第71話 赤ちゃんの予言について聞いてみた
「守護神様。予言する赤ちゃんがいるって、本当ですか?」
守護神様がそろそろ教えた方が良いと思ったのだろう。二〇二四年九月の中盤を過ぎた頃から、そういう情報が畳み掛けるようにレコメンドに出てきた。守護神様が触れるように仕向けたのだろう。
こういう話を知ってる人の中には、一九九〇年代のスピリチュアルブームの時には聞いていた人もいると思う。それから三〇年以上経っているので、そういう人たちには今回は「何を今さら」な話だろう。
『いるも何も、指導神から運命を与えられた子供は、言葉を覚えた頃に一度は自分の親に前世に何があったのかを話し、今回の人生ではどうなるのかを語ってるはずだぞ』
「え? そうなんですか?」
『前世の話はともかく、これからの自分の運命を細かく覚えてる人は少ないだろう。だが、生まれる前に指導神から見せられた予定の映像を覚えていて、それを親に話すんだ。……っていうか、このあたりのことは、きみも昔から知ってはいたはずだぞ』
「初耳だと思いますよ?」
『初耳なんかじゃねーよ。断片情報は与えてあった、ただ、それに気づいてなかっただけだ』
「……そう、なんですか?」
『しゃべるようになったばかりの子供が、親に前世の話をする事例は知ってたよな?』
「それはもちろん」
『雲の上で指導神からどんな運命を与えられたとか、何をするために生まれてきたとか、そういう話をしてたのも知ってたよな?』
「そうですね」
『そうであれば、親に語る運命が未来の予言になってるとは気づかなかったのか?』
「その未来は自分の運命でしかありませんよね?」
『それが個人ではなく、地域や日本、もしかしたら世界の未来になってる可能性は考えなかったのか?』
「…………ん?」
『地震や津波で死ぬ運命とか、火山で逃げ惑う運命とか、戦争で命を落とす運命とかを語ってる子がいただろう?』
「いましたっけ?」
『いたんだよ。しかし、きみはそれを中間世で得た予言の記憶ではなく、子供の見た夢の話として聞いていた』
「どういうことですか?」
『子供は自分が体験する運命として語ったのに、それを聞いた大人が夢の話として記録しちまったんだ。きみはそれに数多く触れてきた。それが収録ミスとも気づかずに……』
「夢の例として……ですか」
意外なところで夢の話とスピリチュアルな話がつながった。
「でも、言われてみると運命を語ってる子がいるってことは、それが未来の予言になってますね」
とんだ盲点だった。
『それが戦争や災害だったら』
「周りにも被災者が出てくるはずですね。何でそこまで考えなかったんだろう?」
まあ、夢の話だと思ってたせいもあるけど……。
『それで、今回見せた話はどうだった?』
「最初のものは南海トラフ地震と、その前震かもしれないという話ですね。子供が言うには『来年のお盆は、みんなが集まらない』『その前に、自分の誕生日を迎えられないかもしれない』って……。その子の誕生日は一〇月でしょ?」
『正直、話の真偽はわからん。南海トラフと言ってるのは、あくまで話を伝えた大人の推測だ。俺には確認できない』
「守護神様が南海トラフ地震が起こる可能性が高いとされるのは、二〇四七年の九〜一〇月でしたよね?」
『それに関しては、今も俺が得られる情報としては変わらん。それよりも、すごく気になる話もあるよな』
「これからの日本の政局と、政治が乱れた時に起こる天変地異のジンクスですね。まず政局では『今の自民党総裁選で、とんでもない狂人が首相になる』というものがあります。『新首相は有り得ない法律を次々と作って日本社会を壊すために、二〇二五年はもっとも自殺者の多い年になる。混乱は二〇二六年まで続く』とありますが……。これ、本当に四歳以下の子供たちが話したんでしょうかね?」
『子供の話を聞いて、親がそのように受け取ったということだろ』
「そうなると、次に来るのは天変地異のジンクスですね。今年の年末以降から来年にかけて、『首都圏直下地震が起きて、千葉県の向きが変わって島になる』ですか。房総半島を乗せたプレートというと、神奈川県側の三浦半島も乗ってますね。それが回転しながらズレ動いて、本州から離れて島になるんでしょうか?」
『たぶん、それを語った子は、生まれてくる前にそうなる映像か地図を見せられたのだろう』
「他にも首都圏直下地震には『東京タワーが倒れる。でも、スカイツリーは無事』というのがありますね」
