好きになった、でも告白なんてできなかった。その人は私が見た中で誰よりも先を見据える人だった。すごいと感じたと同時に僕ではありえないと知った。


好かれるために努力をしたこともあったが、すべて無意味だと心の底で思い、何もかもを悟った。



知っていた。


私は変人ではなかった。見てほしかった、愛してほしかったただのくだらない化け物であった。そして、みんなは本当の俺ではなく仮面を見ている。


仮面で隠した素顔は遠く昔に消えた。私には何もない。何をしても認められない。


できることなら消えたいがそうどうにかできるほど私の心は強くない。


今までを振り返ってみてどうにかなる起点はあったはずだった。しかし、すべてから逃げた。それをするのに値しないほどの化け物であったため。


私には死ぬ資格も生きる価値も、何もない。





そして、私は屍のような人間?となって今をしぶとく生きている。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次々と変わっていき統一感のない一人称が、仮面をかぶったが故にどれが本心かわからなくなってしまった主人公の状況を的確に表していると感じました。 いじめのシーンで、静かにいじめた方は裁かれず、明…
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