第76話 異世界転生について聞いてみた
今回は完全に著者の興味に走った、ちょっとSFっぽい話題である。
タイトル通り、近年のなろうアニメに多い異世界転生について聞いてみた。
「前にいた世界よりも、文明の遅れた異世界への転生みたいなことは実際に起きてますかね?」
『レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロの例があるじゃないか』
「…………ありましたね……」
疑問解決。お話終了……。
ちなみに2人ともレプティリアンに捕囚されて、15世紀のヨーロッパに送り込まれた魂である。共に前世の、地球よりも進んだ文明の記憶を持ち込んで活躍している。
とはいえレオナルド・ダ・ヴィンチは、いかにも科学を知らないなろう系文系作者のやりがちな怪しい発明が多い。空を飛ぶ機械として有名な螺旋翼のヘリコプターを発明しているが、当時の技術でも簡単に実現可能なはずの熱気球を作ることはなかった。
同じ時代のミケランジェロも、若い頃は土木技術の高い知識を活かして道路や公衆衛生などのインフラ整備の重要性を訴えていた。だが、当時の為政者たちには、まったく意図が伝わらなかった。そのため土木関係を諦めてしまい、後年は唯一周りが評価してくれる芸術だけになってしまった。
「こういうことは、最近でもありますかね?」
『いくらでもあるぞ。きみの考える異世界転生としては、勝手に地球に生まれてくるワンダラーは論外だろう。だが、当人の希望とは関係なく、地球の神が連れてくるスターピープルや、もっと上の神が送り込んでくるスターシードはいくらでもいる。今の地球は変化の激しい時代の中にあるから、人口の2〜3%はいると思っていい』
「そんなにいるのですか? でも、そんなにいるようには思えないのですが……」
『そこは重要な使命を与えた因縁ミタマと同じだ。1つの使命に対して、何十人という因縁ミタマが地上に降ろされている。そのうちの1人が成功すればいいんだ。キリストは救世主だから因縁ミタマではなく神の魂が降ろされているが、それでも何人も降ろされて、最後の1人が教祖となっているだろう?』
「キリストの50年ぐらい前には途中までは預言通りに活動してたのに、最期が石打ちの刑で殺されたために、信徒が預言にあった救世主ではなかったと離れられてしまった人もいますもんね」
ちなみに歴史の文章記録として、イエスとして活動した人物は4人確認できるそうだ。だが、記録に残ってない分を含めると、成功するまで何人が降ろされたのだろうか。
「でも、中世ならばともかく、かなり科学技術の進んだ現代では、前の世界の知識で無双するなんてこと、できませんよね?」
『そうでもないぞ。どんなに世の中が便利になっても、意外と見落とされてる発明品やサービス、使い方はあるものだ。それに今の地球は変化の激しい時代だ。次々に新しい技術が生まれてくるから、そこに前の世界の知識を持ち込めば、いくらでも無双できるじゃないか』
「そういうもの……ですかね?」
『それに世の中には時代を先取りしすぎたというものが多いだろ。まだコンピューターが8bitや16bitで動いてた時代に、もう今のようなCG動画を作ろうとしてた人もいたじゃないか』
「あれには狂気を感じましたね」
1980年代のPCのパワーでは、簡単な320×240ドットの小さな3DCGでも1枚を描画するのに何時間もかかった。中には何日もかかったものもある。しかも当時はまだ画像圧縮技術がなかったため、フロッピーディスク1枚に画像を1枚しか入れられず、動画にするためにはデータ量も洒落にならなかったはずだ。それを1枚ずつフィルムに焼いて数秒間の動画を動かすだけでも、莫大な時間と費用がかかったはずである。それだけに作った人には狂気を感じたものだった。
ちなみに音声のデジタル化は1970年代の頭には始まってるが、画像のデジタル化はデータ量が洒落にならないほど大きいために普及が遅れた。1980年代には画像の差分を取って動画を小さくする技術が出てきたことで、ようやくデジタル化が始まった。だが、デジタル技術の本格的な普及が始まるのは、データ圧縮技術が出てきた1990年代に入ってからだ。むしろデータ圧縮技術が出てくると、一転して音声よりも動画のデータ量の方が小さくて済むケースが出てきている。
「ところで異世界転生って、パラレルワールでしょうかね?」
『同じ人生を途中からやり直すケースや、何十年、何百年も過去へ生まれ変わる例を除くと、あまりパラレルワールドへの転生は行われてないと思うぞ』
「パラレルワールは……あまり? じゃあ、ほとんどのケースは?」
『惑星の間に決まってるだろ。最初にスターピープルやスターシードと言ったじゃないか』
「近くにある恒星系との間ですか?」
『違う。多くは太陽の兄弟星にある惑星だ』
「兄弟星?」
『元は太陽と同じ星雲から生まれた恒星系だ。同じ成分で作られてるというのもあるが、同じ銀河系の神が担当するために、兄弟星の周りにある惑星の成長もかなり似通ってるんだ』
「銀河系の神様?」
『地球や太陽の神よりもずっと上、9次元以上の存在だ』
「その神様が管理する惑星の成長というのは、生物の進化ですか?」
『その通りだ。その神がそれぞれの恒星系が遠く離れたあとも定期的に相互の生き物を入れ替えて、できるだけ似たような成長を続けるように管理し続けてるんだぞ』
著者もゲームではついやってしまう。グループ扱いしてるキャラは、できるだけ近いレベルになるように成長を合わせようと……。
それと同じだろうか?
