第60話 フェルミの宇宙人問題について聞いてみた
フェルミの宇宙人問題──フェルミのパラドックスは宇宙人が地球へ来てない理由として、科学者に好まれている物の見方だ。これに関しては第三〇話の霊格カテゴリーの話で触れているが、改めてこの話題を深掘りしてみたいと思う。
フェルミのパラドックスというのは、まず宇宙人が存在しないと仮定した場合、
一、惑星を持つ恒星は滅多にない
(惑星がなければ生命は生まれない)
二、生命を持つ星も滅多にない
(太陽系も地球以外に生命は存在しない)
三、知能や言語を持った生命は人類のみである
(地球では人類以前に知能を持った生命は生まれてない)
四、科学や数学は地球特有の現象である
(星ごとの科学現象は他の星では再現できない)
五、科学文明となったのは西洋文明のみである
(日本? 何、それ?)
という前提が必要になってくる。これらは二を除くと今では科学的な知見からは有り得ないし、このパラドックスが生まれた当時の白人至上主義だった西洋人にとっても、五で日本という存在がこの前提を否定していた。そして今も地球外生命が見つかってないことから二の可能性は残ってるが、それも限りなくゼロに近い確率だろう。
そこで宇宙人は存在すると仮定し直して、当時の知見から、
1、生命を持つ星は無数に存在する
(天の川銀河だけでも恒星は二千億個以上ある)
2、科学文明を持つ星も無数にある可能性は高い
(地球文明は全体の五%が科学文明時代)
3、地球文明よりも進んだ文明がある可能性は高い
(ゼロと考える方がおかしい)
4、恒星間飛行ができる文明は存在する可能性が高い
(現在のロケットは、かつての丸木舟レベル)
という結論が出てくる。
2の科学文明の五%という数字は、当時のキリスト教世界観から人類文明は六千年前に生まれ、科学文明は三百年前──一七世紀のニュートンやガリレオの登場によって始まったという見方からだ。
3で想定した文明の数は、ドレイク方程式から求められるものである。それを悲観的な確率で見ても、天の川銀河の中だけでも一〇の文明があると期待できる。ここで「悲観的」としたのは、「文明は発展するほど戦争で滅びやすい」という、今の死の商人によって地獄にされた西洋社会的な歴史観から来ている。裏を返せば、天の川銀河の中には最低でも一〇の侵略的宇宙人がいるとも解釈できるだろう。
ところが高度文明を持った宇宙人がいると仮定した結論からは、次のような矛盾が生まれてくる。
A、過去、宇宙人が地球を訪問した可能性は高い
(でも、宇宙人も訪問した証拠も見つかってない)
B、星間通信が行われている可能性も高い
(宇宙からそれらしい電波を観測できてない)
これこそが、いわゆるフェルミのパラドックスだ。
そして、その矛盾を説明するために、
a、地球僻地説
(地球は外からの訪問が難しい場所にある)
b、交互進化説
(確率的に同じ時代に複数の高度文明は存在しない)
c、地球隔離説/動物園仮説
(何らかの事情で地球への訪問が制限されている)
d、仮想現実説
(この世は宇宙人が作った単一世界の仮想空間)
という仮説が出てきている。
「守護神様。フェルミのパラドックスの答えにつながる話は、すべて過去のダウジングで教えてもらってるんですよね?」
『それなりに教えてあるぞ。あとは情報を組み立てるだけだな』
「最初にフェルミが矛盾としてるAの問題ですけど、宇宙人が昔、地球を訪問してた証拠は、本当はあるんですよね?」
『もちろんたくさんあるし、それを語ってる人たちも多い。だが、理屈と膏薬はどこにでも付く。よほど決定的な証拠でない限りは、否定しようと思ったら、どんな屁理屈でも並べられるだろ。それに都合が悪くなったら、その部分を隠して触れなきゃいいだけだ』
「有名な遮光器土偶は、あれは宇宙人ですか?」
『いきなり難しい質問をしてきたな。あれは宇宙人を象ったものではない。だが、ベースには使われてるから、そのあたりの説明が難しいな……』
「最近、遮光器土偶はサトイモの精霊だったという説が出てきてますけど、それとの関係は……」
