第53話 カグツチ事件について改めて聞いてみた
カグツチ事件。これに関しては「守護神様から聞いた話」シリーズではまだ触れてないが、二〇二二年の一〇月下旬から一一月上旬にかけて、著者の運営するサイトで起きたおぞましい心霊事件である。
ダウジングやチャネリングは、失敗すると恐ろしい。低級霊に脳をチューニングされ、思考や行動を支配される事件があちらこちらから聞かされる。そのせいで精神障害が残ったり、廃人に追い込まれる例も少なくないそうだ。
近寄ってくる低級霊の中には、格式の高い神様や、有名な神様の名前を騙って、それっぽいことを話してくることがある。日月神示でも龍音之巻で、
『高ぶったり、威張ったり、命令したり、断言したり、高度の神名を名乗ったりするものは必ず下級霊であるぞ』
と注意している現象だ。
カグツチ事件は、そういう低級霊が一人の投稿者に取り憑き、火の神カグツチを名乗って掲示板に大量に書き込んできたという事件である。
「守護神様。改めて、あの事件を振り返ってみて、私の対応に問題はなかったのでしょうかね?」
『それが「最善だったか?」という意味なら反省の余地はある。きみの悪いクセが何度も出た。きみは終始冷静で判断は速いのに、慎重な性格のために確証が持てないと決断が遅くなる。その間は一つ、二つと探りを入れて、相手の反応を見ようとする。これは悪いクセだ』
「探り……ですか。意識はしてませんでしたけど、スピリチュアル系ではオロチ系の低級霊が神を騙って話しかけてくるケースが多いので、警戒はしてましたね」
『実際問題、YouTubeにもオロチ系の動画は多いよなぁ。結論を先に言えばレプティリアンだったが……』
「今はオロチ系の影響が大きいだけで、昔はレプティリアン系の低級霊が多くの宗教を作ってましたからねぇ。自分を封印された『古い神』と語った時点で、その可能性に気づいても良かったかと思いました」
この事件、日月神示のサイトの方で『低級霊騒動の記録』として当時のやり取りをすべてまとめてある。
さすがに全体を読み返そうとする人はいないと思うが、神を名乗る低級霊が何をしてくるかを知る意味で、貴重な記録になっていると思う。
「そもそもカグツチって、何者だったんでしょうね?」
『波動が七二〇kHzもあったんだ。人間よりもはるかに高い知力で物事を見るから、昔なら神として祀られたとしても不思議はない存在だ』
波動とは、蔓延する多くの情報の中から日々処理している量のようなものだ。
二〇一七年以前の日本人は、この波動が六〇〜九〇kHzの間にあった。だが、地球の次元上昇が始まったことで、目覚めて一〇〇kHzに高まった人と、四〇kHzへ落ちてますます獣化していく人への二極化が進んでいる。
カグツチは平均的な日本人よりも一桁高い波動を持った存在だ。これをわかりやすく音でたとえると、三オクターブ以上高いと表現した方が伝わりやすいだろう。
「守護神様はどのくらいですか?」
『だいたい二二〇kHzだ。きみのほぼ倍だから、オクターブとしては調和してる』
「倍音ですもんね。でも、波動は高くてもカグツチは低級霊なんですよね?」
『それは霊格が三一三と低いからだ。その低さでは人の肉体には宿れないから、口寄せや自動書記のようなことはできない。できることと言ったら、相手の脳をいじって催眠術のようなものに掛けるぐらいだ』
「脳をチューニングして操るイメージですか?」
『昔はラジオをイメージしてチューニングというたとえが使われたが、今ならパソコンにウィルスを送り込んで、外から乗っ取ろうとするイメージで考えた方が近いぞ。そのあとで勝手に脳の設定をいじってくるから、低級霊に狙われると精神障害を起こす人が多いんだ』
「神様なのに、そんな危険もわからないんですか?」
