第8話 ワンダラーについて聞いてみた
今回はワンダラーに関する質問である。
「守護神様。ワンダラーは地球人口の三分の二を占めてますけど、これを十把一絡げで語っても良いんでしょうかね?」
『う〜ん。こいつらの魂を細かく仕分けしようにも、分類のしようがないんだよなあ』
「ワンダラーって、いったい何なんでしょうね」
『俺に言わせれば、イナゴみたいに迷惑な連中だ。しかも半分が霊格値四〇〇未満だからな。頭は良くても身勝手だからシャレにならん』
守護神様、早くも不機嫌モードである。
『まずワンダラーの語源だが、これは英語の「うろつく」「さまよう」という意味のwanderから来てる。文字通りそれぞれの惑星にいる神々を無視して、好き勝手に移民してまわってる連中なんだよ。前にも語ったが、今の地球は生まれると魂に多くの経験値が入るボーナス期間だ。それを狙って多くのワンダラーが集まってきて、今では人口の七割に届きそうな数まで増えてるんだよ』
「地球の人口が増えたのは、文明が豊かになったからではないんですか?」
『その疑問は歴史を知ればすぐに間違いだと気づくぞ。きみは気象に興味があるから、中世温暖期というものを知ってるだろ。今よりも地球が二度以上暖かくて、しかも砂漠にも雨が降って農地も多く作られた時代だ。おかげでこの期間は三〇〇年以上にわたって、世界的に飢饉が起きてない非常に豊かな時代だった。それなのに、この期間に地球の人口はほとんど増えてなかっただろ?』
「たしかに、そうですね」
『地球の人口が増え始めたのは、中世温暖期が終わって小氷期が始まり、しかも大陸で黒死病の流行が始まってからだ。しかもユダヤ商人が死の商人システムを完成させて戦争が増え、またそれまで禁じられていた金利経済が始められて世界に貧困が発明された時代だ。世の中が豊かになったからではなく、むしろ「貧乏人の子だくさん」で人口が増え始めた感じだな』
「そう言われると、これまで聞かされてきた常識が壊れてきました」
学校で学んできたことって、あとから振り返るとけっこう間違ってたものが多いんだよね。「当時はそれが学説だった」というものは仕方ないけど、教科書独自の勝手解釈もけっこう多かったのだから問題だ。
『ワンダラーには他にウォークインという呼び方がある。これも英語のwalk inから来てて、元の意味は「ホテルに予約無しでふらっとやってくる客」だ。もう一つ、ライトワーカーという呼び方があるが、この本来の意味は英語の|light workerから「運命や人生の課題が与えられてない者」だ。だけど最近は「光の活動家」だ、「光の伝道者」だと別の意味で使ってる連中が多いがな』
「ワンダラーも英つづりのAをOに替えて、『wondererは素晴らしい人の意味』と吹聴してる人がいますね」
『一九九〇年代前半に出てきた、金星人を名乗る怪しいスピリチュアリストが言い出したことだな。こういう厚かましいワンダラーは不愉快で堪らん』
振り子の動きがやたらと乱れている。さて、今回の質問は最後までお付き合いいただけるかどうか……。
「ワンダラーは宇宙を放浪する魂で、見つけた惑星に勝手に住み着く不法移民みたいなものと考えれば良いんでしょうかね?」
『その理解で間違いはない』
ホント、つかみどころのない相手である。
『とはいえ一言でもその惑星の神に挨拶があれば、ワンダラーでも「神の器」として扱われることもあるんだ。歴史上の有名人だと平清盛がいるぞ。当時の平安貴族には勉強嫌いな愚か者が多くて、日本文明を衰退させていた。平安時代の前半こそ、それなりに新しい日本文化を育てていたのに、平安時代の後半になると貴族でも平均寿命が三〇歳に落ち、当時は四〇歳で長寿が祝われていたほどだ』
調べると本当に男三三歳、女二七歳が当時の平均寿命。とんでもない短さだ。昔話に出てくる主人公を育てる系のお爺さんお婆さんも、実は三〇代半ばだったから桃太郎などの子育てができたなんて言われてるし……。
『そこに彼の登場で世の中が一転、日本を経済力のある文明国へ作り変えたわけだから、彼は古き佳き時代の良心的なワンダラーだ。それで天界の神も途中で彼に専属の守護神を付けて、「神の器」として扱うようになったんだ』
「興味深い話ですね。ワンダラーを良心的かそうでないかで分けられませんかね?」
『それは主観的すぎる。せいぜい「目的もなくふらっと地球へやってきただけの従来型のワンダラー」と「今の地球が経験値のボーナス期間だからその旨みに与ろうとやってきた私利私欲のワンダラー」、それと「地球が前いた惑星より文明が劣ってるから、ここで人生の覇者みたいな成功を求めてやってきた強欲ワンダラー」に分けられないでもないが……。これ、「経済難民」か「政治難民」か「宗教難民」かを見分けるぐらい難しいぞ』
