第46話 ロズウェル事件について聞いてみた
今回は宇宙論で有名なロズウェル事件と、それで有名になったグレイ型宇宙人に関する話題である。
ちなみに、この宇宙人は第九話の後半で触れた存在だ。
「守護神様。ロズウェル事件って、どうして起きたんですかね?」
『理由は単純だ。司令官がアホだった。以上──』
「身も蓋もない結論ですね」
『あの事件はどんなに高度な文明を持った宇宙人でも、ヒューマンエラーは避けられないという良い教訓になるぞ』
「それは興味深い話になりそうですね」
『その前にロズウェル事件を起こした宇宙人の呼び方だが、どうしようか。日月神示では悪神と呼んでいるし、キリスト教の聖書などでは昔からオリオン人と呼んできた。それに合わせる手もあるが……』
「話題が話題ですから、今回はグレイと呼んだ方が伝わりやすそうですよね。グレイの語源はわかりませけど……」
『わかった。それではグレイでいこう』
他にも米軍が使っているイーブ人という呼び方もある。ただし、これは地球外生命の意味だから、地球外の知的生命体全般の呼び方になってしまいそうだ。
『さて、グレイが宇宙へ進出を初めたのは八〇兆年の大昔だ。そこからじっくりと勢力圏を広げて、今では宇宙の四分の一を支配していると自称している』
「そのあたりはマチルダ・エルマックロイの『エイリアンインタビュー』にも書かれてる内容ですね」
『そのグレイの遠征軍が天の川銀河への侵攻を始めたのが今から一万年前──紀元前八千年頃のことだ。遠征軍は地球から見て北斗七星の柄から二番目の星──ミザルのあたりから侵入してきた』
ミザルはすぐ隣にアルコルという小さな星がある。別名『死兆星』と呼ばれる星だ。
『遠征軍が最初に入ってきたのはペルセウス腕だ』
ペルセウス腕は天の川銀河で外から二番目にある星の帯だ。太陽系はその内側にあるオリオン腕よりも、少し内側にある糸状に伸びたフィラメント状星雲の中にある。
『天の川銀河で最初に侵略被害を受けた文明はニビルだ』
「ニビルというと、シュメール文明を研究してたゼカリア・シッチンが、太陽系にある公転周期三六〇〇年の未知の第一二番惑星と言ってるものですか?」
『その通りだ。だが太陽系には、そんな惑星は存在しない』
「それで、滅ぼされた本当のニビル文明は、地球へ逃げてきたんですか?」
『たしかに一部の難民がシュメール時代の地球へ逃げてきた。ところが、その時の地球はすでにグレイに侵攻されてたんだ』
「地球はすでにグレイの植民地だったんですか?」
『植民地にはなってないが、地球はカテゴリー三の地獄へ落とされていた。そこへ天の川銀河を防衛しようとする銀河連合軍が来て、カシミール地方で最初の軍事衝突が起きたんだ。これがオカルト界隈で有名なオリオン大戦の始まり。地球はこの時に、その最前線になった』
「その話は第九話でも触れてましたね」
グレイは侵攻に先立つ数十万年前から、侵攻ルートを決める先遣部隊を出して調査に来ていた。地球にも四〇万年前から、たびたび訪れていたようだ。
その流れで第九話の時、守護神様は侵攻の事前工作で『レムリア文明が滅ぼされた』と見ていた。だけど、ダウジングで集まった超古代文明の情報とグレイの語った情報を突き合わせると、どうやら紀元前一万年より前のものは不完全なことが見えてきた。どうやら情報の断片を繋ぎ合わせただけで、地球を継続して観察してたわけではなさそうである。
そのグレイが天の川銀河への侵攻を始めたのが紀元前八千年頃。それで最初の被害に遭った中にニビル文明があったようだ。
『話をグレイの侵攻に戻すが、やつらの先攻部隊はほぼ光の速さで侵攻を続け、侵攻開始から約千五百年で天の川銀河の銀河平面に到達する。そこで進行方向を天の川銀河の中央に変え、そこから三百数十年かけて太陽系にやってきたんだ』
「紀元前六二〇〇年頃でしたっけ?」
『正確な時期はわからないが、太陽系に来たのは紀元前六一九二年以降だろう。やつらは太陽系を活動拠点とするために、ヒマラヤ山脈の西側──カシミール地方に前線基地を作るんだ。先攻部隊はこの基地に常駐する三千人を残して、その後も天の川銀河の中央へ向かって侵攻を続けている』