『その話題を出してくれると助かる。まず、あの土偶は精霊とは関係ない。日本人は万物に神が宿ると信じているから、いつの時代もあらゆるものを擬人化して楽しむ文化が根付いている。今だって軍艦や鉄道、温泉なんてものまで次々と女の子にしてるだろ』
「刀とか国とか駅とかには男の子バージョンもありますけどね。何かオジサマ化したものもあったような……」
『まあ、そういう擬人化フィギュアの一種だ。縄文時代の土偶は擬人化というより、サトイモなら何星人っぽい、オニグルミなら何星人っぽいという感じで宇宙人化したものだぞ』
何星人の部分は、ダウジングでは特定ができなかった。
「それは今ならば動物化、擬獣化するようなものですかね。怪力ならゴリラ化、冷たいものはペンギン化みたいな……。それともケモミミや尻尾を付けただけの……」
『おお! そのケモミミが近いぞ。宇宙人の体型が地球人と同じとは限らないからな』
「ああ、なるほど……。じゃあ、宇宙人の目がケモミミみたいなアイコン──特徴となるシンボルだったのでしょうかね?」
『そうだ。よくケモミミと尻尾で何の動物かを表すように、目と頭の形でモチーフとなった宇宙人を表してるんだ』
「宇宙人が当たり前の世界になると、そういうお約束が生まれるんですね」
遮光器風のスリット目や、大きく真ん丸で黒い目玉を持つのは、いったいどのような宇宙人だろうか。
細い吊り目と尖った頭の宇宙人は、キツネ目の宇宙人か、爬虫類型の宇宙人か。
縁のある目も、鳥類のように高い視力を持った宇宙人か、それとも両生類のように目の周りが盛り上がってる宇宙人か。
トンボ目やドーム型の目となると、これは間違いなく昆虫型宇宙人のものだろう。
それ以外に、どのような目や頭を持った土偶があっただろうか。
『今の科学者に「残念」と言いたいのは、宇宙人からの通信を電波で探してるところだな』
フェルミが矛盾としたBの問題である。
「電波はダメなのですか?」
『宇宙人の高度な文明にとっての電波は、今の地球文明にとっての狼煙のような原始的なものだ。現代は情報化社会だが、誰も狼煙なんて使ってないだろ?』
「そんなに原始的なんですか? 一応、今の科学的な常識では、光は宇宙の最高速度ですよ」
『光はけっして宇宙の最高速度ではない。よく「相対性理論によって光が宇宙の最高速度と示された」と言われるが、それは解釈の間違いにすぎん。相対性理論は空間の歪みを示した理論であると同時に、光で観測した場合に「世の中がどのように見えるか」を示した理論でしかないんだ』
「実際問題として、光の速度を超えるとチェレンコフ光という衝撃波が観測される現象は知られてますからねぇ。それなのに『光の速度は超えられない』と言ってるのは、物理学上の欺瞞でしかないと気づいてる人も多いですよね」
もっとも、この衝撃波は真空中ではなく、光の速度が落ちる物質の中で観測されたものだ。真空中でどうやれば光の速さを超えられるのか。そこがまだ知られてないんだよね。
『当たり前の話だが、光の速度でしか飛ばない電波では、宇宙での通信には不向きだ。それどころか今の地球文明の技術でも、惑星間どころか惑星の中での通信でも不都合が生じてるだろ』
「金融商品の自動売買や国際ゲーム大会で問題になってますね」
地球の裏側との通信には、光ファイバーで最短距離で結んでも一〇〇ミリ秒近い遅れが生じる。六六ミリ秒と書かれてる記事も散見するが、それは真空中を伝わる光の速さ──秒速三〇万キロで単純計算した大間違いだ。光ファイバーの中を伝わる光の速さは秒速二〇万キロまで落ちてしまうのである。数ミリ秒の遅れが致命的と言われる金融取引やオンラインゲームで、往復で二〇〇ミリ秒もの遅れが出てるのだから問題になるのも当然だ。
そこで光ファイバーの中をくり抜いて、真空にしたケーブルが開発されている。これなら信号は光の速さ──秒速三〇万キロで伝わるけど、それでも地球の裏側との通信に往復で一四〇ミリ秒の遅れが出てくることまでは防げない。
「……それで、宇宙人の科学力では、どのくらいの速さで通信できるのですか?」
