第63話 オールドソウルと促成栽培について聞いてみた
生まれ変わりや輪廻転生については、様々な説が流れている。
著者が生まれ変わりを調べ始めた頃から、スピリチュアル界隈では、
・輪廻転生は六〜八回(または一〇回)で終わる
・魂は数万年から数十万年かけて神様へと育っていく
という、相反する二つの説が流れていた。著者としては直感的に前者の六〜八回や一〇回は短すぎると思い、自然と後者の説を前提で考えるようになっていた。
だが、触れる情報が増えてくると、前者の多くは一部の地球の神様が語っているという事実がわかってきた。
「守護神様。生まれ変わりの回数って、決まりがあるんですかね?」
『そんなものはないぞ。そもそも身魂の成長には大きな個人差があるし、一生涯ごとの長さだってバラバラだ。だいたいの共通性はあっても、統計や一般論でしか語りようがない』
「じゃあ、魂は神様になるまでに、一〇〇回は生まれ変わるものですかね?」
『その一〇〇回というのは、いつを起点にした回数だ? そのあたりからハッキリさせろ』
「起点……ですか? 言われてみると、人の生まれ変わりだけで考えてますね。最初の草木からの生まれ変わりで考えると……」
『人に生まれてくる前だけでも、数十回から三〇〇回ぐらいの違いが出てくる』
「そこで十倍近い差が出るんですか?」
『まず生き物によって寿命が違う。選択した生き物のルートによっても違いが出る。それに魂が生き物に宿る期間が、寿命と同じとは限らない。昔の日本には「七つまでは神の子」という言葉があっただろう。乳幼児死亡率の高い時代は、魂が宿ってもすぐに死んでしまうと学びにならないので、幼い頃の肉体はNPCで動いてることが多かったんだ』
「生まれる八時間前にお腹に入るという話がありますが……」
『それは多くの霊能者が目撃してる話ではあるが、乳幼児死亡率の低くなった最近の日本での話にすぎん。きみだって三歳をすぎるまで肉体には宿らずに、外で待機してたんだぞ』
「そうなのですか? 私の持つもっとも古い記憶というと、二歳の頃の記憶ですよ。乗ってる車が長いつづら折りの坂道を、ずっと下り続けている記憶で……」
『その記憶を親に話した時、すごい違和感があったと言われてただろ』
「言われましたね。『そういう道を通ったのは、引っ越しの時の一回きり。その時のおまえは、車の中ですやすやと寝てなかったか?』と……」
ちなみに『つづら折り』といっても、日光のいろは坂のような斜面に作られたジグザグした道ではない。昔の林鉄──森林鉄道の跡地に作られた長い山道だ。そのためカーブも勾配も緩やかで、ほぼ等高線に沿うように、いくつもの山の尾根や谷をグニャグニャと曲がりながら通されている。
引っ越しというのは、営林署内の転勤のことだ。営林署は現在では森林管理署と名前を変えている。著者の父は当時、その営林署が国有林の中に建てた官舎──担当区事務所に住み込みで働く担当区主任だった。警察が都市部から離れた集落に置く駐在さんの、営林署版みたいなものだ。
営林署内の転勤であるから、引っ越しは職員が総出でお手伝いする。まずは転勤先の営林署から迎えのトラックが来て、引っ越しの荷物を載せて運んでもらうのだ。普段は木材や作業用の機材を載せて運ぶ事業用のトラックだ。クレーンが付いてる場合もある。そのトラックに案内されるように家族の乗った車が尾いていくのが、引っ越しのたびに繰り返される光景だ。だからその時も、同じようにトラックのあとに尾いて走っていたのだろう。当然、ゆっくりと走るのであるから車が揺れることは少なく、しかも道の両側を高い木立ちが囲んでいるために、遠くの景色も見えない。それだけに二歳になったばかりの子が、長いジグザグした山道を強く記憶しているとは思えなかったのだろう。そうでなければ地図を見て知ってたか、かなりの空間認識能力があったことになる。
余談であるがその道は現在ではトンネルや橋などが整備されて、ほとんどまっすぐに走っている。尾根に沿ってジグザグしたところは見た感じだと一つも残ってない。むしろ現在の馬力のある車が走るのだ。本当のつづら折りの坂道が数か所、旧道とは別に作られている。直線距離でわずか十数キロの道のりだが、昔はそこを何時間もかけて走っていたのだ。