「太陽系は銀河交通の要衝にありますから、侵略者にとっても都合のいい場所にあったというわけですね」
『その通りだ。地球にとっては不幸だな。更なる不幸は紀元前六一七八年に起きた。外宇宙からの侵略に気づいた天の川銀河の連合軍が、カシミール地方に建設中の前線基地を急襲した。これがオカルト界隈や宇宙人論で有名なオリオン大戦の始まりだ。これを地上人が目撃した話が、のちにインド神話となるリグ・ヴェーダなどで語られることになる』
「襲われたグレイたちは、そのあと、どうなったんですか?」
『まず、基地にいた常駐部隊は全滅だ。そのため遠征軍本隊には全滅の知らせは届かず、紀元前五九六五年、かなり時間が経ってから来た後続の調査隊によって常駐部隊の全滅を知ることになるんだ』
「『エイリアンインタビュー』によると、その調査隊の中に、のちにロズウェル事件で生き残るエアルがいたんですね。で、グレイたちの侵略の方は?」
『当然、計画の見直しだ。太陽系に置く前線基地は小規模なものを小惑星帯に隠して監視を続け、迂回路として太陽から南へ約四〇光年ほど離れたゼータレティクル星に前線基地を置くんだ』
「宇宙人論によく出てくるゼータレティクル星ですか」
『で、一時的に太陽系が力の空白地帯になったのを良いことに、レプティリアンやオロチ、悪狐などの勢力が横取りしようと暗躍して来たことで、今の地球は非常に複雑で厄介な立場に置かれてるわけだ』
「なんとも迷惑な話ですよね」
『そして先に話したニビル文明からの難民だが、それから二千年以上経った頃に地球へ立ち寄り、すでにここは安全ではないと知ってすぐに立ち去っていくんだ』
「それがシュメール時代の話ですね」
『そこから話を一気に現代へ飛ばすぞ。まず、日月神示が最初に岩戸を開けようとしたのはいつだ?』
「一の御用は第二次世界大戦の頃ですね。結局は失敗しましたけど……」
『広島に原爆が落とされた一九四五年八月六日が、すべての条件がそろって岩戸開きが始まった日だ。そこから次々に岩戸が開かれ、一九五二年には松の代が始まる予定だったのだが、アメリカとソ連がすべてを台無しにしてしまった』
「トルーマンとスターリンのせいですかね?」
『当初は俺もそう思ってたが、米軍もソ連軍も日本に降伏を求めておきながら、頭っから戦争をやめる気なんかないんだ。戦争では降伏する側が相手の方へ出向いて早く──慣例的には日付けが変わる前に降伏と停戦の調印を済ませるものだ。だから太平洋戦争でも、日本はポツダム宣言を受け入れたら、その日のうちに降伏使節団を示す緑十字を付けた一式陸攻──停戦連絡機二機を米軍司令部のある沖縄に飛ばしてる。ところがアメリカは停戦する気がないから、その連絡機を何日もたらい回しだ。使節団はフィリピンのマニラへ行かされたあと、太平洋上の島々を転々と訪問して、ようやく一週間後に厚木基地で調印式を行うという約束を取りつけるが、アメリカはまったく準備ができてなかった。一週間どころか二週間近く経った八月三〇日になって、ようやくマッカーサーが厚木基地に降り立つが、まだ調印をしようとしない。そして過去の慣例とはまったく逆──勝者が敗者の元へ乗り込む形で、九月二日に降伏調印が行われたわけだ。しかもソ連はその間も日本の降伏を無視して、満州や千島列島で侵略を進めていく。アメリカもアメリカで、一部の潜水艦が停戦指示を無視して民間船を魚雷で沈め続けている』
「グダグダですね」
『これはドイツに対しても同じだ。ドイツも五月六日に降伏を受け入れ、日付をまたいだが七日深夜二時四一分、フランスのランス郊外まで出向いて降伏調印を済ませた。だからヨーロッパ諸国の多くは、この日が二〇一九年まで終戦の日だ』
「は? 二〇一九年まで?」
『イギリスが二〇二〇年に「国民が終戦を知ったのは翌八日だから、終戦は五月八日だろ」って一日ズラしたんだ』
「終戦から七五年も経って……ですか?」
『七五年経ったから見直したんだ。イギリスは日本に対しても連合軍と同じ九月二日を終戦の日としてたが、今は日本と同じ八月一五日が終戦の日だ。アメリカ国内でも歴史を見直して、時差の関係で八月一四日を終戦の日にすべきだという動きが出てきている』