『東京タワーが倒れる予言の発災時機に関しては、二〇二四年末から二〇二八年まで幅がある。これは世界線が違うのかもしれんし、単に子供の記憶してた時機が曖昧なだけかもしれん』
「そのあとで南海トラフ地震ですか?」
『そういう順番になってるな。予言で言われてるのは二〇二五年のお盆よりも前。奇しくも、日本で大きな災害が起こるという二〇二五年の七月に近いぞ』
「でも、守護神様が調べた範囲では、そういう話も計画もないんですよね?」
『ないぞ。だから、この予言に関する見方に悩んでる』
「起こるとしたら、守護神様がわかるのは二か月前……でしたっけ?」
『それは、ここが被災地になるというか、俺が担当してるきみが被災者になる場合だ』
これは第六六話で触れた予知の話である。
『きみが被災者にならない土地で起こる災厄だと、情報にアンテナを張ってるつもりでも数週間前まで何も情報が入ってこないことも多い。確実に情報が入ってくるのは数日前、下手すりゃ前日だ』
「虫の知らせが、そのあたりですね。それに気づいてても、災害が起こったあとで『そういえば』がほとんどかと……」
『今の地球は、まだそういう次元だからな。仕方ないさ』
「今回、守護神様が見せてきた予言の数々ですけど、早いものだと彼岸の明けた(九月)二六日にも何かが起こる可能性があるんですよね?」
『まあ、そこは心配するな。子供たちが話してるのは、単純な予言とは違う。誰かに悪い未来を話すことで、言霊として予言が成就されないことを期待したものだと思うぞ』
「悪い夢を見た時によく見られる行動ですね。それが良くない結果を招く、悪い引き寄せにはならないんですか?」
『それは強い不安から来るネガティブな波動や、注目を集めたいための悪い波動が引き寄せるものだ。そうではなく、ただその時のために、前もって報せておきたいという心からの気持ちだ』
「それだと引き寄せは発動しないのですか?」
『そこは、どう説明すればいいのかな? 引き寄せではない場合、人は聞いた予言をはずす行動を取るものだ。たとえば事故に遭うと予言されたら、予定や行動を変えて事故に備えるだろ。試験に合格するとか、無事に採用されるとかいう予言だったら、慢心してダメにしてしまう。いわば逆の引き寄せだ』
「だから『予言が成就されないことを期待して』ですか。自然災害でも、そうなりますか?」
『なるよ。というか自然災害は、基本的には大地の神や荒れの神などが、必要最低限以上には起こさないように管理してる』
「しっかり管理されてるんですか?」
『してなかったら、日本はとんでもない数の地震に襲われてるぞ。考えてもみろ。日本では四つのプレートがぶつかってる。もしも地震の神たちが揺れるに任せてたら、東日本大震災並みの地震が毎月二回も三回もどこかで起きてることになる。断層をゆっくりと滑らせて、揺れを何千分の一にも小さくしてるから無事に暮らせてるんだ』
「毎年のように、どこかで土石流災害が起きてますが……」
『それはむしろ山を小刻み削って、一度に起こる被害を小さくしてると思え。もしも山が一度も崩れてなかったら中央構造線に沿って、紀伊山地や四国山地には一万mを超える急峻な山が、いくつも並ぶことになる。山が崩れる時、流れ落ちた土砂は高さの六倍から一〇倍離れたところまで届くだろ。大地が崩れずに安定するには、高さの二〇倍の裾野は欲しい』
「紀伊山地、中国山地と言ったら頻繁に土砂崩れが起きてるところですよね。どちらも山崩れが多いのは海まで二〇kmぐらいしか離れてないのに、標高千数百m〜二千m近い山が並んでるからで……。今ですら土砂が海岸まで届く高さに近いのに、それが一万mもあったら……」
言われてみると、とんでもない話だ。
「でも、これまでに一度も山崩れが起きてなかったら、造山運動でそんなに高い山ができるものですか?」
『中央構造線とは違うが、フォッサマグナにある北アルプス、中央アルプス、南アルプスの山々を考えてみろ。あそこはもともと海面下六千mもある深海だったんだ。それが二つのプレートの衝突で、今は三千m級の山々になってるだろ。だけど、もしも山が崩れなかったら、もう二〜三千m高かったんだ。そこが一万m以上盛り上がったんだから、もともと陸地だった中央構造線沿いにある山は……』
「今も崩れずにいたら、一万mを超える山になってたわけですか」