「その日はよそ行きの服を着させられて……あれ?」
『自分の記憶がオカシイことに気づいたか?』
「そうですね。首から上は記憶にありませんが、車の後部シートに座ってる自分を前の席から見てるような映像が……。ルームミラーに映った姿にしては、ハッキリしすぎてるような……」
『そりゃあ、そうだ。きみのその記憶は肉体が見たものじゃない。肉体の外にいる魂が見たものだ。だから自分の姿を真正面から見ている記憶があるし、車を空から見て何時間もジグザグと走り続けてる様子を眺めていたのだからな』
「つまり、その時の私は、まだ魂が肉体に宿ってない?」
『その通り。きみの記憶がはっきりしてくるのは、三歳を少し過ぎたあたりからのはずだ。きみはその頃に肉体に宿った。あの頃の都市部に生まれた日本人と比べたら遅いかもしれなが、都市部から離れた集落で暮らす人たちにとっては、まだそれが普通だったんだ』
「つまりそれまでの私の肉体は、NPCでしかなかったと……」
『正確には肉体の周りでうろうろしてたり、俺に肉体を横取りされないように見張りを任せて天界へ戻って時間を潰してたりしてた』
「え? そんなことを? それはお手数をおかけしました」
『それも守護神の役目の一つだ。で、話を戻すが、そんな感じで死亡率の高い時期や、自由意思で動きづらい時期を飛ばして、ある程度成長してから肉体に宿る魂は多い。昆虫ならば卵から孵る時ではなく、羽化する時に宿るようなものだ』
「それだと虫の魂が地上にいる時間は、数日から一か月ですか?」
『虫の時代は、だいたいそんなものだ。人に宿る時とは違って、成虫まで育ったどれか一つに宿ればいいのだからな』
「個体ごとにある運命の違いは、影響しないのですか?」
『おいおい、虫には運命なんかないぞ。たとえあったとしても、同じ日、同じ時間にいっせいに孵化してるだろ?』
「あ、言われてみれば生まれた日時も場所も同じだから、どの個体を選んでも運命は同じですね」
『その通りだ。あとは魂ごとの考え方に従って、天寿をまっとうして経験値を積むか、捕食者に美味しく食べられて早く霊格値を上げるか。そのあたりは自由だ』
「日月神示にも食べられると魂は出世すると書かれてますもんね」
『さて、魂の育ち方の話に戻るが、人間に育つまでのやり方でも、大きく二つのグループに分かれるんだ。時間をかけて地道に多くの課題を消化しながら育つグループと、とにかく霊格値だけを早く育てることだけを考えるグループだ』
「私はどちらですかね?」
『きみの魂は地球時間で二万二千歳。人間──リラ人になるまで千四百年かけてじっくりと育ってきた、典型的なオールドソウルだ』
「千四百年? 人間になるまで多い人で三〇〇回とか言われてましたけど、私の場合は……?」
『すまん。多い上に細かすぎて数えたくない。それに前世までずっと地球外の惑星にいたから、小動物でも地球の四〜五倍の寿命があると思ってくれ。とにかく時間をかけて、ゆっくりと育ってきた一人だ』
「地球人の魂としては、長い方ですかね?」
『地球では生まれて二千〜三千年で神になる魂が多いが、それと比較したら長いな。だが、地球外から来てる魂の中では、まだまだ若い方だ。ワンダラーの中には何十万歳、何百万歳の魂がゴロゴロいるからな。どこと比較するかだ』
「地球は今、魂の成長にとってのボーナス期間だから、他の惑星よりも成長が速いんでしたよね?」
『それは一五〜六世紀頃からの話だ。地球ではそれよりも前の第二の岩戸が閉められた頃から、神々の堕落が始まっていた。そこで堕ちた神の分を穴埋めするために、魂を英才教育するようになったんだ。まあ、地球以外の神々からは、「魂の促成栽培」と言って評判は悪いようだがな』
「評判が悪いということは、当然、問題視されるだけの欠点があるってことですよね?」
『当たり前だ。本来なら解脱するまでに経験しておくべき課題をいくつも端折って、霊格値上げの効率だけを優先してるんだ。それで人としての生まれ変わりを一〇回そこそこで切り上げてたら、小さい上に中味がスカスカの魂ばかりになるじゃないか』