「そんな歴史見直しの動きが出てるんですか……」
『そこでドイツ降伏の話に戻るが、アメリカとソ連はこの時の降伏調印を認めてないんだ。難癖をつけて停戦を二週間も無視して戦闘や爆撃を続けている。これは日本の時と同じだし、そのせいでドイツは二回も降伏調印を求められてる』
「ムチャクチャな話ですね」
『こんな連中が戦後の二大覇権国家になるんだぞ。これで岩戸が開けると思うか?』
「無理……ですね」
『そうだ。無理だ。だから一の御用は失敗した。こんなイカれた国が世の中を牛耳る世界が、松の代になれるわけがないからな』
「ところで、この話とグレイが、どうつながるんですか?」
『そう急かすな。天の神々が一の御用を進めた理由こそが、グレイの遠征軍本隊が太陽系に到着するからなんだ。それも天の神々が予測できないほど、愚かな司令官に率いられた遠征軍が……だ』
「最初の時も思いましたけど、辛辣な物言いですね」
『問題の遠征軍本隊が太陽系に到達するのが一九四七年だ。それが何の年かは、当然、わかるよな?』
「もちろん、ケネス・アーノルド事件やロズウェル事件の起きた年ですよね?」
『その通りだ。なぜ急に目撃事件や墜落事件が増えたのかというと、遠征軍の司令官が、先遣部隊や先攻部隊の報告をほとんど信用してなかったのが原因だ。本隊の中枢には根っからのグレイで固められている。だが、先遣部隊や先攻部隊に出されるのは、かつて征服された惑星の出身者だ。そのためどうしても偏見から格下に見られがちなんだ』
「『エイリアンインタビュー』で答えるグレイ──エアルの出身地も征服されたのち、六億年以上も遠征軍のパイロットとして働き続けているのに、今も一兵卒にすぎないみたいなことを語ってましたね」
『グレイは昆虫型の宇宙人の魂だが、エアル自身はどんな魂なんだろうな』
「私たちの知るグレイ型宇宙人の姿も『地球活動用』のドールボディという魂の入れ物で、中身はまた別の姿ですもんね」
『見た目は同じグレイでも、中身の魂が違う。そこで遠征軍の司令官は、自分の息のかかった直属の部下たちに地球を再調査させようとしたんだ。先攻調査隊にいたエアルは、その案内役ってところだろう』
「それで、どうして目撃事件や墜落事件が増えたんですか?」
『それを話す前に、最初に司令官のやった失敗から話しておこう。それは地球で第一次世界大戦を引き起こしたことだ』
「それもグレイが原因だったんですか?」
『世界大戦を起こそうとしてたのはレプティリアンだ。そのレプティリアンをグレイは「旧帝国」と呼んでいる。そのまま読むとプレアデス人や天の川銀河の連合軍のようにも読み取れるが、それは叙述トリックだな。地球を攻略する上で、あの頃はレプティリアンが一番の障害と感じていたのだろう』
「それはプロパガンダではないんですか?」
『侵略者でもグレイはカテゴリー三の文明だ。都合の悪い部分を巧みに触れないようにしてるだけで、今の地球人ほどウソはうまくないよ』
「それは……、なんか悲しいことを言われてるような……」
『それで遠征軍の司令官だが、本隊の到着に先立って、地球に潜伏してるレプティリアンたちがどのように暗躍してるか、何人かの地球人の体を乗っ取って探りを入れようとしたんだ。その中の一人が、よりによってオーストラリア皇太子だ。先攻隊の報告に目を通していれば皇太子が当時、どれほど世間から嫌われてるかを知って乗っ取り候補から避けたはずだ。それなのに、のこのこと暗殺者の待つサラエボへ出かけていって、道を間違えてプリンチプのいた喫茶店の前を通って暗殺されてるんだ。これが第一次世界大戦の引き金になったんだからシャレにならん』
「それ、天界の神様の描いてた岩戸開きのための道筋ではなかったんですか?」
『まったく違ったみたいだぞ。神々の計画では、バカは想定外だからな。そのせいで、その後の計画はグダグダだ。しかも大戦による混乱のドサクサで、レプティリアンによる金融支配や共産主義まで許してしまった。おかげで地球はただでさえカテゴリー一の惑星だったのに、一気に地獄の最底辺まで落ちていったんだ』
「でも、グレイが地球を支配するには、都合が良かったんじゃ?」