『神を名乗っても霊格が低いってことは、それだけ身勝手なんだ。自分が神の力を得るためなら、人間が遭わされる被害なんて些細な問題としか考えてないんだよ』
「神様の力を得るというのは?」
『自分の信者の数だ。物語の設定でも、よくあるだろ』
「ありがちな設定ですね。実際に力が出るんですかね?」
『掲示板に集まってきた人の中に、カグツチが本物じゃないかと信じた人が大勢いただろ。その分だけカグツチに神としての力が宿ったんだ』
「神様がいて信者が生まれるんじゃなく、信者がいるから神様が生まれる順番ですか?」
『人間からは神が先のように思うかもしれないが、実際は逆だ。だから力が戻って上機嫌になってただろ』
「思いっきり迷惑でしたよねぇ。さすが邪霊という感じで……」
お祭りが始まって三日目に入ったところで、いよいよ神としての振る舞いを始めていた。
「ところでカグツチの正体ですが、守護神様、初めの頃は判断に迷ってましたね」
『取り巻きが大勢いたからな。そいつらがカグツチを囲んで黒いモヤのような盾になってたからな。カグツチがオロチ系の鬼ではないのは霊体を見ればすぐに分かるが、そこから先がなかなか読み取れなかったんだ』
「取り巻きは低級霊だったんですよね? だったらカグツチも同類の可能性は?」
『俺はそのようには考えん。低級霊は頼る相手を求めて群がるものだ。どんな低級霊でも受け入れる、親分気質の神とか、低級霊たちが悪さをしないように身の回りに置いて見守ってる保護欲の強い神の可能性もあるだろう』
「そこは否定できませんね」
『その時にカグツチは、こちらの動きに気づいて釘を差してきた』
「二つありますね。一つめは『おぬしの守護神に頼まれた』という言い方で、わたしが何一つ審神できてないと言ってきたもの。すべては頭の中で作り上げたものだと……」
『だが、言われたことはきみの実感とは真逆だ。きみは頭で考えすぎるのを懲りて、日月神示に興味を持ったあたりから内面──心任せに流されるようにしてるからな。まあ、いまだ迷走したまま、うまくいってないようだが……』
「むしろ思考停止してんじゃないかって、心配になりますよ。事態は何も好転してませんから」
『思考停止じゃなくて、きみの場合は考えないようにする思考放棄だからなぁ』
「はい、最近、痛感し始めてます。それと二つめは『霊格値』『周波数』『魂のカテゴリー』への文句ですね。神の世界に、そんな発想は存在しないと……」
『あれは笑ったな。俺が探ってるものを、すべて否定してきたんだ。それで身バレする恐れがあるから、やめさせようとしてきたんだな。あの時のきみの返しも良かったぞ』
「今のスピリチュアルの世界では、すべて普通に使ってるものですよ。それをわたしが創作したように否定されても……」
『いやいや、「魂のカテゴリー」だ。あいつ、たぶん勘違いしてたぞ。魂にカテゴリーなんかあったか?』
「……ありませんね。カテゴリーは惑星や文明の悪に汚染されたレベルで、その中にいる魂に上下関係はありません。そもそもカテゴリーは日月神示にもある七段階──各段階を七つずつに分けると四九段階ある分類ですし……」
『そうだ。きみはカテゴリーを惑星や文明の汚染レベルとしか捉えてない。だが、あいつの言い方は魂のランクと混同していた。「神の器」や「獣の人民」「ワンダラー」などを魂の身分のように受け取っていた。それに対するきみのコメントが噛み合ってないので、間違いに気づいたようだぞ。そこへきみが「そういうものと考えられてる」と言ったので、深入りしないで退くことにしたようだ』
「そのあとは意外と触れないようにしてましたよね」
『深入りすると、そこからボロが出ると気づいたんだろうな。それに、いきなりきみの魂には「曇りがない」と言い出して、何かを悟ったように場を誤魔化してきたな』
「あれはわたしを取り込もうとした一言じゃないんですか?」