「それは最低二〜五年間の実務経験が必要な免状を、二か月間から半年間専門学校に通うだけで与えるようなものですかね? 実際、いくつもの業界がそれをやってて、賛否両論を巻き起こしてますけど……」
これはホント、議論が湧き上がってるよね。
昨今多い、コスパ・タイパでモノを考える人からしたら、専門学校で数か月で学べるものを、何年も修行して体に覚え込ませるのは、お金と時間と人生の無駄でしかないそうだ。通訳や翻訳家ですら今の時代は自動翻訳があるのだからと、ネイティブのように流暢に読み書きできる必要はないということらしい。
だけど何事であっても最低限の技能は必要だ。専門知識を何も持たないのに、担当というだけで記事を作ってる新聞記者や編集者の問題はよく言われる。ほとんどが法学部出身でマクロ経済をまったく理解してない財務官僚が多いのも、今の日本における社会問題だ。
平成時代の中頃には法律を知らない経営コンサルタントが、違法なマルチ商法とは知らずに指南して起こした消費者被害が頻発した。
また著者はとある商社が、英語で書かれた全十数冊、セットで二万円ほどのマニュアルを、自動翻訳しただけの日本語版を一冊あたり一万数千円で売りつけていた事件に遭遇したことがある。そのマニュアルは自動翻訳で専門用語が意味不明な日本語にされているどころか、プログラムのコードまで変な日本語に翻訳されていた。さすがにそれを個人で買った迂闊者はいないと思うが、会社や図書館によっては騙されて買ってしまったところがあるだろう。実際に勤めていた会社が買ってしまったから、著者は目にする機会を得たわけだ。
『残念だが、その通りだ。職人不足に陥った業界では背に腹は代えられないと、国に法律を変えてもらったり、特例を作ってもらったりでやってる。それと同じで、今の地球でも神々の数が足りないから、問題があるとわかりつつも促成栽培で神を増やしてるわけだ』
「それで神になった魂は、そこから先のステージへ進めるんでしょうかね?」
『それは難しいだろうな。促成栽培された魂は、とにかく積み上げてきた経験がなさすぎる。人に生まれる前は野菜や家畜になって、食べられることで早く出世してきてる。そのため農家や畜産家に世話をかけて育ててもらってきたせいで、自然の中で生きるために知恵や本能を使ってきた経験が魂レベルでない人が多いんだ。人になってからも同じだ。成長に必要な経験以外での苦労はしないよう、人生イージーモードの都会暮らしになりやすい。自然を舐める都会人は、都会暮らしで自然を知らないからじゃない。前世からの問題だ。遭難しても魂にしっかりと刻まれるまでは、何度も似たような間違いを繰り返すことになる』
「じゃあ、そういう魂の人が自然の豊かな土地に生まれることはあるんですかね?」
『それが日本人だ。日本は自然災害の多い国だろ。そこで神になる前に一度ぐらいは自然の厳しさを知ってもらおうと、雪の多い地方とか、火山の近くとかに生まれさせるんだ。台風や大雨、大地震の被害を経験してもらう人もいる』
「日本人が神に選ばれた民って、そういう意味かぁ〜〜〜〜〜……」
『まだ人生イージーモードでいる都会暮らしには、自然の厳しさ云々という話は対象外だ。だが、日本に生まれる「神の器」に限れば、過去生の性格を見て事件や災害が起きた時に、自分だけが助かろうとする魂は選ばれてない』
「日本人の民度の高さとか言われてる部分ですね」
『促成栽培の問題は、経験不足だけじゃない。思考力不足──これが一番厄介だ』
「思考力? 考える力がないんですか?」
『野菜の時代から育てられてきたせいで、自分の頭で考える習慣がついてないんだ。しかも考える力が弱い分だけ、丸暗記する力が強い。ゆっくりと育ってきた魂でも、人間になってから最初の二〜三回は丸暗記だけで人生を渡りきってしまう人が多いのだが、早く霊格値を上げようとしてきたグループの中には、頭で考えるようになるまで一〇回から二〇回は人生を繰り返さないとダメな人がいる。それなのに促成栽培されてる魂は一〇回で人間の時代を切り上げて神になるんだ。そのせいで考えるという感覚が育たないまま、神になっても「考えてるつもり」が続いてる魂が多いんだ』
