第50話 武者修行に来た魂について聞いてみた
これは第八話で扱ったワンダラーの話の続きである。
現在、地球の神様から見て魂の八割以上は正しい手続きを踏まずに地球へやってきた、いわば不法移民の魂である。そこからグループのわかっている『捕囚された魂』と『悪魔の魂』を除いても、全体の七割以上はワンダラーという分類になっている。これは地球の神様が正確に把握できてない魂だ。ゆえに全体の三分の二を超える数でありながら、どうしても十把一絡げの『ワンダラー』として扱うしかなかった。
ところが、前々から守護神様から「そのワンダラーの中にも、地球外の神の器が大勢いる」という話は聞いていた。たまに『武者修行に来た魂』と表現してきた存在だ。ところが、これまでのダウジングで『神の器』と思ってた人が、実は『武者修行に来た魂』と判明するケースが出てきている。
それついて数か月前から守護神様が語りたがっていたので、この機会に触れてみたいと思う。
『今の地球には、大勢のワンダラーがいるのは知ってるよな?』
「知ってますよ」
『その中に、地球外の神の器がいるのも知ってるよな?』
「はい。それは教えてもらいました。仮に『武者修行に来た魂』と名づけて扱ってる魂ですね」
『実はな。その武者修行に来た魂と正規の神の器、俺にはほとんど区別がつかないんだ』
「……ん? それは、どういうことですか?」
というやり取りで、今回の話が始まった。
『まず過去世が地球外の魂がいるよな。俗にスターピープルとか、スターシードと呼ばれてる魂だ』
「私も、その一人ですよね」
『その通り。きみの場合は地球へ連れてこられて、地球の神々から守護神として俺が充てがわれた。典型的なスターシードだ』
「ちゃんと役目を果たせてるのか、まったく実感できてませんけどね」
『安心しろ。連れてこられた何十人のうち、一人でも果たしてくれれば御の字だ。評価は今するものじゃない』
「そう……ですか?」
『で、話を戻すが、きみの場合は魂だけが地球へ連れてこられたが、世の中には担当する守護神に連れられて地球へ来た魂も多いんだ』
「それが『武者修行に来た魂』ですよね?」
『いや、地球に来ただけでは「武者修行に来た魂」とは言わん。今の地球は守護神の数が足りない。だから守護神と一緒に修行に来てくれるスターピープルは、地球の神々からすれば神の器の数を増やす意味からも喜んで迎え入れたい存在だ。神の器なら地球の神々も対応できるし、何よりも地球に外からの新しい風を持ち込んでくれるかもしれないからな』
「でも、問題があるんですよね?」
『そうだ。今の地球では正規の手続きを踏まず、地球の神々には無断でやってきてる魂が多いんだ。無断でやってこられると地球の神々からは、存在を把握できないだろ。それに加えてもっと厄介なのは、ほとんどの守護神が自分が無断で来てるとは知らないことなんだ』
「知らない? そんなことがあるんですか?」
『あるどころか、それがスターピープルの大多数なんだ』
「どうして、そんなことに?」
『それは「地球の神々には惑星を統治する能力も資格もない」として、格下と見てる天界の神たち──プレアデス系の神々が多いからだよ』
「それはプレアデス人の強硬派や主戦派ですか?」
『それは地球から見た言い分だな。今の地球はオリオン人やレプティリアンによって、地獄の惑星にされてる。それに地球の現場にいる国津神たちが、必死に働いて何とかしようとしてるのも外にいる神々にもわかってる。ところが上の天津神たちが不甲斐なさすぎるんだ。すでに悪魔の浄化作戦に三回も失敗してる。今は三千年に一度となる四回目の浄化作戦──いわゆる岩戸開きのアセンションを進めてるだろ。それだって自分たちでやってるんじゃない。外からの治安維持活動頼みだ』
「そんなに地球の状況はひどいんですか?」
『今の地球の状況を、内乱を起こしてる国だと思って考えてみろ。地球の神々を名乗る元からの政府はあるし、一応は統治機構みたいなものはある。だが、今はレプティリアンの反政府軍が好き勝手に暴れてるのに、政府は議会がグダグダやってて政府軍はまともに動けない。警察と自警団に対応を丸投げしてるような状態だ』
「もしかして、今の日本と自衛隊の関係よりも悪い感じですか?」
『もっと悪いぞ。今の地球は天津神がほとんど何もしてないので、悪神であるオリオン人が地球の支配者を気取って治安維持に軍を出してるんだ』
「有名なところだと、ニュルンベルクの天文事件ですか?」