『それは逆だ。グレイは侵略者ではあるが、カテゴリー三の文明だと言っただろう。さすがにカテゴリー一の惑星は攻略できたとしても支配したくないんだ。そのために地球をカテゴリー一に落とした旧帝国──レプティリアンを排除しようとしたのに、それをいきなり失敗してるんだな』
「それは……ダメダメですね」
『で、本隊が到着した直後にも似たような失敗をやらかしたんだ。地球に住むきみたちには他の惑星を知らないから意外に思うかもしれないが、地球は宇宙の中でも地磁気や大気の活動が激しい惑星だ。先攻隊はその地球に合わせた装備で監視を続けてきたのだが、遠征軍の司令官は何も考えずに標準装備で地球を観測しようとしたんだ』
「地球の地磁気や大気の活動って、そんなに激しいんですか?」
『かなり激しいぞ。そこへ標準装備の宇宙船で飛び込んでみろ。晴れて穏やかな天気の日なら問題はないが、ちょっと荒れた日だと雷の放つ電磁波でセンサーが乱され、雷の直撃を受けようものなら制御が不能になる。ケネス・アーノルド事件は雷にステルス機能を壊されたせいでUFOが目撃された事件だし、ロズウェル事件もUFOが雷の直撃で操縦不能状態に陥って墜落した事件だ。遠征軍の司令官がその間違いに気づくまでの数年間に、グレイの宇宙船は世界中で不具合を起こして事故を起こしていたんだな』
「典型的なヒューマンエラーですね」
地球で墜落したUFOの中には、葉巻型の母船があるという話もある。
『どんなに高度に発達した科学文明でも、愚か者のやらかすヒューマンエラーは防げないわけだ』
「それで、グレイの遠征軍は今、どうなってるんですか?」
『なんだろうなあ。予定通り、そのまま天の川銀河の中央へ向かう……ということはしてないな。太陽系で一度二つに分かれて、一つはゼータレティクル、もう一つはヴェガに向かってるぞ』
「二つに?」
『中でもゼータレティクルにある惑星セルポには六五万人ものグレイが降り立ってる。ここは前線基地じゃなくて、もう立派な入植地だ』
「セルポというと、米軍が留学生を送ったプロジェクト・セルポという都市伝説がありますが……」
『それは半分事実だ。都市伝説では移動に片道九か月かかったとか、留学生は男一〇人女二人とか、いろいろ言われてるが、そのあたりはすべてウソだな。グレイの科学力なら、四〇光年程度なら一日もあれば移動できる』
「ワープするからですか?」
『そんな技術は存在しない。通常の超光速移動だ』
「超光速が通常って……。それが宇宙の常識なんでしょうかねぇ」
『彼らの移動は、行きに六日、帰りに三日かかっただけだ。地球内での移動に一日、宇宙飛行で一日、セルポに着いてから逗留先への移動に一日。それとセルポに降り立つ前に、検疫で三日間足止めを食らっただけだ』
「四〇光年の移動より、惑星の中での移動に倍も時間がかかってるんですね」
『それと留学生は男だけ四人だ。一九五二年にセルポへ行ってグレイの先進的な技術を学び、一九五四年には全員無事に地球へ戻ってきてる。都市伝説にあるような宇宙線障害もなく、四人全員その後も健康だったぞ』
この都市伝説も、一つ一つ理由を紐解くといい加減だ。
留学生たちは宇宙線障害で苦しんで亡くなったというが、最後の一人は二〇〇三年まで生きていた。帰国から五〇年だ。留学した時の年齢は不明だが、おそらく国が複数の学位を持って、かつ一年以上の現場経験を持つ優秀な人たちを選抜して送り込んだのだろう。となれば若くても三〇代だ。そこから半世紀も経てば八〇代だろうから、普通に寿命だったろう。
また留学生たちは毎日日誌を書いていたが、相対論効果で日付けが狂ったというが、そもそも惑星セルポの一日は地球と同じ二四時間だったろうか。そこで二年も過ごせば、よほど精密な時計を持っていってない限りは時間感覚というか、日付け感覚が狂うのは当然である。
『アメリカはこの留学で得た技術知識を含めてグレイから得た技術のリバース・エンジニアリングで、本来なら三〜五世紀はかかる技術進歩をわずか五〇年で駆け抜けたんだ。これによってアメリカには巨万の富が転がり込み、今も一部の企業は特許が切れたのちもノウハウを独占し続けている』