「それは……問題が大きい……ですよね?」
『そうなんだよ。だが、そういう考える感覚は神同士どころか、自分でもわからん時があると思わないか? 自分ではちゃんと考えてるつもりでも、実は記憶を手繰ってるだけで、答えが出ないままループしてるだけとか……』
「ちょっとした発想や着想で思考のループから抜け出せるのに、それが降りてこない時がもどかしいんですよね」
俗にいうアハ体験で、答えが見つからない時の感覚だ。答えが出なくてあきらめてしまったものの中に、そういう思考の罠にハマっただけのものが、どれだけあるか……。
「でも、後知恵や結果論、決めつけでしか語らない人は、間違いなく『考えられない人』だと思います」
ちゃんと考える人なら、物事の前後関係にまで思考を巡らせることができる。だけど、それができない人は多い。西洋にはそういう人を皮肉った、「ミネルヴァのフクロウは夜に飛ぶ」という諺がある。
ミネルヴァはローマ神話に出てくる知恵と芸術の女神だ。フクロウはその女神に従う知恵の象徴で、夜な夜な世界を飛びまわって、世の中で起きていることをミネルヴァに伝えるのだという。ところが物事を見てまわってるのが『夜』という部分が問題。物事が起きている昼間はまったく動かず、夜になってから集めた情報は結果だけだ。そこから生まれた『ミネルヴァのフクロウ』は、「学者たちは知恵を働かせるべき時には何もしないのに、事が終わってからやっと研究を始める役立たずだ」という皮肉である。
相手に対して上から目線で語るけど、それが事実関係を無視したトンチンカンなことを語ってると感じたら、その人は間違いなく「考えてるつもり」の側だろう。誰もが子供の頃に一度はそういう感じで理不尽なことを言う大人──特に教師に遭遇して、「あんな大人になっちゃダメだ」と心に刻むとは思うのだが……。ただのブーメランになってしまう人が多いのは悲しい現実だ。
『まあ、それでも今の地球は神々の堕落に加えて、大量の魂が不法移民してきてるせいで絶望的なまでの神不足だ。とにかく今は数をそろえるのが最優先であって、質を求める余裕がない。地球の外から見てる神々の目には、やってることが地球を支配しようとしてる金バカの邪鬼──レプティリアンと同じ、効率重視の促成栽培だからな。そのために育てやすい優秀な魂ほど経験不足なまま神になる問題も起こしてる。長い目で見たら若い芽を使い潰してるのかもしれん』
「弊害が大きいんですか?」
『そこは未来の話なので、俺には何とも言えん。とはいえ促成栽培された魂は、神の目からは違いが一目瞭然だ。どれも魂本体の姿──身魂が小さい。身魂をよく宝石で喩えているが、それで言うと硬い宝石やガラス玉ではなく、そこらに落ちている石や泥ダンゴを、表面だけキレイに磨いただけのようにしか見えん。それで一時的には神の霊格まで仕上がったとしても、すぐ欠けたり、風化して表面がザラザラになったりして、神としての霊格を保てそうもない。そのように感じる身魂が多すぎるんだ』
「拾ってきた石を丸く磨くイメージですか。そんな動画、どこかで見ましたねぇ。まだ石が脆いため、磨いてる最中に欠けてたりしてましたけど……」
『当然、霊格が落ちてしまえば、その霊格に相当するステージからやり直しだ。より上の存在を目指す以前に、どこかでまたこの世に戻って、足りない分の再教育が必要になるだろう』
「それを嫌う神様は多いでしょうね」
『当たり前だ。そこで成長の壁にぶつかて、消えていく魂が増えるかもしれん。そのあたりは前例があるかわからないだけに、ハッキリと語ることができん』
「ところで魂が消えていくって、死ぬんですか?」
『そうだ。魂に寿命はないが、存在が消えていくことはある。それが魂にとっての死だ』
「日月神示には生き通しとありますけど……」
『そりゃあ長く生きる魂は、人間から見たら永遠の命を持ってるようなものだからな。だが、終わりはある。でなかったら、宇宙は魂で満たされてしまうだろ?』
「そうですね。毎年地球だけで何千万もの魂が生まれてるのに、そのすべてが消えることなく神様へと成長してたら、そもそも神様不足なんて起きてませんものね」