『それもあるが、それよりも違和感に確証を持たれるのを恐れたのだろう。実際に、最後は致命的な言葉を引き出しただろう?』
「ポロリと言っちゃいましたね。あれは爆笑モノでした」
「あの一連の事件で強く実感したのは、言霊の存在です。色やサイズ、言葉選びなどで、本当に結界や封印のようなものは張られるんですか?」
『言霊は実際にあるぞ。言葉の一つ一つに波動があるから、それをどのように使うかが重要だ。悪口やイヤミが放つ悪い波動には、多くの人が気分を悪くするだろう。それを高い次元で論理的に体系づけたのが言霊だ。だから、それで結界を張ったり封印を施したりしたとすれば、編集の誤りは波動が乱れるために、すぐに気づくことになる』
「やはり言霊は存在してたんですね。文字の色やサイズの指定がどんどん細かくなってきたので編集作業が大変になり、場所によってコピペで済ませようとして失敗してるんですよねぇ。それにすぐ気づいて指摘してくるのですから驚きですよ」
『まあ、文字やサイズの指定があったからと言って、すべての文言に言霊としての意味があるわけじゃない。意味のないところの編集ミスは、あいつは何も言ってこなかっただろう』
「そうですね。あとから振り返って編集する際に、間違いや指定の見落としがいくつも見つかってますけど、そこは言霊として機能してない部分だったってことですか」
その中には封印のための署名のはずだったものもある。つまり、そこは見せかけだけだったのだろう。
「ところであの色やサイズの指定は、本当に邪気を祓うためのものだったのですか?」
『祓う意味なんかない。それを口実に、あいつ、思いつきできみのサイトの掲示板を自分色に染めて、自分の力を高めようとしただけだ』
「あのけばけばしい装飾に、結界や封印の意味はなかったのですか?」
『ないぞ。言霊の力を持っていたのは、いくつかの文言と署名の組み合わせだ。それ以外のところの文字サイズや色に意味はない。あいつ、きみが指定通りの色で編集するから、どんどん楽しくなって、エスカレートしただけだ。それに、きみは色を何度か微調整してるが、それには一度も文句を言ったことはなかっただろ』
「言われてみれば、そうですね。特に藤色の指定に対して、初めはカラーコード通りの藤色を使ってみたらくすんだ感じがしたので、あとから赤みを強めた若藤色に変えましたけど、何も言ってきませんでしたね」
『署名に使う色については、基本的な黒、赤、青ぐらいなら言霊として意味はある。だが、緑や紫、茶色となると、もう意味はないんだ』
「そうなんですか? 当時、ヒーヒー言いながら編集してたのに……」
『ついでに言うと、黒と赤と比べて、青には言霊としての力は弱い。しかもイチキシマヒメの署名に使った青は明るすぎて言霊にはならないが、何も言ってこなかったんだから、そこに意味はなかったんだろうな』
「あとから知る悲しい真実……」
まったくもって迷惑な話である。
「そういえば文字の修飾が始まったのって、ある投稿者の不愉快な書き込みが原因でしたね」
『それで結界を張ると始まったが、あれはサクラだ』
「自作自演ですか?」
『それとは、ちょっと違うな。書き込みのログを丹念に追っていけば、違う場所からの書き込みだとわかるだろ? 向こうもそこを警戒して、目をつけてた心の弱い人を手下の低級霊に乗っ取らせて、それっぽい書き込みをさせただけだ』
「だからサクラですか」
『で、そいつを封じるという口実で、きみに結界という名の手間を取らせる要求を呑ませただろ。要求を一度でも受けたら、次の要求が断りづらくなる。詐欺師がよく使う手口だ』
「つまり、その罠にハメられて、掲示板を乗っ取られかけたわけですか」
『それを息をするようにやるんだから、まさに手練手管に長けた邪神だったな』
