第52話 岡山幕府(仮)の世界線について聞いてみた
前回に引き続き、今回も著者がダウジング実験をする中で見つかったパラレルワールドの話題である。
今回は、まだ本当の名前が見つかってない岡山幕府(仮称)についての話だ。
「守護神様。源西乗が幕府を開いた世界線は、日本が西洋を抑えて最強の覇権国家になる世界線ですよね。気になるけど謎が多くて……」
『謎が多いんじゃない。きみがダウジングで探り当ててくれないだけだ』
はい。その通りです。
今回の世界線の名前が『岡山幕府(仮)』となってる時点で、すでに名前からわかってないのが丸わかりである。
取り敢えず、備前の国──現在の岡山市に幕府を開いたというところだけは判明している。だが、岡山、吉備、備前、倉敷、赤穂、児島、浦安とそのあたりの名前を拾っては尋ねてみたが、どれも『違う』という回答である。おそらく現在では地元民しか知らないような、マイナーになった地名で呼ばれていたのかもしれない。
その一方で、その幕府を開いた源西乗は、こちらの世界線では歴史には名前が残っているものの、活躍した記録がほとんど残ってない人物である。ある意味、よく探り当てたものだと感心してしまう人物だ。
『その世界線は元寇のあと、唯一、大陸に反撃を仕掛けた世界線だ』
「反撃したんですか?」
『そうだ。しかも中韓の卑劣な行動にブチ切れて、朝鮮民族を史上三度目の滅亡に追い込んでる』
「滅亡って、皆殺しですか?」
『普通は男を皆殺しにするのが民族の滅亡だが、この時は女でも容赦なくやっちまったようだぞ』
「よほど腹に据えかねることがあったんでしょうね」
朝鮮半島では遺伝子調査から西暦一世紀と六世紀に二度の絶滅(男系断絶)があったことが知られている。それが一三世紀も起こった世界線があるなんて……。
『そのためにマルコ・ポーロの東方見聞録では「黄金の国ジパング」ではなく、日本はモンゴルをもしのぐ「最凶の軍事国家ジパング」として西洋に伝わることになる。そのせいで西洋では東へ行くほど敵が強くなっていく魔界という認識が生まれるんだ』
「それは、どういうRPGですか?」
『大航海時代になると西欧列強は、それを再認識するハメになる。反対に日本を刺激して海外に興味を持たせたせいで、太平洋や北アメリカ大陸でねじ伏せられていくぞ』
「太平洋だけでなく、北アメリカ大陸も……ですか?」
『そこは順を逐って説明する。日本は大航海時代になると植民地獲得競争に参戦して、カムチャッカからオーストラリア、ニュージーランド、更にはハワイや北アメリカ大陸の西海岸までを版図にした巨大軍事帝国を築いていくんだ』
「その土地にいた先住民は、どうなったんですかね?」
『日本はいきなり支配したりしない。こちらの世界線でも、まずは日本人街を作って交易してただろ。あちらの世界線でも同じだ。先住民には先住民としての暮らしがある。それが優先で、一緒になりたいと言われれば取り込んでいく。もちろん敵対してくれば徹底的に叩く。交易で身勝手や不正が見つかっても徹底的に叩く。それを繰り返すだけだ』
「こちらの世界線では北海道や台湾が、先住民に断りなく一方的に日本の領土化してませんでしたっけ?」
『それは近代化社会でできた国際ルールの中でのことだ。あちらの世界線では北アメリカの例がいいな。西海岸にいくつか日本人街を作るが、あまり内陸まで勢力を広げてない。そこには先住民がいるんだ。その先住民たちが日本や西欧列強を真似て種族同士がまとまって連合国を作るようになる。その中に日本とまとまりたい部族がいれば、そこを取り込んでいくだけだ。だが、アメリカの独立によって、この動きが一気に変わっていく』
「何が起きたんですか?」
『焦土作戦だ。イギリスから独立したアメリカが、すぐに西部開拓の名のもとに先住民の殲滅作戦を始めたんだ』
「あまり聞かない歴史ですね」
『今のアメリカにとっては都合の悪い歴史だから、あまり触れないようにしてるんだ。これはこちらの世界線でも国際問題になって、イギリスがアメリカを止めるための懲罰戦争を起こしている。もちろん、あちらの世界線でも起きてるぞ』
「そこに日本も関わるんですか?」