「生物の進化って、合わせられるものなんですか?」
『まったく同じにするのは無理だ。大量絶滅のタイミングを合わせることはできるが、その時に滅びる生物種まではコントロールできないからな。それに放っておくと惑星による生物相の違いが大きくなるから、様子を見ながら一部の魂や生物を動かしてるようだ』
「魂はわかりますけど、生物を動かせるのですか?」
『動かしてるぞ。地質学史や進化論では大量絶滅で生物相が変わるという単純な見方をしてるが、実際には大量絶滅とは関係なく生物相の変化は起きているだろ?』
「花を咲かせる顕花植物とハチの同時発生みたいなものですかね?」
花を咲かせる最初の植物は、約1億3千万年前の水草だったという説もあるが……。
約1億年前に突然、陸上に花を咲かせる植物が現れて、同時に発生したハチに花粉を運んでもらって爆発的に広がっていったという歴史がある。インテリジェント・デザイン──ID創造論者たちが、こういう共生関係を持った生物同士が同時に発生する謎は進化論では説明できないと息を巻く事例である。
『生物の進化だけでなく、文明の発展も人の移動で調整してるぞ。スターピープルやスターシードもその一つだ』
「それが私のイメージする異世界転生ですか?」
『それに近いだろう。文明の進んだ惑星から、遅れた惑星の方へ魂を移動させて発展を促すんだ』
「文明の進んだ方から低い方への一方通行ですか?」
『当然だ。低い方から高い方へ行ったら、ただの惑星移民じゃないか。それはスターピープルやスターシードじゃない』
「そういう解釈になりますか。そういう惑星が太陽系の近くにあるわけですね」
『何を言ってる。ほぼ銀河系全体に散らばってるぞ』
「え? 太陽の兄弟星ですよね? 元は同じ星団にいたわけですから……」
『それは46億年も昔の話だ。46億年の間に星団はバラけて銀河系を回りながら細長く伸びている。さすがに周回遅れは発生してないが、太陽の兄弟星は銀河系を半周以上離れるほど長く広がってるぞ』
「ちなみに太陽系の位置は?」
『集団の中ほど。やや前よりのグループにいるから、意外と近くに兄弟星があったりするぞ。といっても、100光年以内にある2つには文明は生まれてないから、文明があるのはもっと遠いところだ。それでも兄弟星は1400個以上あるから、その中には地球に近い文化や言葉、文字を持つ惑星もあるぞ』
「そんなに似てる星があるんですか? ちなみにどの文化ですか?」
『古代ギリシャ、マヤ、そして一の御用が失敗に終わる前までの日本などだ』
「日本? 銀河系のどこかには、江戸っぽい文明や大正ロマンっぽい文明があるんですか?」
『そのイメージなら、ちょんまげのない江戸文化と、まさに大正ロマンの文明はあるな』
「2つともあるんですか?」
『もちろんあるぞ。大正ロマンの方は自動車は普及してないし電子レンジもないが、家にはテレビや冷蔵庫があって、街には鉄道が走ってる。都市部は火災対策で燃えにくい素材で建物が作られてるから、街並みはまさに大正ロマンだぞ』
「時代としては内燃機関のない昭和初期という感じでしょうかね?」
『昭和初期じゃない。テレビや冷蔵庫があると言っただろ。それに内燃機関もあるし自動車もある。普及してないのは、こちらとは物の考え方が違うためだ。鉄道なら敷地内に人が入らないように柵を作ったり、踏切を作ったりできる。それに鉄道車両は線路の上しか走れないから、事故は線路を横切ったり、勝手に敷地内に入った人のせいだと言い張れる。だが、どこでも走れる自動車となると話は別だ。街中を走ることが許されてるのは公共バスと、パトカー、消防車、救急車などの緊急車両だけだ。それ以外は港や鉄道の貨物ヤード、それから広い農場や山林、工場の中などの決められた敷地の中での荷物運びや移動のためだけなら許されている。だが、敷地から出て交通事故を起こした場合の罰則が大きいんだ。外を走る時の自動車は凶器だ。だから事故の責任は運転手だけでなく、場合によっては売った者や作った自動車会社にまで及ぶことがある。それにこちらとは違って金の力で解決できないから、危ない橋を渡ってまで個人用の自動車を作ろうとする会社が出てこないんだ』
「文化そのものが違うんですね。じゃあ、鉄道以外の移動は徒歩ですか?」
『いや、自転車がある。荷物は後ろにリヤカーを付けて引っ張るスタイルだ。それにこちらの世界と違って、あちこちにロープウェーが張り巡らされてて、坂の上り下りだけでなく、川を渡るのも鉄道が通ってなくて利用者が少ないのなら橋を架けるよりもロープウェーって感じだ』