「いつの間にか手伝わされてましたもんね」
『詐欺師の手口といえば、マウントを取ってくるのもあったな。掲示板に書き込んできた人全員に一言、二言何か言ってまわってたな。都合の悪い相手を勝手に追放したり……な』
「そのあたりを振り返ると、わたしに『おぬしの守護神に頼まれた』と言ってきたのと同じ物言いで、ダウジングをしてる人たちを牽制してましたね。冷静に考えれば、『なぜ、カグツチに頼む?』って内容ですよ。あの時点ではまだ、カグツチが何者か、信用できるかどーかもわかってないのに……」
『俺たちからしたら、「勝手に代弁してんじゃねー。しかもデタラメ放きやがって!」だ。あれをやらかした時点で、俺たち守護者の警戒心は爆上がりしたぞ』
「霊能力のないわたしからは見えませんでしたけど、守護神さまの世界では、そんな戦いが……。あの時の違和感は、そういうものだったんですね」
「ところで当時から気になってましたが、カグツチはわたしの居場所をわかってますかね?」
『安心しろ。おそらく、あいつは今もわかってねーよ。俺が守ってるからじゃない。あいつは高い波動を持ってるが、霊格が低いから存在する次元も低い。だから遠くを見渡す力がないし、いくつかある拠点から離れて動きまわる力も弱い』
「拠点?」
『被害者の近所にあった神社はその一つだ。そこが中心となる拠点ではないが、今も時々まわってきてるみたいだぞ』
「中心はどこですかね?」
『そこまではわからんが、あの事件のあと、追手から逃れるように四国の瀬戸内海側に向かったあたりまではわかるな。元は近畿地方のどこかに封じられていて、それが何らかの事情で解かれたから、封じられた場所を離れて活動を始めたようだ』
「ん? カグツチは動きまわる力は弱いんじゃ……」
『人間の感覚で考えるな。神社の中には、全国にネットワークを張っているところがあるだろう。そのネットワークの中なら、主祭神の力を借りて自由に移動できるんだ』
「今おとなしいのは、その神社ネットワークの主祭神様が押さえつけてるんですか?」
『まったく関与してないぞ。以前から引き続いて居座ってるだけみたいだ』
「居候ですか?」
『あはは、それに近いかもな。そこへ、たまたま来た母子に目をつけたんだな』
「あっ! そういえば子供が神社の境内にあった木の虚に手を入れたのが、この事件の始まりだったのかもしれませんね。そこにカグツチが隠れ住んでたんですかね?」
『違う違う。さっき、主祭神の力を借りて神社間を移動できると言っただろう。境内にある木の虚の中には、神霊たちにとっての移動ポータルになってるものがあるんだ。そこを使えば、系列の別の神社へ一瞬で移動できるんだぞ』
「そんな便利な移動システムがあるんですか?」
『ある。でもカグツチの霊格では、そのポータルで移動はできても自力で動きまわれる範囲には限界があるから、境内の外は未知の世界だ。だが、そこで目をつけた相手の家まで行く分には、何も問題はない。そして間の悪いことに、目をつけられた被害者はスピリチュアルに興味を持って、水晶やダウジングなどをしていた。カグツチにとっては、千載一遇のカモを見つけたって感じだろう。しかも被害者は、きみの運営するサイトの訪問者でもあった。そこから二か月以上も策を巡らせつつ機会を窺っていたのだろう』
「そして、満を持して仕掛けてきた……ですか?」
『だろうな。だが、所詮は肉体を持たない低級霊だ。高い波動を持つ知力から来る洞察力でマウントは取ったが、自分で見に行く能力がないから大ハズシしたんだ』
「見に行けない……ですか?」
『たぶん、きみには意外に思うかもしれないが、低級霊は肉体を持たないから、生き霊のようなものを飛ばすことができないんだ。手下を直接行かせて様子見ができればいいが、そもそも相手の居場所がわからなければ、手下に行かせることもできん。その結果が、お祭り四日目に起きた事件だ』