それ以前に魂については第九話の話題の中で、オリオン人が宇宙へ進出し始めたのは八〇兆年前だが、最長老は六〇兆歳という話が出ていた。
そこまで昔の話ではなくとも、カンブリア爆発以降の地球に生まれた魂たちが残ってるとしたら、今、どこで何をしてるのだろうか。
「それはともかく、魂はどんな時に消えるんですか? 事故とか、病気とか……」
『魂には存在が消えるような事故や病気はない。しかし魂が死ぬ……というか、数が減っていく原因は三つある。活動を停止するか。上の神に灰にされるか。それと魂同士がくっついて融合するかだ』
「融合? 吸収されるんですか?」
『そこはいろいろだ。会社の合併を考えてみろ。吸収されるものもあれば、対等なものもあるだろ。それと似たようなものだ。どちらにしろ複数が混じり合って、やがて一つになっていくんだ』
「食べられるようなことはありますか?」
『それはない。食べるのはあくまで肉体を持った生き物に限った話だ』
「魂が灰にされる話は、前にもあったのでいいのですが……」
そのあたりの話は第四一話あたりを参照してもらいたい。
「活動停止って、どういうものですか? 輝いていた宝石が光を失って、石になって動かなくなるイメージですかね?」
『違う。蒸発して消えていくんだ』
「蒸発? それは怖いですね。何か心残りを持ったまま消えていくなんて考えると……」
『そこは安心しろ。わずかでも何かをしようという意思や希望を持ってるうちは蒸発しない。完全にやる気を失って心が死んだ魂が、活動を止めて蒸発していくんだ』
「心が死ぬんですか?」
『成長の壁に突き当たって乗り越えられず、やがてやる気を失って引きこもる感じだな。それも一日中ゴロゴロしてる引きこもりじゃない、食事も寝返りもしなくなり、すでに死んだようになってる状態だ。実は魂は生まれてから人間になるまでに七割以上が蒸発している』
「七割も? そんなに減ってるんですか?」
『そうだ。ただし七割は魂全体の話で、今の地球では地道に育つ魂の九割は消えてると思っていい』
「どうして地球では消える魂が多いんですか?」
『有望そうな魂を草のうちに選んで、促成栽培してるからだ』
「デキの悪いのが選ばれなかったから……ですか?」
『デキというより成長の遅い魂だな。その中には想像できないかもしれんが、草や虫のレベルでもつまずいて、先へ進めない魂はいる。そこで成長をあきらめてしまうと、心が死んで蒸発してしまうんだ』
「その蒸発というのが想像すると怖いですね。ジュワッと消える感じですか?」
『そこまで早くない。虫クラスの小さな身魂でも、蒸発するのに一〜二か月かかる。その間に立ち直れないと、本当に消えてしまうんだ』
「一〜二か月ですか。これは長いのか短いのか……」
『これが人間になるクラスの魂だったら、小さな身魂でも数年の猶予はある』
「わたしの魂だったら?」
『きみの身魂の大きさだと、蒸発して消えるまで七〇年は掛かるんじゃないか? まあ、時間がかかるとはいえ、俺もきみも、どこかで成長をあきらめてしまったら、そこで消える日が来る可能性はあるわけだ』
「そういう最期は考えたくありませんね」
『魂の心が死ぬ前に、誰かにあとを託して融合してもらう方法もある。相手が受け入れれば身魂に吸収されて個人の意識はなくなるが、更に先のステージへと進んでいける』
「蒸発して消えるわけではなくても、意識がなくなるという部分も考えようによっては怖いですよねぇ」
とにかく「消える」という言葉は本能的に、イヤな感覚を掻き立ててくれる。
「ところで促成栽培された魂の方は、人間になるまでに、どのくらい蒸発してるんでしょうかね?」
『そっちは、ほぼゼロだ』
「え? 何でです?」
『成長の壁に当たらないように、手厚く育ててるからだ。だから育てられてる魂は、成長をあきらめるなんて考えることもないだろう』
「人間社会で揉まれませんか?」
『人間として生まれた最初の頃は、人生イージーモードと言っただろ。若い魂ほど裕福な家に生まれるんだ。まだ考える力がない分、丸暗記には強いから今の時代の教育制度ではそこそこの学歴を得て安定した会社に入れる。それで大丈夫そうなら、次は少し経済的に厳しい家庭に生まれる。ダメなら同じぐらいの家庭でやり直しだ』