『それ、有名か?』
これは西暦一五六一年四月一四日の夜明け前、ドイツ、ニュルンベルクの城門の上で起きた大空中戦事件だ。
東から飛んできた何百もの飛行物体が城門の上で激しく光線を撃ち合う空中戦を繰り広げ、撃ち落とされた機体は地面に落ちて光となって消えていったという怪現象である。
『最近でいうなら、第一次世界大戦がオリオン人のからんだ戦争だ。前の年にレプティリアン勢力がアメリカ・ドルの通貨発行権を手に入れて、世界経済を牛耳る下地ができた。それを指揮する地下基地がバルカン半島で見つかったんだ。その情報をつかんだオリオン人は、地上工作員として地球人として生まれさせてたオーストリア皇太子のフランツ・フェルディナントを現地に偵察に行かせたんだ』
「まさか、それでサラエボ事件が起きたんですか?」
『その通り。待ち構えてたレプティリアンが何人もの人の心を乗っ取って、不自然な行動をさせ続けた。その結果が、第一次世界大戦の勃発だ』
「サラエボ事件にしろ第一次世界大戦にしろ、あまりにも謎が多すぎますもんね。午前中の暗殺に失敗して、食堂だったか喫茶店だったかで愚痴り合ってた犯人グループの前に、道に迷った皇太子の車が来て停まっちゃうんですから、偶然にしては、あまりにもデキすぎです。それを見つけたプリンチィプがすぐさまピストルを持って駆け寄って暗殺……ですし……」
『この頃の地球の上の神々は「大規模な浄化作戦が始まる前だから」と、力を温存するかのように何もしなかった。というかそれ以前から、大老智や悪狐のような別勢力が地球に足場を築こうと出張ってきても、何もしなかった。それなのに第二次世界大戦では結局、外からの治安維持活動が入る前に、また失敗してやり直しだ』
「それは、さんざん……ですね……」
『そんな体たらくぶりを地球の外から見てたら、地球の神にはマトモな統治能力がないと見る神々がいるのもわかるよな?』
「立場が違うと、物事の見え方も変わりますもんね。外交で国として認められてない感じですかね?」
『認める認めない以前に、認知すらされてない感じだ。だからプレアデス系の中には、地球の神々相手に筋を通してやる義務も義理も価値もないって考える神々がいるんだよ』
「それは存在すら認めてないってことですか?」
『残念だが、その通りだ。だから地球にいるレプティリアンだけでも始末するために、「地球ごと壊してしまえ」なんて過激思想を言う連中もいるんだよ』
「地球から見ると過激に聞こえるけど、宇宙から見たら地球なんて、ありふれた惑星ですもんね。しかも悪魔にすっかり汚染された惑星となると……」
何とも悲しい話である。
『で、ここからが話の本題──多くのスターピープルが地球の神々には無断で来ていながら、担当する守護神がそのことを知らない理由だ』
「そこが謎なんですよ。どうして、そんな現象が起こるんですか?」
『理由は地球の神々を認めてないプレアデス系の神たちが、地球での修行に適した肉体を仲介するシステムを作ってることなんだ。要するに、仲介する神がいるんだ』
「仲介する神様……ですか? 神様の不動産業者みたいな?」
『そのたとえはピッタリすぎるな。「お客さん。地球特有の貧乏暮らし。体験するなら、この物件がお薦めですよ。え? この機会に借金地獄も体験しておきたい? お客さんもチャレンジャーだね。それなら、こっちの物件はどうだい?」ってな』
「なんですか? いきなりの小芝居は!」
『松の代になったら、地上から貧困なんてものがなくなるぞ。今の地球でしか体験できないから、やってきた魂の中には今のうちに体験しておきたい物好きも多いんじゃないかと思ってさ』
「それ、今回の話と関係があるんですか?」
『ないっ!』
あ、キッパリ言い切った。
『でもまあ、今の地球は経験値のボーナスタイムなのは知ってるよな?』
「それは、もちろん。それを目当てに、大勢のワンダラーが地球に来てますから」
『それを利用したいのは、プレアデス系の神々も同じだ。だけど地球の神々を認めてない連中は、自分の担当する魂や守護神を地球の指導神に預けようとは考えない。存在を認めてないからな。そうなると指導神は足場にする惑星に居るまま、担当する魂を地球へ送り込むことになる。とはいえ、そのために指導神が自分のいる惑星を離れて地球まで来て、修行に適った肉体を探しておくのは時間的にも難しい。となると……』
「それで肉体を仲介する神様が必要になるんですね」