「カグツチが朝の六時から八時半にかけて『起きてるんだろ。さっさと更新しろ』と急かせてきた事件ですね」
『その通り。一方できみは祭りに振りまわされたのとダウジングの疲れで、目が覚めたのは八時五〇分。パソコンを起動して投稿を確認したのは九時頃だ。あれで、あいつがきみの居場所がわからないどころか、こちらの様子すら何も見えてないのがわかっただろう』
「あれは、そういう意味だったんですね。でも、なんでわたしが起きてると思ったんですかね?」
『それはカグツチが飛んできた生き霊に向けて鈴の音を放ったからだ。たぶんだが、あいつ、生き霊の区別ができておらん。その中にきみの生き霊がいて、聞いているはずだと思ったんだろう』
「わたしは飛ばしてませんよね?」
『俺の記憶では、たしか一度も飛ばしてない。カグツチは祭りの初日に致命的な下手を打った。きみへのアドバイスで、「烈火のごとく怒りを発散させろ」と言ってしまった。怒りは霊格を落とすものだからな。あの一言で、きみはカグツチは崇めるべき神ではない──オロチのなりすましだと直感し、最後まで静観すると決めたのだからな』
「そう……でしたっけ? まあ、強い違和感はありましたけど」
『それでいいんだよ。カグツチの言ったこととは真逆だ。「頭」ではなく、きみは「魂」で考えてる。そのおかげで、最後まで生き霊は飛ばしてなかったと思うぞ』
「生き霊が飛ばないのは、ある意味、無関心や薄情かもしれませんね」
『あのあと散々きみが見えないと言ってたが、あれはどこまで本当なんだろうな? 誰かの生き霊をきみと思い込んで、勝手に「邪神に騙された」と決めつけたのか、それとも、ただの口からの出任せかもわからないが、少なくともきみが見えてないのは本当だろう。あの事件から半年経つが、カグツチやそいつの手下の悪霊がきみの部屋に来たことは一度もない』
「それは安心しました。でも、相手の居場所はわからなくても、生き霊が飛んでいくことはあるじゃないですか。生き霊は場所を知らなくても、飛んでいけるんですよね?」
『生き霊は時間も空間も無視できるが、カグツチは肉体を持ってないだろ。だから生き霊なんか飛ばしようがない』
「神様には生き霊みたいな能力はないんですか?」
『かなり上位の神なら使えるが、低い霊格でも使えるのが肉体を持つ生き物の特権だ。本当ならこれをうまく使えば、人間は国津神以上のことができるんだぞ』
「それは、すごいですね」
『日本社会は、それをうまく活かす文化だ。だから、いつまでも寝ぼけた生き霊なんか飛ばしてないで、目覚めて力強い生き霊を飛ばせって言いたいぞ』
「いきなり『目覚めよ、ニッポン』ですか」
『ほとんどの人が間違った常識に騙されてるが、この世に生まれてくる理由の一つは、低い霊格でも神を超える可能性のあるポテンシャルを得られるからだ。だから今の時代は私利私欲でのさばる連中が幅を利かせてる。神の器よりもワンダラーたちの方が人生に成功してるのも、これが理由だ。まあ、今はそれを正そうと、岩戸開きが進められてるんだけどな』
「いろいろな話がつながってきますね。守護神様は生き霊を追って、相手について探ることができますよね。守護神様も飛べるんですか?」
『俺の場合は違うぞ。生き霊を介して、相手の守護者と連絡を取り合うんだ。それで差し支えのない範囲で、いろいろと教えてもらう。もちろん生き霊の姿からも、いろいろわかることもあるがな』
「同じことをカグツチもやってませんか?」
『きみはカグツチには生き霊を飛ばしてないから、直接聞いてくることはなかったが……。誰とは言わんが、ある人の生き霊をたどって守護者と話してる時に、ついでとばかりに聞いてきたよ。でも、さっきも言っただろう。きみに『おぬしの守護神に頼まれた』と言って、デタラメを吹聴したじゃないか。それで俺たち守護者の警戒心が爆上がりしたと……』