『その通り。話を聞いた日本も、義憤からアメリカ征伐に乗り出すんだ。北アメリカ大陸の真ん中には、先住民たちの作った連合国がある。そことイギリスと日本が組んで、アメリカを押し返すことに成功するんだ。それ以来、アメリカ合衆国は東海岸と五大湖南岸のみの国になってる』
「他の国はアメリカに何も言わなかったんですか?」
『不快に思ってた国もあったようだが、ヨーロッパではナポレオン戦争が起こされていた時期だ。そのせいでアメリカどころじゃなかったんだよ』
「フランスは戦費を稼ぐために、むしろアメリカと積極的に交易してましたからねぇ」
『こちらの世界線では、アメリカの先住民には不運な時代だったな。だが、その先住民には、西にある海の彼方から来る「白き兄」の伝説がある。この時以来、北米の先住民たちは日本を「白き兄」として慕い、伝統的に大同盟を組む関係となっていくぞ』
「そこだけを聞くと、良い世界線のように聞こえますね」
『とんでもない。あちらの世界線は戦争に明け暮れて、こちらよりも全体的に技術発展が遅れてる。せいぜい核技術が進んで、高速増殖炉や核融合炉の開発に成功してるぐらいだな。おかげでエネルギーの八割は原子力に頼ってるが、その分だけ核廃棄物の問題は深刻になってるぞ』
「それで戦争に明け暮れてるとなると、核兵器問題も深刻そうですね」
『そう思うだろ? ところが、あちらの世界線では核兵器は開発されたが、一度も戦争で使われたことがないんだ。核実験で力を誇示することはあったが、二〇二〇年には核兵器の全廃に成功している。そこだけは、こちらよりも良い世界だ』
「何か、複雑な感じですね。こちらより技術発展が遅れてると言いましたけど、どのくらいですか?」
『二〇二三年の今、こちらの一九六〇年代の技術力で、一九七〇年代半ばの暮らしをしてるとイメージすればいいぞ』
「それだとコンピューターはまだですか?」
『トランジスターで動くコンピューターの全盛期だ。だが、IC──集積回路の技術が育ってない』
「それ、起こり得るんですか? トランジスターの回路を基板にプリントして、コンパクトにまとめるだけですよ」
『そこで大掛かりな開発詐欺事件があったせいで、投資家がICの開発に金を出さなくなったためだ。まあ、こちらの世界でも似たことをやらかした日本企業はあったが、投資家に不信感が広がる前にマイクロプロセッサーの開発成功があったからな。そのマイクロプロセッサを一つの回路にまとめるために、ICからLSI──大規模集積回路の開発競争へと進んで行くんだが……。あちらの世界では、その流れがまだ起きてないんだ』
「とすると、こちらより半世紀以上遅れてるんですね」
『そりゃあ、その詐欺事件が起きたのが二〇〇五年だからな。コンピューター関連は六〇年、それ以外は五〇年遅れてると考えると、だいたいの暮らしがイメージできると思うぞ』
「宇宙開発はどんな感じですかね? 五〇年遅れなら月に到達してますか?」
『いや、ようやく人工衛星が打ち上げられたレベルだ。まだ月には到達してないし、惑星探査となると何も進んでない』
「軍事費に予算を使ってるのなら、ミサイル開発でロケット技術が進んでると思ったのですが……」
『それを制御する電子技術が大きく遅れてるから、限界はあるさ』
「ところで、あちらの世界線では戦争に明け暮れてるといいましたが、どこと戦ってるんですか?」
『共産主義だ。国は持ってないが中国、朝鮮、ロシア、アメリカなどに共産系の武装勢力がいて、テロを仕掛けてるぞ……』
「それは終末戦争ですか?」
『そういうものじゃないな。ただの悪あがきだ』
「ところで日本が海外に土地を持ってると考えると、日本の農業というか、食料自給率はどうなってますか?」
『海外の土地は関係ない。あちらの世界線では関東地方には一度も幕府が置かれなかった。そのおかげで関東地方──というかこちらの東京、千葉、茨城は現代に至るまで大きな都市開発が行われず、北海道以上の穀倉地帯になってるんだ』
「関東平野で農業が行われてるんですか?」
『そうだ。関東地方は稲作には最高の土地だからな。それに、こちらの世界線ではカリフォルニアやオーストラリアでもジャポニカ米が作られているが、そこは本来の降水量では稲作には向かない土地だ。そもそも日本人好みの米は日本の気候でしか作れん。それに北海道と関東地方のおかげもあって、日本本土の自給率は一三三%だ。余った分の食料は、輸出よりも海外領地に運ばれる感じだな。反対に海外の領地からは、肉や果物が運ばれてきている。もちろん農産物よりも、鉱物資源の方が多く運ばれてきてるがな』