『え? ちょっと待て! 今、調べる……』
振り子の動きが乱れた。ただいま神様インターネットで検索中である。
『天の川銀河の端から端まで、だいたい一三〇マイクロ秒という記事が出てきた。もっと速いものもあるのかな?』
お隣のアンドロメダ銀河までの距離は、天の川銀河の直径の約二五倍。その速さだと往復で五〇倍──約六・五ミリ秒。地球の裏側と光ファイバーで通信する場合の、わずか三〇分の一の時間で通信ができてしまう。
でも、これはあくまで守護神様が見つけた記事での話。もしかしたら、もっと速く通信する方法があるのかもしれない。
「最後に宇宙人が地球に来ない矛盾を説明する仮説についても触れておきましょうか。最初のaにある『地球僻地説』ですが、宇宙の地政学を知るとありえない話なんですよね?」
これも第九話で触れてある話題だ。
『その通り。現在の地球は星間交通の要衝にある。そのため四つの勢力が、あわよくば横取りしようと暗躍してる状態だ』
これはbで示された交互進化説の否定でもある。
「地球のある宙域はプレアデス系の勢力が治めてる空間ですよね? その四つの勢力は日月神示にもしっかりと書かれてますし……」
悪神、邪鬼、大老智、九火(または悪狐)の四つである。
ちなみに悪神はオリオン人ことグレイ型宇宙人で、邪鬼はレプティリアンだ。オロチと悪狐については今も具体的な正体は不明だが、オロチはメソポタミア神話でアヌンナキと呼ばれる宇宙人で、悪狐はエジプト文明やマヤ文明の歴史に登場してくる長頭人というところまでわかっている。
『今の星間交通は、地球の奪い合いでオリオン大戦が起こされた影響で大動脈が通行止めにされている。北へ迂回してヴェガ星を経由するルートと、南へ迂回してゼータレティクルを通るルートの二つがあるが、やはりほぼ直線で天の川銀河の中と外を行き来できる太陽系ルートは復旧させたいんだろうな。だからこそ今回の岩戸明けは意地でも成功させたいようだし、最初の岩戸開きに失敗した直後の一九五六年頃には、天の川銀河を侵攻しているグレイ型宇宙人の大艦隊が、太陽系のすぐそばを通り過ぎていったし……』
「一九五六年というと最初の岩戸開きが成功していたら、松の代が始まるとされていた年ですね。大艦隊が通過する前に、地球の領有権をハッキリさせておきたかったんでしょうかね?」
『それはあると思う。だが、それはならずに地球はアメリカが覇権国家となって、もっとも繁栄する時代となった。一方で東西冷戦が深刻化して、世界中で大国の代理戦争が起こされる時代になったわけだ』
「アメリカはグレイの大艦隊が来るタイミングで裏取引をして、宇宙人の先進技術を手に入れたという話がありますもんね。なんせ半導体技術やデジタル通信、インターネットなど、今の時代を作る技術の多くがこの頃に生まれてますし……」
『グレイから得たのは半導体技術ではなく集積回路だ。半導体は一九世紀に発見されて、一〇〇年近くかけた一九四八年にトランジスターが発明されてる。これはアメリカがグレイと接触した直後だから、もらった技術か、たまたまこの頃に発明されたものかは判断が難しい。だが、そのわずか八年後に集積回路──ICの技術が生まれて、更に一〇年後には大規模集積回路──LSIへと進化し、そこから一〇年と経たないうちに超LSIが生まれている。アメリカは一九四〇年代後半からの三〇年間で、本来なら三〇〇年から五〇〇年かかる技術進化を、一気に進めたんだ』
本来の一〇倍以上の速さで進化するというのは、とんでもない世の中の変化である。
ちなみに発明から実際にモノが市場へ出てくるまでは、一〇年ちょっとの時差がある。一足早く最先端技術を取り入れて儲けようとする会社が出てくるのが、この頃からだ。更に一般家庭にその技術が入ってくるのは、発明から三〇年ほど経った頃である。
個人向けのパソコンが普及し始めたのが一九七〇年代後半だから、トランジスターの発明から三〇年ほど経っている。ただし、トランジスターのコンピューターが普及する前に集積回路の技術が出てきて置き換わったため、個人向けのパソコンは最初から集積回路が使われたものだった。
