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第48話 著者の世界線移動について聞いてみた

 今回は著者(ちょしゃ)の身に起きた体験談である。

 問題に気づいたのは昨年(二〇二二年)一一月二七日。始めはPCの不具合だと思っていた。その不具合というのは、エアチェックした音楽がモノラルで録音(ろくおん)されるという現象だった。

 その前、一〇月上旬に録音した音響ファイルはステレオだった。ところが気づいた前の録音──一〇月二三日の分はモノラルになっていた。その時はモノラルとは気づかず、音が何となく(こも)って聞こえるので、あとで録音し直そうぐらいの気持ちでいた。

 ただこの時は、実際にUSBに差す入力端子に不具合が見つかった。ステレオジャックを差すプラグの奥で、金属部品が折れていたのだ。それがモノラル録音に変わった原因と思って新しい入力端子を買ってきたのだが、現象は何も変わらなかった。


 そこで周辺機器ではなくMacの設定が知らないうちに変わってると思って調べたが、何も見つからなかった。というよりステレオとモノラルを切り替える設定が消えていた。そこでアップル・コンピューターの技術情報サイトでステレオへの戻し方を調べたところ、

「MacOSおよびiOSは、元から外部入力はモノラル録音しかできない仕様になっております」

 と書かれていて……。

 ちょっと待って。マッキントッシュは昔から画像、映像、音響処理の機能を充実させて、クリエーターやアーティストたちに選ばれてきたOSだ。ウィンドウズではビジネス向けの汎用性(はんようせい)を高める一方で、たとえば表示サイズを変えると文字レイアウトが(くず)れるという不具合というか、質の悪さには目をつむっている。だが、マッキントッシュではそれは絶対に起こさないというこだわりがある。音響に関しても同じだ。

 著者は学生時代から、お気に入りの曲をエアチェックしてテープなどに録音してきた。マッキントッシュではライン入力でデジタル録音できたこともあり、一九九〇年代の(なか)ばからテープではなくPCに録音して、音響ソフトで音の大きさやノイズの調整や加工などをするようになった。最初からすべてステレオ録音だった。

 時代とともに入力ケーブルは赤白黄のビデオ端子からステレオジャック、USB端子へと変わっているが、実際に()()めた過去のファイルはどれもステレオ録音になっている。

 これは何かおかしいと思ってネットで調べていたら、著者と同じことをブログに書いてる人がいた。

 ある音響技師の人が、著者と同じように一一月に入った頃から入力がモノラルになってしまい、仕事に()(しょう)が出てるということだった。趣味である著者とは違い、仕事で遭遇(そうぐう)する不具合は問題だ。

 ところがブログへのコメントに「昔からモノラルでしか録音できないので、何かの間違いでは?」と書く人がいた。

 はたして仕事で使ってきた人が、そのような勘違いをするだろうか。

 いったい何が起きてるのかを考えると、「これは世界線を移動したのでは?」としか考えられなくなってきた。でも、過去に録音したファイルが今もステレオのままなのは……?

 と思っていた矢先、二〇二三年に入った一月九日、ステレオ録音だった音響ファイルの一部が、聴き返したらモノラルに変わっていたのに気づいた。このまま、すべてのファイルがモノラルに変わったら、非常に悲しく思うのだが……。


「守護神様。私、世界線を動いたんですかね?」

『現象を見る限り、その可能性は高いと思うぞ』

「確認はできませんか?」

『それは無理だ。(おれ)は魂が世界線を動いた場合なら動きを追えるが、中味の意識までは見られん。きみの意識が他の世界線にいる魂と中味が入れ替わっても、俺には気づく(すべ)がない』

「Macでステレオ録音できる世界線と、今のモノラル録音しかできない世界線の違いはわかりますか?」

『機械の中味も、俺には(さぐ)りようがない。というか、機械の中味なんか俺にはわからん』

「機械というか、プログラムだとなおさらですよね?」

『一応、俺は世界線を重ねて見ることができるから、ボヤけて見えるところから世界線の間にある違いには気づくことはできる。だが、違いに気づくのと、実際に意識できるほどの違いがあるのかは別の問題だ。音楽のデータファイルなんか、いい例だぞ。ほぼすべての世界線で同じものなどない。波形データを(かさ)ねると世界線ごとに各楽器の(かな)でる音の位相は数ミリ秒レベルでズレてるんだ。だから同一の波形を見つける方が大変だ。だけど、それをオーケストラの合奏(がっそう)として聴いた時には、「そんなの、わかるかーっ!」ってレベルの違いでしかない』

「音の位相はズレてても、ドの音はドの音程(おんてい)に違いがありませんものね」

 人間の感覚はけっこう高性能で、左右の耳に入ってくる一ミリ秒以下の位相差を読み取って、音がどこから聞こえてきたのかを知ることができる。だけど、和音の位相がズレて合成された波形がまったく違っていても、音から違いに気づくのは絶対(ぜったい)音感(おんかん)を持つ人でも不可能だ。

「とすると機械やプログラムに違いがあると気づいても、それが機能まで違うとはわからないと……」

『その通りだ。こういうことは、きみが作家だから何度か感じたことがあるぞ。世界線ごとの違いがあると、文章の一部がボヤけて見えることがある。だけどボヤけて見えたところが「昼食を()る」と「昼飯にする」で、意味も文字数も同じなんてことが多い』

「位相が違ってるだけの音楽ファイルと同じですね。時間をかけて丹念(たんねん)に調べれば明らかな違いの有無はわかってくるでしょうけど……」

『それは買いかぶりだ。俺には、そこまで調べられる知識も技量もない。だから「わからん」としか言えん』

「では、Macでステレオ録音のできた世界線と、できない世界線で、将来が変わるような影響はあるんでしょうかね? たとえばステレオ録音のできた世界線は第三次世界大戦は起こらないけど、できない世界線では起こるとか……」

『俺にはどの世界線がステレオ録音のできる世界線で、どれができない世界線かがわからんのだ。だから、その質問には答えられん』

「じゃあ、今もステレオで録音できてたファイルが残ってますけど、それとモノラル録音になったファイルが混在してるところから、ファイルも世界線を動いてるんですかね?」

『それも答えようがない』

「それならモノラル録音になったのは、ハードとソフト、PCとOSのどっちが変わったから……ぐらいはわかりますか?」

『そこもお手上げだ。でも、()いて言うなら、OSじゃないか? 物理的に変わったのなら、さすがにわかりそうなものだぞ』

「基盤や配線が違ってても、PCの動作は同じ可能性もありそうですけど……。どうなんでしょうね?」

『だから、俺に聞くなよ』

 今回の話題は守護神様にはわからないようだ。



 昨年あたりから、こういうマンデラ効果(エフェクト)現象のような大きな(なぞ)の変化に、意外と多くの人が遭遇(そうぐう)してるようだ。それでも、ほとんどの人は「気のせい」や「思いすごし」と自分を納得(なっとく)させて済ませてると思うが、それで仕事に支障が出てる人も散見(さんけん)される。

 急に車の操作方法が変わって、交通事故を起こした人もいるようだ。警察(けいさつ)は単なる操作ミスによる事故として片づけたが、本人としては事故の直前まで何事もなく運転できていたのだから()に落ちてないそうだ。この主張が事実なら、次に誰の身に起こるかわからないだけに怖い話である。

 さて、このような世界線の思わぬ移動現象。みなさんもこの一年以内に何か経験されているだろうか?

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