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白骨遺体の承認欲求  作者: 紙屋束実
1/48

【1】

では、次のニュースです。

本日、午前11時頃、国道横の雑木林で白骨化した遺体が発見されました。

警察によりますと、草刈り作業中の男性から


「麻袋の中に人骨のようなものがある」


と110番通報があったということです。

遺体の年齢、性別などはわかっておらず、着衣もなかったということで、警察では身元の確認を急ぐとともに死体遺棄事件とみて捜査を進めています。


~2年前~

「おはよう。今日は出かけるの?」

「うん。絵が仕上がったから」


私が朝からちゃんと起きて顔を洗っている日は、圭太が悟って聞いてくる。

それだけ珍しいということだ。

結婚して8年も経つと、お互いの行動の先が読めてくる。

夫はとくにそれが顕著だと思う。

男のくせに、なんて言うと今時の風潮に会わないかもしれないが、彼の方が私よりもずいぶんと気が利くのは確か。


圭太は企業勤めの会社員。

私はフリーのイラストレーター。

フリーという言葉は私のためにある、そう言っても過言ではないくらい、私は自由気ままに生きている。

そんな私を軌道修正してくれるのが圭太。

私は彼と結婚したおかげで、人間として生きていられると思っている。


「昨日遅くまで起きてたでしょ?大丈夫?」

「うん。届けたら爆睡するわ」

「無理するなよ」


圭太は必ず私にそう声をかける。

が、私が聞く耳持たないことは百も承知での声かけなのだ。

フリーの看板を掲げているのだから、自分からどんどん動いて仕事をもらわないとなかなか稼ぐことはできない。

基本、来るもの拒まず。

だから私は無茶をする。

でも、無理難題を言われれば言われるほど私は燃える。

それを圭太は知っていた。

「無理するなよ」は「無理してもいいよ、俺がついてる」が裏に隠れているのである。


「じゃ、俺先に出るから。家のカギ、持ってくの忘れるなよ」

「子供か!」

「似たようなもんだ」


圭太は笑い、そして私の唇をはむっとして出勤していった。

彼はいつも私の唇を軽く食べるキスをする。


「色気がないよね」


荷物を抱え、時間通りに家を出た。

鍵をかけるのも忘れずに。

電車に乗り、人の多い場所まで移動する。

男も女も子供も大人も学生も社会人も誰がどんな目的でここにいるのかなんて気にも留めない場所へ。

ガードレールにもたれて待っていると、目の前に真っ白な高級車が滑り込んできた。

荷物が大きいため、私は後部座席に入る。

すると、運転席に座る口髭を蓄えた男性がこちらを振り返った。


「隣に座ってくれないんだ」


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