「それだと自分で運命を切り開く魂に育たないんじゃないですか?」
『ああ、育たんよ。人生を五〜六回繰り返して、ようやく平均的な経済力の家庭だ。このあたりから、ようやく自分の頭で考えられる魂が出てくる。中には十分に霊格値も高い身魂も出てくるから、そういう魂は神々に目をかけられる。そして神に取り上げる前に一回ぐらいは日本人に生まれさせて、自然災害の苦労を体験させることが多いんだ。それでも過酷な運命は与えられることがない』
「えっと……。もしかして……ですが、今の日本人に考えなしが多いのは、その影響ですか?」
『戦後社会からの洗脳もあるが、そっちの影響も大きいかもしれんな。そのあたりは知らん』
「それと、まだ自分で運命を切り開けないとなると、促成栽培されてる魂は霊格が高くなっても、因縁ミタマにはならないんですか?」
『村に一つ二つ落とされ、そこでエリート家系を継ぐ因縁ミタマにはなる。だが、時代を切り開いたり、世の中を変えるような役目は与えられない。きみが気づいた通り促成栽培される魂は霊格こそ高くなっても、時代の礎となるには石が小さすぎるからな』
「つまり上の神様も、促成栽培の魂には重い責任のある役目は任せられないと見てるんですね」
『そうだ。上の神もそうやって育てられた魂が小さい上に脆いことはわかっている。神々になっても、さすがに気苦労の多い守護神や死神は任せられん。補助神として手伝ったり、大神の下で眷属と一緒に雑用をしたり、あとは何だろうな……』
「促成栽培された神様は、今、どのくらいいるんですか?」
『さてな? 正直、実態はわからん。地球の神が今の促成栽培を始めたのが一四世紀の終わり頃だったから、最初に神になる身魂が出てきたのは、いつからだろうな。二〇世紀に入った頃から徐々に増えてきたと感じているが、戦後の人口爆発には間に合わなかったと記憶してる。最近の三〇年間になって、ようやく目立つようになったという感じだ』
「日本の三〇年間の停滞との関係は?」
『それは時期が重なっただけで、まったく関係はないだろ。そもそも大きな責任のある役目は与えられないのだからな』
「それもそう……ですね」
何やらいろいろと問題が見えてきた。
『それに、そういう身魂たちは神になってから急に厳しい社会へ放り出されるんだ。今、どのような弊害が出てるのかは話では聞くが、生まれてきてから初めての壁に当たってる魂も多いだろうな』
「じゃあ、神様になってから消えた魂は?」
『あるとしたら、これからだろう。人知れず活動を止めた魂があったとしても、時間的には蒸発した身魂は出てないと思うぞ』
「問題が出てくるとしても、それは『これから』ですか……」
「反対に地道に育つ魂は、どのくらいかけて人間から解脱して神様になるんですかね?」
『どのくらいというのは回数を知りたいのか? それとも時の長さか? どちらにしても、たくさんの経験をしてもらうんだ。最低でも二〇〇回、理想を言えば五〇〇回の生まれ変わりは欲しいかな』
促成栽培される魂と比べると、とんでもない数の多さだ。その経験の分だけ、身魂は大きく成長するのだろう。
「一回の人生が八〇年とすると、あの世での待ち時間を含めなくても八万年以上ですか……」
『今の寿命が短くなった地球を基準にして考えるな。人間というかリラ人系の本来の寿命は惑星によって三〇〇歳から一〇〇〇歳だ。平均寿命五〇〇年、あの世での待ち時間を二〇〇年と考えると、優に一〇万年は超えるぞ』
「あの世での待ち時間は、二〇〇年もあるんですか?」
『今の地球とは違って、多くの惑星では人口に対して魂の方が多いからな。地球でも一〇〇〇年以上前は指導神に選ばれた魂でないと、次の生まれ変わりまで、そのぐらい待たされてたぞ』
「たしかに時代とともに、生まれ変わるまでの時間が短くなってますもんね」
守護神様の言う二〇〇年というのは、古代宗教にも出てくる期間だ。それが江戸時代の頃には五〇年となり、近年のスピリチュアルブームの始まった一九六〇年代の調査では一〇年ほどに縮まっていた。それが今世紀に入った二〇〇三年の調査では、更に短くなって平均四年五か月となっている。