また一九六〇年代半ばに生まれたインターネットも、一般家庭に入ってきたのは三〇年遅れた一九九〇年代半ばからである。
そしてコンピューターの基礎技術の急速な進化は一九七〇年代半ばで終わるが、三〇年遅れで家庭に入ってきたPCの技術変化はすさまじかった。二〇〇〇年代の終わりまでは二〜三年、ひどい場合は一年半で使い物にならないほど時代遅れになる傾向があった。しかし今は落ち着いて、一〇年前の機種でも使う分には問題を感じないほど技術の進化は緩やかになってきている。これも三〇年遅れの動きである。
「今回の話題──フェルミのパラドックスの答えになるのは、cで示した地球隔離説の方ですよね?」
『その通り。今の地球文明は未熟だが、それを保護するための「動物園仮説」なんてものはない。それよりも悪による汚染がひどいため、宇宙人の立ち入りを禁じた「地球隔離説」が正しい状況だ』
「毒や放射線などの汚染みたいなものですか?」
『それと同じだ。毒物や放射線などによる汚染は、健康であれば、あるレベルまでは被害は出てこない。その境目がカテゴリー二と三の境界だ。そして、そこに一〇分の一や一〇〇分の一の安全係数を掛けたものを安全基準にしている。これが安全か危険かの境目で、惑星が悪に汚染されている場合は、地獄かそうでないかの境目になっている』
「つまり汚染はしてるけど、目立った被害は出ないレベルがカテゴリー三ですか?」
『そういうことになる。オリオン人ことグレイは市民が支配に気づかないほど幸福に暮らせるレベルでの植民地化を狙っている。そのために地球をカテゴリー三まで浄化しようとしてるんだ』
「カテゴリー四以上の植民地は、あるんでしょうかね?」
『植民地支配は地獄だろ? だからカテゴリー三以下でしか有り得ん』
「それもそうでした……」
植民地支配や占領そのものが『悪』による汚染だものね。
『グレイによる植民地支配は産業革命や科学文明を起こさせず、宗教に支配されて思考停止させたまま平穏に暮らさせることだ』
「そのために産業革命や科学革命が起こる動きがあると、そこで文明が衰退して滅びるという成長の天井が施されていたんですよね」
『今の地球文明はレプティリアンが、その天井を壊したから今の発展があるが、地球文明は六千年にわたって、その天井に苦しめられた歴史でもある』
人類文明は少しずつ成長を続けてきたと考えたい主流学派には都合の悪い物の見方だが、文明は街が作られると都市部での生活は、数十年で一八世紀頭のレベルにまで発展する。ギリシャ文明もローマ文明も、そして中世ヨーロッパや中国の唐、日本の奈良時代も同じだ。
しかしグレイは、文明がそれよりも先へ進まないようにしていた。九〜一〇世紀の頃に世界中で文明の繁栄が頂点を迎えると、そこから世界的に中世期の文明衰退を起こされた。人類がこの頃の技術力や数学力を取り戻したのは、一六世紀に入ってからだ。これはグレイの支配力より、レプティリアンの支配力の方が強くなったためだろう。
そのレプティリアンは中世期の衰退が始まる一〇世紀に死の商人システムを完成させ、一四世紀末には利子を発明させて金融経済の基礎を築いた。一五世紀は人類文明がもっとも衰退した時期となったが、その間に貨幣経済で社会階層を強固なものにし、絶対王政による支配構造を構築した。そして戦争だらけの帝国主義と資本主義の世の中に変えていったのだ。
それによって人類文明はグレイの仕掛けた天井を壊して、ルネサンスよりあとは産業革命も電気革命も起こって、今の科学文明に至っている。
それと引き換えに地球文明は、西洋からカテゴリー二、カテゴリー一の地獄へと落とされていくのだが……。
「地獄の下へ行くほど『泥海』になると言われますけど、毒で考えるとどんな状態なんでしょうかね?」
『それなら、わかりやすく大気汚染でたとえてみようか。カテゴリー三というのは、光化学スモッグ注意報が出た状態だとイメージしてくれ。注意報が出されても目には見えないから、普通に行動してる分には健康被害はそうそう起こらない。だから注意報を知らないと汚染には気づかないよな』