『そういうことだ。だが、土石流は悪いことではないぞ。山から常に新しいミネラル成分が水に溶け出して、麓に棲む生き物たちを豊かにしている。地震そのものは生き物にとっては益のない災害だが、それによって成長した山が崩される土石流は、ミネラルの他に現代文明にとっても豊かな鉱物資源を供給してくれる大地の恵みでもあるんだ。世界の中でも日本と、かつてエデンの園があったチグリス・ユーフラテス川の上流域の二か所は、ほぼすべての鉱物資源が産出される珍しい神の土地だぞ』
「おっしゃる通り日本の大地や周りの海底には、ほぼすべての鉱物資源が眠ってますけど……。現実問題としては採算が取れないから、日本は資源のない国なんですよねぇ」
『それは今の科学技術力の問題だ。江戸時代までは当時としては高い採掘力があったから、日本はアジアの資源輸出大国だった。黄金の国ジパングと呼ばれて、大航海時代の西洋人が目指したぐらいだからな。ところが文明開化のあとは一転して海外から安い鉱物資源が入ってきた。そのせいで国内で掘るのは採算が取れなくなって、日本は「資源のない国」となった』
「無慈悲な栄枯盛衰ですねぇ」
『しかしだ。海外の安く採掘できる鉱山では枯渇が始まってる。それに対して日本では採掘技術が高まってる。その結果、日本は再び資源大国になろうとしてるんだ』
「大地の恵みの量だけなら、日本は食べ物も鉱物資源も恵まれてますよね。採算さえ取れるなら、埋蔵量六〇〇年分とか三千年分とかいうレベルの地下資源が、ゴロゴロ眠ってますから……」
あくまで採算を度外視した埋蔵量だ。黄金だって、日本の土地ならばどこを掘っても一トンあたり一グラム以上の金含有量がある。ただ採算を考えると、今の金価格では一トンあたり五グラムは欲しいというだけだ。
それに農作物の方も技術的には『垂直農場』と呼ばれる高層ビル化した野菜工場での生産を増やすことで、日本は食料輸出国になる可能性を秘めている。あとはそれを邪魔する法律や規制、既得権者たちの抵抗を何とかするだけだ。
『話ついでだ。大地の神は富士山もしっかり管理してるぞ。富士山ではもう三〇〇年以上、御嶽山のような水蒸気爆発すら起こしてない。爆発する前に噴火エネルギーを抜いて、そこら中にある洞穴に分散させてるんだ。いわゆる噴火ではなく噴気活動レベルまで落としてるんだ』
「噴気どころか、もやっとした湯気にまで弱まってますけどね……」
火山エネルギーといえば、日本にとってはそこからもたらされる地熱エネルギーも強力な資源だ。一九八〇年代におかしな難癖が付けられて開発が止まってしまったが、地熱発電をすれば日本の電力需要は三〇〇%賄えると言われている。地熱発電所が山の景観を損なうという愚かな意見も流れてるが、原子力発電所と同じ電力を生み出す施設の大きさは、大きめの山小屋程度のサイズだそうだ。これも正しい知識が広まって有効利用されるようになれば、日本は無限に生み出される安い電力にも恵まれることになる。
「今回の話題は緊急で書き始めましたけど、語っておくのは、このぐらいですかね?」
『そうだな。できれば二三日には出して欲しかったな』
「いやいやいや。前日の二二日に書くように促されて翌日には出せって、そんな無茶ぶりはやめてください。二〇代や三〇代の頃の執筆速度なんて出せませんって……。しかも今はイップスっぽいのもあって、四〜五倍はかかると思ってくださいよ」
『せめて年相応の速さに戻せ』
「うわぁ〜。ヤブを突っついたつもりもないのに、ツッコミ上手なヘビが出てきた気分ですよ」
『それはともかく、赤ちゃんの語った予言が目の前に迫ってるので、急いで書いてもらった』
まとめとして、赤ちゃん予言を並べておく。
・二〇二四年九月二六日以降〜一〇月
南海トラフ地震の前震、豊橋付近で大きな被害が出る?
・二〇二四年九月二八日
狂人が日本の首相になる
二〇二五年の日本は過去最高の自殺者が出る
・二〇二四年末〜二〇二八年
首都圏直下地震、房総半島が島になる
・二〇二五年のお盆より前
南海トラフ地震
首都圏直下地震が起きたあと
「守護神様。起こりますかね?」
『言霊で起こらないことを期待しての予言だ。知る人が増えれば、実現せずに済むんじゃないか?』
「あくまで引き寄せとは逆になるんですよね?」
『起こらないで欲しいな』
「ですね」
ということで、今回の話は以上である。