『それと今の地球では霊格値が八〇〇を超えれば、希望すれば輪廻からハズレて神になれる。だが、多くの惑星では一〇〇〇近く、惑星によっては一五〇〇を超えなければ神になれん。そのあたりも考慮しろよ』
「地球では神様を増やすために、そんなことまでしてたんですか? それだと地球にいる魂で古い人は、どのくらいの回数、生まれ変わったんでしょうね?」
『それは答えようがない。ワンダラーの中には何十万歳、何百万歳の魂がゴロゴロいると言ったが、地球の神には把握も管理もできてないんだ。そのあたりは調べようがない。せいぜい管理できている「神の器」の中で語ることしかできない』
「じゃあ、神の器の中にいるオールドソウルの割り合いはわかりますか? 一応私もその一人みたいですが……」
『正直、それは答えようがない。そもそもオールドソウルには定義がないんだ。一応、地球では「超古代文明の頃の記憶を持つ魂」ぐらいの意味で使われてるから、その使われ方では、きみもその一人だろう。だが、二〇〇回以上生まれ変わった経験のある魂という意味だと、きみはまだ半分だ。何万歳という意味で使われると、その何万が具体的に何歳かで話が変わってくる』
「イメージ先行で使われてる言葉だったんですね」
『さすがに魂の年齢だとあの世での待ち時間まで含めてしまうから、生まれ変わりを二〇〇回以上経験した魂としておこうか。それと例外的に人生への心残りが強くて、同じ時間を何度も成功するまで繰り返そうとする魂もいるが、そういう人生は何度繰り返しても一回とカウントしておくぞ』
「そんな生まれ変わりもあるんですか? というよりタイムリープかな?」
『……で、人生を二〇〇回以上経験した魂は、だいたい二万人に一人ぐらいだ。地球育ちは霊格が高まると早めに神になってもらってるから、それだけの回数生まれ変わっても霊格が上がらない魂はよほどの身勝手か、地獄化した地球に過剰適応して霊格が上がらなくなった魂ということになる』
「ということは、地球にいるオールドソウルのほとんどは、地球外から来たスターピープルってことですね」
『残念だが、そうなるな。地球が成熟した惑星になるためには、オールドソウルが人口の五〜六%を超えるようになって欲しい。これから地球は松の代を迎えて、魂を促成栽培する必要がなくなるはずだ。だが、自前のオールドソウルが増えて超古代文明の頃の成熟した地球に戻るまで、はたして何千年の時が必要になるだろうな?』
「それまではスターピープルに頼るしかありませんか?」
『そうだな。だが、松の代になれば、地球は魂の成長にとってのボーナス期間は終わる。それでも来てくれるスターピープルは、どれだけいるだろう』
「今、地球に来てるオールドソウルが、そのまま残ってくれませんかね?」
『それは難しいだろうなぁ。そういう人たちほど促成栽培してる魂の人生をイージーモードにするために、被害者役の因縁ミタマを頼むなんて割りを喰わせてるからなぁ。まあ、向こうも苦労を押しつけられた分だけボーナスが増えるのだから、今は利害関係は成り立ってる。でも、ボーナスが無くなってしまったら……』
「地球への愛着はありませんかね?」
『生きてるうちは愛着を持ってても、あの世へ戻ったら愛想を尽かす方が先かもしれん。きみだって、その一人かもしれんぞ』
「いいところまでは成功するのに、そこで誰かの悪意や怠慢のとばっちりで落とされる運命ですもんね。ホロスコープによると二〇三九年に諸悪の根源が発覚して、二〇四二年にすべての障害が取り払われるとは予言されてますけど、この運勢は松の代が始まっても有効ですかね? その前の二〇三七年で人生が終わる可能性がありそうですけど……」
『そこまでは知らんよ。でも、きみは最初から地球で悪魔の手口を学ぶために、そういう星の下となる運勢に生まれている。今は「一度ぐらい、地球で悪意を向けられない人生を」とか思ってるみたいだが、人生を終えた時に同じことを思っててくれるか……』
「それは私にも、その時になってみないと何もわかりませんねぇ」
ということで今回も取り留めもなく長々と語ってしまった。ここで話を終わりにしたいと思う。