「経済については、どんな感じですか?」
『そこは、あまり気持ち良いものではないぞ。こちらの世界線では地中海沿いのヴェネチアで金利経済が発明されために、ヨーロッパで貧困が始まってる。そのあとレプティリアンに魂を奪われた銀行家がスイスに移り住んで、世の中を裏から支配していく流れだ。だが、あちらの世界線で金利経済を発明するのは堺の商人だ。そのせいで貧困が始まるのは大阪の市民からだな。そしてレプティリアンに魂を奪われた銀行家も堺に集まるため、日本でディープステートのような存在が暗躍する世の中になる』
「神の国である日本で、レプティリアンが暗躍するんですか? もしかして、あちらの世界線の日本は神の国ではないんじゃ?」
『そんなワケあるか! 日本はあちらの世界線でも神の国だ。ただし、こちらの世界線以上にレプティリアンに好き勝手されて、日本の地獄化が進んでる。今は毎年二〇万人近くが自殺するディストピアだ。しかも日本本土の人口は、わずか六千万人しかいないのに……だぞ』
「日本の人口は、こちらの半分なんですか?」
『海外の領地を含めれば一億四千万人だが、本土だけに限れば……な。ついでに世界の総人口は、二〇二三年時点で三三億人だ』
「あれ? 昨年のダウジングでは地球人口は三四億人でしたけど、第三次世界大戦が始まったんですか?」
『違う。コロナのパンデミックだ。こちらの世界線よりも医療技術が低いせいもあって、ひどい状況になってる』
「あちらでもコロナ・パンデミックが起きてたんですか? こちらと同じ二〇二〇年からですか?」
『いや、昨年──二〇二二年の五月からだ』
「昨年のダウジングよりもあとですね。こちらでは三年間で七百万人が亡くなりましたけど、あちらではわずか一年で一億人ですか?」
『いや、一年で約八千万人だが、こちらとは被害の桁が違うな』
微妙に時期はズレてるけど、すべてのパラレルワールドでコロナ・パンデミックが起きてるのだろうか。
「自殺の話に戻しますけど、どうしてそんなに自殺者が多いんですか?」
『純粋に経済格差が原因だ。それと徴兵制だな。そして自殺してるのは貧困に苦しむ市民じゃなくて、世の中のエリートを気取ってる高学歴の者たちだ』
「貧困が自殺の理由じゃないんですか?」
『あちらの世界線では貧困はあっても、それで生活苦にはならないように、国や自治体が最低限の衣食住を与えている。だから貧しくても、それを甘んじて受け入れるなら、あちらの世界線にある日本は優しい世の中なんだよ』
「ベーシックインカムがあるんですか?」
『違う。配給制度だ。日月神示の言う「与える政治」とは少し違うがな』
「配給というと、全員分用意しなくちゃいけませんよね?」
『そんな必要はない。必要になった人が配給を受け取りに行くだけだ。配給所の窓口は基本、年中無休。受け取れる配給物は、食料は数日分の米と野菜、服なら季節ごとに年四回──これにはサイズ別に用意されてて、靴や下着もある。必要がなければ、受け取らなければいい。電気ガス水道も最低レベルの基本料金は無料だ。使いすぎなければ、まったくお金がなくても生活ができる。あと銭湯も公衆衛生的な必要から週二回は無料で利用できる。学校も公立なら中学までは無償で通えるし、成績が良ければ大学院まで無償で進める。教科書や制服、文房具の支給もある』
「けっこう充実してますね。あちらの世界線の財務省は、抵抗してませんかね?」
『あちらの世界線では大蔵省だな。そいつらが抵抗してるから、生きるのにギリギリの配給しかしてない。だから「与える政治」とは少し違うと言ったんだ』
「世界線は違っても、あの組織の性格は変わらないんでしょうかね?」
『とはいえ、日月神示では与える政治をすれば、みんなが働き出すとあるだろ。お金がなくても生きていけるなら、誰もがリスクを考えずに好きな仕事に挑戦したり、売れなくても好きだけで続けることができる。我慢してまで誰かの下で働く必要なんかないんだ。歌うのが好きなら、街角で歌い続けるのも自由。あとは周りが、それを騒音と感じるかどうかだ』