「それはそれで昭和っぽいような……」
『それでいて半導体技術やインターネットはこっちよりも進んでるぞ。街の灯りは蛍光灯やLED照明ではなく、もっと省エネな半導体レーザーだ。それをガスや薬品に当てて求める色合いの光を作り出している。それに小型のノートパソコンを1人1台は持ってるぞ。キーボードやマウスはこちらとは形は違うが、どっちが良いかは慣れの問題だろう。液タブのようなものもあるが、意外とスマホやタブレットのようなものがないのは、まだ誰も思いついてないだけかもしれん。通信速度や通信容量となると、こちらより十数年は先を行ってる』
「言葉は通じますか?」
『相互に人を入れ替えていた場所だ。それに太平洋戦争で亡くなった人の中には、もう地獄を体験するのは十分であると転生させられた者もいるし、死ぬ前に神に拾い上げられて移された者──いわゆるアブダクションされた者もいる。大きな人の移動があったのはこの頃が最後だから80年の間に多少の違いは出てきてるが、気になるほど大きな違いはないと思うぞ』
「そんなに似てるんですか?」
『そうだ。それに文字に関してだが、これもすぐには気づかないと思う。一部のひらがなは異体字の方を採用してるが、見慣れない漢字だと思って流してしまうかもしれん。それに漢字はこちらの世界では明治時代に活字が使われるようになった時に「画数の多い方がカッコイイ」などと複雑な正字体を使ったり、むりやり画数の多い旧字体を作ったりしたところがあるが、あちらの世界では江戸時代の書き文字がそのまま続いてるようなものだと思っていい。だから新字体になると、ほとんどこちらと同じだ。それにあちらの方が早く文語表現や歴史的仮名遣いをやめてるぞ。だから今から迷い込んでも、意外とすぐには気がつかないかもしれん』
「それは興味深いですね。でも、服装の違いで異世界に迷い込んだと気づくんじゃ……」
『服装はこちらより和服っぽさは残ってるが、むしろ数年前に和風ファッションが流行っただろ。あれでこちらの世界の方が、あちらに寄せたような感じがする。だから余計に大正ロマン風だな。人によっては違和感程度にしか違いに気づかない可能性がある』
「もしかしたら、あちらからの転生者でもいたんでしょうかね?」
『俺にはわからんが、その可能性はある。とはいえ戦後の日本はどんどん地獄化していくからな。あちらへ地獄の波動が感染しないように、こちらからの移動は神々によって制限されている』
「……ところで日本に似た惑星の話が出たところで気になるのですが、今の欧米や中東みたいな文化や言語の惑星はないんですかね?」
『ない。そこは、さっきもちらっと触れたぞ。地獄になった文明を他の惑星に広げるわけにはいかないからな』
「そういう事情ですか」
つまり宇宙には転生モノに多いナーロッパみたいな異世界の惑星は存在しないと……。あ、ギリシャ風ならあるのかも……。
「ところでスピリチュアル情報に出てくるオフィル星も、その1つですか?」
『太陽から銀河系を4分の1周ほど遅れて周回してる恒星系にある惑星だな。あちらには最終氷河期が終わる頃に沈んだレムリア大陸から、救い出された人たちが大勢移されてる。あの時は霊格値708以上の魂を持った人たち限定だがな』
話によって霊格値700以上とか、霊格値714以上と言われているが、改めてダウジングしたら708が基準だったらしい。
「転生ですか?」
『違う。レムリア文明を残すために、選ばれた人たちごと送られたんだ。だからオフィル星に関しては、今回の異世界転生とはちょっと話が変わってくる』
「文明ごと異世界に召喚した感じですかね?」
『これに関しては、そのイメージが近いと思うぞ』
「召喚といえば、異世界から人を召喚する魔法みたいなものはありますか?」
『魔法とはざっくりした聞き方だな。少なくとも銀河系の神が使ってるんだ。9次元以上の科学が使えるなら、できないことはないと思うが……』
「審神者のような儀式をして、神様が手伝ってくださるようなことは……」
『そこは、その惑星の神次第のところがあるから、俺からは何とも答えようがないぞ』
「つまり可能性はあるんですね?」
『おまえ、小説のネタとして考えてるだろ……』
「もちろん。今回は趣味の質問ですから」
『そういえば、そう……だったな……』
あ、振り子の動きが乱れてきた。
「そろそろ、終わりにしましょうか?」
『うん。そうしてくれ』
ということで、今回はこれで終わりである。