「ハッキリ分けられる基準があるなら、最初から分けてますもんね」
『あ、いくつかハッキリ分けられるものがあった』
「あるんですか?」
『まずは地球土着のワンダラーだ。プレアデス人系の神々が来る前から地球にいて、プレアデス人系のやり方での神になる修業には参加しないグループだ』
「自分たちには自分たちのやり方があるって感じですかね?」
『それと神になる修業がつらくてやめたり休みにする魂もいる。こういう魂も今は守護神不足からワンダラーの扱いになるが、その中にはまた「神の器」に戻って修業を再開する連中もいるぞ』
「そういう魂もいるんですね」
『まあ、魂磨きは苦労がつきものだからな。途中で心が折れるのも仕方ないよ』
「私の過去生でも、そうなった時期はありますかね?」
『きみは一度もやってないな。まあ、「神の器」の多くは、ずっと「神の器」だよ』
魂の世界も人生いろいろである。
『とはいえ今の時代、地球人口の六割以上は、「今の地球が経験値のボーナス期間」だからやって来た身勝手なワンダラーたちだ。しかも霊格値が四〇〇未満の現代人は人口の三分の一いるが、そのほとんどはこの連中が占めてる。霊格値四〇〇未満の例外は一〇万人もいないと見積もられてる』
「うわ、ほとんどじゃないですか。霊格が低いってことは、まだ若くて地頭が低いんですかね?」
『そうじゃないから厄介なんだ。考えてもみろ、「今、地球はボーナス期間だ」なんて情報を知った上で、広い宇宙の中から地球を目指してやってきた連中だぞ。地頭が悪いわけないだろ』
「言われてみれば……。地球でも戦争や飢饉の難民を除くと、ほとんどの移民は高学歴ですもんね」
『それで問題になるのが、低霊格のワンダラーが社会的に上の地位を占める現象だ。霊格は低くても地頭の良い──いわゆる悪賢い連中が多いからな。学歴社会ほど出世しやすいんだ。しかも身勝手な連中だから、出世競争の中での権謀術数は当たり前。自分さえ良ければ平気で他人を蹴落としてる』
「心当たりが在りすぎて、イヤな話ですね」
著者自身も課長昇進が決まっていた一か月前に、いきなりリストラを喰らった経験者だ。三か月遅れで昇進予定だった同期も、おそらくリストラを喰らったのか著者のリストラから三か月後に自殺している。それをやってくれた部長と課長は残った社員たちに「作家デビューして急に売れたから勝手に辞めた」とウソを教えていた。それに加えて著者が開発担当した製品で仕様変更が必要になった時に「開発者の責任で直しに来い」と代わる代わる四回も電話してきた大バカ者たちだった。もちろんリストラした相手に向かって……。
そんな人格破綻上司が、平成時代には大勢いたんだろうねぇ。
『それだけじゃない。上司がそういう低霊格だったらどうなると思う? その下で働かせられると、仕事に苦労した上に霊格まで落とされる最悪の状態に置かれるんだ。今の先進国は、そんな職場が多いんだぞ』
「仕事をすると霊格が落ちるんですか?」
『そうだ。日月神示にもあっただろ。霊格が上がるのは、自分よりも上の存在に身を捧げた時。その逆の状態に置かれたら、落ちて当然じゃないか』
「でも、世の中のためと思って働いたら……」
『そう考えられれば、上司の霊格が低くても問題はないが。はたして理想通りにできると思うか?』
「無理でしょうね」
『そこで平成時代の守護神の多くは、究極の選択に立たされたわけだ。このまま受け持った魂の霊格が落ちるのを甘んじて受け入れるか、その前に会社を辞めさせるか。辞めさせようとしても辞めないので、病気にしたり、事故に遭わせたりして、強制的に職場から引き離した守護神もいた。中高年の引きこもりが増えたのも、これが理由だ。それでも働こうとするから、霊格が落ちる前に労災や過労死、過労自殺させるなんて最終手段に出た守護神もいる。ここまでさせるのは異常だよな』
「……ですね」
日本では転職が難しいから、守護神様が辞めさせようとしても辞めない人は多かっただろうね。その結果が、自殺や過労死の増加だったんだ。
ちなみに霊格が六〇〇未満の人は犯罪的な仕事でない限り霊格が落ちる心配はないため、過労死や自殺につながる事態にはならないそうだ。また霊格値が六五〇以上の人になると、出世レースに負けてリストラを食らうと、再就職をあきらめて引きこもるケースが増えるという。
「今の時代、『働いたら負け』ですか……」
『それは言うな!』
『低霊格上司の他にも、問題のあるワンダラーには肉体を略奪する連中がいるんだ』
「略奪? また物騒な言葉が出てきましたね」