「それでは稼げない人が増えませんか?」
『そこは世の中が、ちゃんと対価を払うかどうかだ。まあ、配給がギリギリ生きられるレベルに抑えられてるから、対価も微々たるものだけどな。そのせいで、あちらの世界線は経済的な中間層が育ってなくて、自由を取るか豊かさを取るかの二択になってる。それがエリートたちの自殺の引き金にもなってるから厄介なんだ』
「そういえばこれ、自殺の話でしたね。配給は充実してるのに自殺が増えるのは、どうしてですか?」
『あちらの世界線ではエリート層は失敗したら、たちまち信用を失って身の破滅を招く厳しい世界だからだ』
「再挑戦できないんですか?」
『エリート層全体が目先でしか物を見られない人たちだから、一度でも失敗したら、それが実績となって終わりだ。それどころか徴兵されて職場から離れたら、それで帰る職場を失う若者も大勢いる。徴兵は国民の義務だが、上級公務員や公立校の教師、医者になれば徴兵は免除される。それに失敗して徴兵で職場を離れたのだから「人生の管理に失敗したんだ」って理屈の、脳の腐った経営者が多すぎるんだよ』
「それでは世の中に新しいものは出てきませんよね?」
『たしかにそれが技術進歩が遅くなってる理由だが、そこは大学の出番だ。新しい概念や新機軸の技術は学生から大学院生の時代に徹底的に研究開発しておく。学生のうちは、まだエリートではない。だから失敗が許されるのは大学にいるうちだ。徴兵も学生のうちに済ませておけばいい。だが、卒業して世の中に出たら、それがいっさい許されなくなる』
「なんか変な理屈ですね」
『だから社会的に出世したエリートは、学生時代に開発したものが世の中で大売れした人か、何も挑戦せず、責任から逃れ、とにかく今の地位から落ちないように黙々と日々を送ってきた人のどちらかなんだよ』
「それもまた極端ですね」
とはいえ、こちらの世界でもIT長者の多くが在学中に会社を興して、そのまま仕事が忙しくなって大学を中退している。二〇一〇年代には「創業者が中退してない会社はダメ」なんて冗談が言われるほど目立っていた。表面だけ見たら、似てるかもしれない。
『そういう社会だから、エリートにとって失敗はたちまち身の破滅だ。お金がなくなっても配給を受ければ生活できるが、エリートだった人たちには配給を受けることに抵抗が大きい。小洒落た服装で配給所に並んだら悪目立ちするし、配給された服を着るのはエリートとしてのプライドが許さないだろう。また配給品は質が劣るから、特に食べ物には抵抗が大きいだろうな。米は政府備蓄米を古い方から配るので古々米や古々々米だし、野菜も農家や農協から自治体が譲り受けた市場には出まわらないキズ物や規格外品が中心だ。何を渡されるかは、当日、配給所に行くまでわからないし、自分では選べない』
「嫌いな野菜があって、受け取りたくなかったら?」
『その時は受け取らなければいい。そこは自由だ。ただし、その場合は翌日の配給も受け取れなくなる。そもそも貧しくて配給を受け取る人に、選択できる余裕があるのかって話だ』
「それもそう……ですね」
『それに加えて、あちらの世界は年収の格差が大きすぎる。緩衝エリアとなる中間層がほとんどいない。そのため世の中に鬱憤を溜めている人が大勢いて、そいつらが不満のはけ口となる生け贄を求めている。それを提供するのがマスメディアだ。エリートから地に落とされた者は、格好の餌食にされる。マスメディアが誇張して煽りまくって、そこに不満を持つ人たちが群がるように仕向けるんだ。個人にプライバシーや人権がなければ、メディアに良心もモラルもない。こちらの世界線では一九六〇年代から七〇年代のテレビや新聞がそんな状態だが、あちらの世界線では、まさに今がそのレベルだ。そのせいで標的にされた人が新しい境遇を受け入れたり、何とか再起しようと自分なりのやり方を見つけて働き始める前に、メディアの悪意などで自殺へと追い込まれていくんだ』
「その結果が毎年二〇万人近くの自殺ですか。まだネット社会は生まれてないけど、そのせいで悪質なマスメディアに踊らされてる腐った世の中ですね」
『腐ってるのはマスメディアだけじゃない。要らぬお節介を焼く偽善者たちだ。配給で生きるのに困らないから、お節介焼きを仕事にする人たちが増えるんだ』