『その通りだ。それ以外はすべてプレアデス系の生まれ変わり──魂の育成システムのルール通りだ。上で指導してる連中は地球の神々に無断でやってるのに、現場の守護神がちゃんとルールを守ってると思う理由。これでわかるだろ?』
「理屈はわかりました。でも、確認は取れないんですか?」
『そりゃあ、わざわざ上まで問い合わせて地球のルールで生まれてきてる魂か調べることは可能だが……。正直言わせてもらうぞ。それは相手の守護神に失礼だ。あっちはルールを守ってると思ってるし、こちらからの問いかけにも真摯に答えてくれてる。それなのに、それでも疑って、手間ひまをかけてまで上に問い合わせるのかってな』
「それはもう余所者差別ですね」
『そうなんだよ。だから、あっちがルール通りにやってるというか、守護神の間のやり取りで怪しい素振りがないと、俺からはワンダラーかどうかの判断ができないんだ』
「たしかに、それは厄介ですね。違いがわかる手がかりはないんですかね?」
『少しだけあるぞ。運命の中身を考えるんだ。少人数では完結しない運命を持つ人は、間違いなく正規の手続きを踏んで生まれてきてる』
「少人数で完結?」
『指導神が担当するソウルメイトがいるだろ。その中で完結できる運命なら、指導神の裁量で何とかできる。だが大勢が関わる運命となると、さすがに地球の神々にも協力してもらわないと不可能な話だ』
「なるほど。とすると『因縁ミタマ』でも、自己完結してる場合もありますね」
『そうなんだよ。まあ、運命の中身からの類推だから確実ではないし、まして運命が設定されない霊格値の人たちだと取っ掛かりもないけどな』
「なるほど……」
言われて人物ダウジングの記録を眺めてみる。
ベートーヴェンや尾崎豊などは、輪廻転生の総仕上げで因縁ミタマにならなかったケースだから除外。わざわざ地球で最後の経験値稼ぎをする必要がないもんね。
南方熊楠も神様にならずに、地上に生まれ続ける道を選んでる人だから、この人もレアケースとして除外だろう。
ソウルメイトとわかってる宮沢賢治と中原中也、それから悪狐に利用されてたババ・ヴァンガは、運命から考えると武者修行パターンの可能性があるのか……。
「ところで守護神様の間で『怪しい素振りがないと』なんて言ってましたけど、怪しく感じることはあるんですか?」
『あるぞ。魂が守護神に連れられて地球に来てる場合は、守護神が無断ということを知らないケースが多い。だが、仲介の神だけでなく、守護神まで地球で待ってる場合は、さすがにその守護神たちは「これは地球に無断でやってるな」とわかってると思うぞ』
「そんなケースもあるんですか?」
『日本の観光地なのに、外国の業者が土産物屋からホテルどころか観光バスまでを経営して、自国から来たツアー客をその中だけで回してる国があるだろ』
「現地には金を落とさない、迷惑な商売のやり方ですよね」
『それと同じだよ。さすがに守護神が「それに気づかないことはない」と俺が言いたい理由もわかるよな?』
「倫理的な問題ですもんね。それでも守護神様を任される神様たちは、どんな気持ちで受けてるんでしょうね?」
『さてな。そこまでは知らんよ。上から命令されたから仕方なくかもしれんし、今の地球の状態を見たら「俺がやらなきゃ」という使命感があってのことかもしれん。あくまで地球の神々にとっては無断だが、他は宇宙のルールに従ってるんだから厄介なんだ』
何とも、ややこしい話である。
「いろいろ問題はありますけど、連れて来られた魂たちは、地球ではちゃんと修行してるんですよね?」
『そうだ。そこは地球の神の器と何も変わらん。だから「武者修行に来た魂」の可能性はあっても、今まで通り「神の器」として扱ってもいいと思う。そこは、きみ次第だ』
「厳密に考えたら知っておきたい気持ちはありますけど、『神の器』と何も変わりないなら、人物ダウジングなどは今のままで問題はないでしょうね」
気にはなるけど、無理に知る必要はない問題かもしれない。
「最後に、武者修行に来た魂は、どのくらいの数がいるんでしょうね?」
『地球の神々が把握できてないんだから、そこは知りようがないよ。正規の神の器と合わせても三割は超えないから、せいぜい一割程度じゃないか?』
このあたりは推測するしかない。
「ところで、私もその一人である可能性は?」
『ない。これまでに受けたトラブルのいくつかは全国区だ。こんな規模のもの、地球の神々が関与しなきゃ起こらないぞ』
「……トラブルで証明するのは、やめて欲しかった……」
しくしく……。