『まあ、ワンダラーだって、多少は良識的な者はいる。多くのワンダラーはまだ誰も宿る予定のない肉体──要するにまだお腹の中にいる赤ちゃんを見つけて、そこに入り込むんだ。もしも予定があるのを知らずに入ったとしても、管轄する高位の神から注意されれば黙って出ていってくれる。そういうワンダラーだったら、まず問題にはならないだろう。それに「神の器」の方も他に選べる肉体の候補がないような、どうしてもという事情がなければ追い出さないんだけどな』
「地球の神様や『神の器』も、可能なら面倒事は避けたいってことでしょうかね?」
そこは杓子定規にならず。寛大に大人の対応って感じなのかな。
『ところが中には肉体に居座って、神々から注意されても出ようとしないワンダラーがいる。これこそが略奪型と名づけることになったタイプだ』
「ふてぶてしいですね」
『略奪型のワンダラーには特徴がある。当たり前だが、ほとんどは親の資産目当てで肉体を手に入れてるだけだから、親との折り合いが悪い場合が多い。そこで地頭の低いワンダラーは中高生ぐらいになるとグレてバイクや車で暴走したり、仲間とつるんで暴力事件を起こしたりと不良化する。一方で地頭が高いのは親との距離をうまく取るからグレたりはしないが、アーティストやクリエーターなどを目指すワナビになる。今なら軽音楽を始めたり、マンガや小説を書いたり……』
「じゃあ、私の周りにも……」
『安心しろ。そういう連中は現実逃避から適当にやってるだけだから、まずその道では成功しない。一瞬でも成功する魂なら、そもそも神様がワンダラーになんかしておかねえよ』
辛辣な正論が炸裂した。平清盛って前例があるものね。
『で、横取りされた肉体の中には、天界の神から重要な運命や使命を託された「因縁ミタマ」が宿る予定だったものもあるんだ。それが奪われた場合の悪影響が、とにかくヤバイぐらいにシャレにならん』
因縁ミタマ。救世主や預言者という存在もあるが、その時代を象徴する重要な政治家や実業家も多い。
『これから語る実例を聞けば、どのくらいヤバイか腑に落ちるはずだ。今の日本にとってシャレにならない肉体の乗っ取りが、T中H蔵だ』
まったくイニシャルトークになってない伏せ字である。
『まず因縁ミタマが、予定通りに肉体に入った場合の運命を言うぞ。バブル経済崩壊後の日本経済を立て直したいという使命感から一九九〇年代半ばに国政へ打って出て、国務大臣となって間違った経済対策をどんどん立て直していくんだ。第二次安倍政権では財務大臣としてアベノミクスを引っ張り、安倍首相が病に倒れたあと、つまり今は後継首相としての指導力を発揮して、多くの国難を乗り越えていくはずだった』
「想像できませんね」
『ホント、今のT中H蔵は霊格も地頭も高くなく、前々世からひたすらカネに意地汚いだけの魂だからなあ。世の中のためなんて気概はなく、頭の中はひたすら「金、金、金」だ』
「ボロカスに言いますね」
『それでも因縁ミタマの肉体じゃなかったら問題にならなかったのに、よりによって重要な肉体を横取りしたんだ。本人は努力しなくても「運命の揺り戻し」で棚ボタな話が舞い込んでくるから、今の人生は楽しいだろうな。そうなることがわかってるから、偉い神がやってきて「出て行け」と言われても居座るワンダラーが後を絶たないんだが……』
運命の揺り戻し。占いの話題の時に出てきた現象だ。事情が変わっても運命の方は予定通りに働くから、肉体を横取りしたワンダラーにとっては運命の遡及現象は棚ボタとして働く。それを知ってたら、肉体に居座って籠城戦に持ち込む輩が出てくるのもわかる。
『おかげで運命通りなら平成時代の日本はデフレと霊格の低い上司に苦しむだけで済んだのに、このバカヤローのおかげで他の労働環境まで無茶苦茶にされてしまった』
「ひどい話ですね。でも、彼の無能ぶりは周知の事実になりましたよ? 先日もコロナ菌なんて言って、多くの人たちを呆れさせてましたし……」
『それでも運命の揺り戻しが起こるから、シャレにならないんだ。菅政権が何度彼を経済戦略会議やら何やらのメンバーに祭り上げようとしてると思う? 今は本来の運命では首相だった時代だ。政権の中心に近い場所へ戻そうという力が働いてるんだ。運命に関わる大勢の神々がこの歪みを直そうとしてるが、影響が大きすぎて直すに直せないみたいだぞ』
「巨大コンピューターシステムのバグみたいなもの……ですかねぇ。原因だと思ったソースコードを直したら、また別のバグが発生していつまで経っても直らないと……」
『そこまで略奪型のワンダラーは厄介だってことだ』
「それは、イヤというほど納得させられました」
たしかに、これはシャレにならない。
「でも、そこまでやらかしたってことは、あとで神様に捕まって裁判にかけられるんですよね?」
『そうだな。逃げ切る三分の一でなければ……だが……』
「ああ、そんな話もありました……」
身勝手なワンダラー。全員とは言わないまでも、つくづく迷惑な魂が多いようだ。