「光化学スモッグ注意報が出る時は、晴れて青空の広がってる日が多いですからね。激しい運動さえしなければ普通に暮らせるので、公害を知らないままの人は多いでしょうね」
『カテゴリー二は、その青空が見えなくなるほどスモッグで空が汚れた状態だと思ってくれ。スモッグで遠くも見えなくなってくる。カテゴリー一になるとスモッグというか漂う煤煙が目で見える上に健康被害まで出て、生活に支障が出てくる状態だ』
「それが水の中だったら、まさに泥海ですね。ロンドンの二つ名である『霧の都』も、実は大都市の象徴であるスモッグのことだったそうですし……」
霧の都ロンドンと言いながら、気象現象の霧は一年で一〇日ほどしか発生しない。一年の三分の一で霧や靄が生まれる北日本の太平洋側とは大違いだ。
生き物としてまともな神経の持ち主なら、さすがに空気や水が汚れて命に関わるような場所へは行きたくないと思うものだろう。だけどレプティリアンに支配されてエゴや欲望に心を汚染された人類は、空気や水が汚れてようと構わず、今も昔も多くの人たちが稼ぐためや野望を叶えるために都会に集まっている。
『今の地球はそういう悪に隠されて、世の中から真実が見えない泥海──「地獄の最底辺」と呼ばれるほどの悪さだ。それを今、天界の神々が三千年に一度の大浄化作戦を進めて消し去ろうとしている。「緊急SOS!地球の悪ぜんぶ抜く大作戦」だ』
「人気番組、『池の水、抜いちゃいました』みたいなノリで言わないでください」
このあたりの話は第五七話を参考にして欲しい。
「最後のdの仮想現実説は、有り得るんでしょうかね?」
『それは俺に聞くよりも、きみ自身が深く検証してなかったか? 小説の構想として……』
「小説『6度目の世界』の初期案ですね」
あの物語は最初、ローマ帝国が三世紀には超科学文明になったものの六世紀になる前に文明崩壊して滅亡。一部のエリート技術者だけが現実世界に残り、生き残った人類をコールドスリープさせて地上で再び暮らせるようになる時を待つ間、人々を仮想現実の世界で暮らさせて文明教育を施しているという世界観だった。そのために皇帝ネロを悪人に仕立てて、古代ローマの科学技術は西暦八〇年に円形闘技場が完成した頃が頂点で、それ以降は予算不足からインフラを維持できなくなり、緩やかに衰退していくというウソの歴史に書き換えられたとした。その先にあるのが世界的な暗黒の中世期だ。
でも、この設定で辻褄を合わせようとすると、先端物理学や望遠鏡による現代の天体観測で破綻するため、この世界を仮想現実とする設定は棄てることになった。
天体観測すると現実世界の映像が取り込まれる等の逃げ道を考えたが、ついに妙案が出なかった。
しかし日月神示にハマる前なのに、この時に調べたことがハマったあとで非常に役に立ったのであるから、著者的には不思議な作品であったと思う。
「とすると、仮想現実説は有り得ないってことですね」
『あくまで宇宙人論での話だ。魂の世界から見たら、間違いなくこの世界は仮想現実だけどな』
「五次元以上の世界にある神霊や霊魂の世界から見たら、この三次元は次元を二つ落とした仮想空間ですもんね。そもそも数学的にも三次元は不完全な空間ですから、イヤでも次元の破れから高次元方向にエネルギーや素粒子が出入りしてますし……」
三次元ベクトルは三つの次元を四元数の三つある虚数に割り当てて、実数部分を使わないというトリッキーな振る舞いをする存在だ。
ちなみに数学的に完全な空間が存在するのは、複素数で表される二次元、四元数で表される四次元、八元数で表される八次元、そして複素八元数で表される一六次元の四つだけである。霊の世界は五次元と言われるが、その世界も次元の破れから外へ漏れ出てないだろうか。まあ、どうでも良い話だが……。
「さて、今回の話題にした矛盾の答え合わせは、私が生きてるうちに示されるでしょうかね?」
『一〇年以内は無理でも、あと二〇年もしたら宇宙人が公式訪問してくる。その時まで生きていれば答えはハッキリするぞ』
「それは楽しみですね」