「それも仕事になるんですか? 一種のNPOですね」
『マスメディアに標的にされた元エリートの中には、騒ぎが止むまで引きこもろうとする人が多い。身を守るためには当然だよな。ところが、あちらの世界線では世の中がそれを許さない。お節介焼きを仕事にしてる人たちが理解者を装って、逆風が吹き荒れる世の中へ無理やり引きずり出そうとするんだ』
「なんで、そんなことを? ダメだって、わからないんですかね?」
『仕事でお節介焼きをしてるんだぞ。その中には自制心よりも自己アピールしたい欲求が勝って、要らぬお節介をするバカヤローが出てくるんだ。それで精神的に追い込まれた元エリートが自殺したら、マスメディアはお節介を焼いたバカヤローを標的にする。そういう悪循環さえなければ、貧しさを受け入れれば優しい社会なのだが……』
それはもう何というか……。
まさにディストピアである。
「ところで、すっかり聞き忘れましたけど、岡山幕府(仮)の世界線に迷い込んだら、何か気づくことはありますかね? 多賀城幕府の世界線の場合は、言葉や文字が通じないと聞きましたけど……」
『そうだな。まず服装で気づくだろう。貧しい人たちは国が配給してる国民服を着てるから、場所によっては、まるで太平洋戦争中の日本にでも迷い込んだと思うかもしれないな』
「ああ、なるほど。配給されるのは国民服ですか」
『そうだ。着用は義務ではないが、生活に余裕がないから、その服で済ませてる人が多いんだ。農村へ行ったら作業着として着てる人が多いぞ』
「国や自治体が配給してるので、誰でも受け取れますもんね。言葉の違いどうですか?」
『ほとんど通じるぞ。物の名前で苦労するとは思うが、方言の違いよりは聞きやすいと思うぞ』
「文字に違いはありますか?」
『カナにいくつかの異体字があるが、ほとんど大差ない。異体字も前後からの類推で、すぐに読めるようになるだろう』
「お金はどうですか?」
『これは一番違和感がないかもしれんな。もう間違い探しのレベルだ。ただし日本の庶民は貧しいから、物価は三分の一だと思えばいい。だけど配給があるおかげで貯蓄する必要はないから、意外と庶民の消費活動は活発だ。ただし、そのレベルは推して知るべしではあるが……』
「最後の質問ですが、あちらの世界線でも日月神示は降りてますか?」
『そりゃあ三千年に一度の岩戸開きだ。降りてるよ。しかも、あちらの世界線群では上──エリート層の汚れがひどすぎて、第二次世界大戦の岩戸開きでは一つも成功した世界線がない。そのため日月神示も六〇巻以上も降ろされてる』
「……それ、読みたいですね。岩戸開きの進み具合は、どんな感じですか?」
『岩戸開きは始まってるが、次元上昇がまったく始まってない。一応は第二の岩戸までは全開に開いてるのに、最初に通過するはずの第五の岩戸には、まだ突入すら始まってないんだ』
「日月神示にある『子の歳真ん中にして前後十年が正念場』の子の年は、あちらの世界線でも二〇〇八年ですか?」
『そうだ。だからこちらの世界線と同じように自殺者が増えてるんだ』
「年間二〇万人の自殺者って、そのためのものだったんですね。その期間は終わってますか?」
『どうなんだろうなあ? 二〇一八年以降も自殺者が減ってないのは、引き続いてタメシの前半の五年になってるからだろうか。だとしたらコロナが後半の五年かもしれない』
「第三次世界大戦は起きないんですかね?」
『あちらの世界線は日本が世界の覇権国家だぞ。第三次世界大戦を起こす必要なんかないだろ。共産主義者たちのテロがどうなるか……ぐらいだろうなあ』
「あちらの世界線では、第三次世界大戦が起こらない可能性があるんですか。こちらの世界線では、コロナが前半の五年で、後半は第三次世界大戦なのでしょうかねぇ?」
『そういう話は流れてるが、本当のところはどうなんだろうな? 悪に邪魔されないように、地上の神には未来の予定までは詳しく伝えられてないから、そこは何とも答えられん』
世界線によっては、第三次世界大戦が起こらない世界もあるようだ。そこで起こる終末戦争とは、テロとの戦いなのだろうか。
『今回も、このあたりでいいかな』
「そうですね。また長々とありがとうございました」
ということで、二回続いたパラレルワールドの話題はここで終わりである。