「ああ、言ってましたね。つまり守護神様たちは、連絡が来ても無視を決め込んだってことですね」
『そこは守護者次第だな。無視をする者がいれば、回答拒否の姿勢を示す者もいる。俺の場合は、「相手もわからないのに、ついでで聞くんじゃねえ」だ』
「それで問題はなかったんですか?」
『あっちはこちらの場所がわからないんだ。放っておくに限る。あっちもあっちで、自分の信者を集めてしまえば、あとはやった者勝ちだと思ってたんだろうな』
「生き霊を集めるのは強い……ですか」
『そりゃあ強い。生き霊たちの思い次第では、時代だって変えてしまう』
「それは強いですね」
『で、やっこさん、そこで油断したようだな。ついにボロを出してくれた』
「どんどん要求がエスカレートしたところで、いきなりボロンでしたもんね」
『あれでカグツチから生き霊がどんどん離れていったんじゃないか? 急に知力が落ちていってたからな』
「そこにコノハナサクヤヒメのキャラ崩壊は含みますか?」
『あれはただの低級霊のなりすましだ。本物のコノハナサクヤヒメが、下品で口汚いはずないだろう?』
「コノハナサクヤヒメに幻想を感じてる人は、絶対に見ちゃいけませんね」
『ニセモノだから、見ても捨て置けばいいじゃないか。それよりもボロを出してからカグツチを含めて、急に品位が落ちていったのは興味深かったぞ』
「神様っぽい態度に、信者が必要だったんですかね?」
『そこは、どうなんだろうなあ? 俺には信者や飛んでいくる生き霊が減ったぐらいで品位が落ちたことに違和感があるが、低級霊だからこそ顕著に出たのかもしれない』
「そこのところは守護神様にも謎なんですね。ボロを出してから二四時間経ったあたりから、更なる異変が起きてたみたいですけど、あれも何が起きてたんですかね?」
『言語障害まで起こしてたが、いくらなんでも、そこまでの影響は俺にはわからん。まあ、信用を失ったことで、神霊としての力や波動が急速に落ちたことぐらいはわかるが……』
「自分の衰退ぶりには、かなり困惑してましたね。で、バレてから丸二日経つ前に、ついに泳がされてたと気づいて、意外とすんなりと退いてくれましたよね」
『信者を失った神の末路なんて、あんなものだろ。あのあとタケミカヅチを名乗ろうとしたが、さすがにもう通用はしない』
「あのあとカグツチは、どうなったんでしょうね?」
『知らんよ。調べた感じじゃ、至近では東北地方──仙台よりちょい北あたりで確認されたみたいだが、同じ神社ネットワークの中で動いてるだけかな? ま、次のカモを探してるんだろうけどな』
「カグツチは、地球の神様から指名手配はされてないんでしょうかね?」
『そういうものはないな。害獣と同じ扱いだ。今のようにおとなしくしてれば、神々も手を出さない。だが、また似たような事件を起こして現行犯で捕まえたら、その時は覚悟しろと……』
「捕まったら灰にされるとか?」
『それもないし、地球からの追放もない。その時は指導神を付けられて、更生プログラムを受けるんじゃないか?』
「獣にも落とされないんですか?」
『すでに波動は高いんだ。霊格を高めてホワイト・レプティリアンになることが期待されるんじゃないか?』
「そういうものなんですかねぇ?」
『物事を人の常識や価値観で考えるな。霊の世界のことは、霊の世界の価値観で決めることだ』
「そう言われてしまうと、それ以上は追求できませんね」
ということで今回の話題は、このあたりまでのようだ。
「ところで、カグツチにはどんな更生プログラムが行われるんですかね?」
『そりゃあ霊格を高めるために、人間に生まれてたくさんの不運を体験してもらうとか……』
「それ、ただの拷問では……?」