「その技術は三〇年遅れで市民の生活に入ってきてるんですよね?」
『もちろん恩恵は受けてるぞ』
これは昔から歴史の世界で言われるもので、「軍事技術として生まれたものは、三〇年遅れで市民の生活に入ってくる」という経験則だ。
レーダーの研究中に偶然見つかった電子レンジは、この典型だろう。他にも缶詰やプラスチックなどの技術がある。
また途中で技術革新が生まれなければ、その技術は三〇年で頂点を迎えるという法則もある。
これで有名な法則は日本の火縄銃だろう。種子島に持ち込まれてから三〇年で、命中精度から何から改良されてマスケット銃の最高峰になった。
同じ戦国時代では築城技術──中でも石垣の三〇年間の進化も劇的だ。初めの頃の石を積んだだけの状態から、石垣に反りが入ったり、隙間が小さくなっていったりして、どんどん登りづらくなったり、地震でも崩れない工夫が出てきたりという変化が見られる。
だけど、戦後のものは三〇年を迎える前に次の技術革新が生まれ続ける変化を繰り返している。
顕著なものはコンピューター技術だ。一九四〇年頃にコンピューターが生み出され、国や軍、一部企業や大学が独占していたが、真空管からトランジスター、半導体による小型化という技術革新で一九六〇年代が始まる頃には独占が崩れた。これでビジネス分野に広まっていくが、そのあとも更に半導体からLSI、超LSIという技術革新が続いている。まあ、もう一般人にはわからないレベルなので、LSI以降はすべて半導体とひとくくりにしている。そのおかげで一九八〇年頃にはマニア向けのパソコンが出てきた。更に三〇年後の二〇一〇年にはスマホの爆発的な普及で一人一台が当たり前の時代となっている。
インターネットも生まれたのは一九五〇年代後半だが、その三〇年後の一九八〇年代末には市民向けサービスが始まって新しい物好きの人たちが飛びついている。この頃のインターネット通信費は月に一〇万円以上が当たり前だったが、銅線によるアナログ通信から光ケーブルによるデジタル通信に変わるなどの技術革新や低価格化が進んで、今では月一万円を超えたら「高い」と言われる時代である。
最近の技術革新なしで市民に普及してきたものとしては、3Dプリンターがあるだろうか。これも開発された一九八〇年代から、家庭向きの低価格製品が出てくるまで約三〇年のラグがあった。
どうして三〇年なのか、不思議な法則である。
「ところで、もう一方のヴェガに向かった遠征軍の動向が気になります。スピリチュアル情報では西暦一九八〇年から二〇〇〇年の間にヴェガ星が襲われて、そこで亡くなった多くの魂が地球──中でも日本に転生してきてるという話があるので……」
『その話は事実ではないな。遠征軍の先攻隊と天の川銀河の防衛軍がオリオン大戦を起こしてるだろ。ヴェガは周辺宙域でもっとも発展して銀河軍の母港にもなってる星系だ。そこで代表者と会見して、停戦協定でも結んだんじゃないのか?』
「停戦? 今は休戦中ですか?」
『少なくとも俺の調べられる範囲では、直接的な戦闘はやってないぞ。水面下の頭脳戦はバチバチやってるだろうが、対レプティリアンでは共闘してるように見えるな』
「じゃあ、ヴェガからの生まれ変わりが増えてるという話は?」
『デマか思い込みじゃないのか? 俺にはヴェガからの生まれ変わりが目立って増えてるようには思えないぞ』
「生まれ変わりの情報を集めてて、ずっと信じてたものが……」
『元々きみには見えない世界の話だ。間違いに気づかなかったようだな』
「……ですね」
まあ、オカルト系の情報というのは、こういうものが多いのだろう。
「最後に、ロズウェル事件で起きたことのその後ですが、墜落事故からプロジェクト・セルポの間が話が飛びすぎてますので……」
『そのあたりの話は、「エイリアン・インタビュー」に書かれてある通りだ。まず米軍は事件をもみ消してる。それと、よく言われるグレイの救助隊だが、都市伝説にある一九五三年に来たというのはデマだ。事故から数か月後には来てる。生き残ったエアルがドールボディの肉体を捨てて、救助隊に回収された時だな。この時に米軍はグレイとの接触に成功して会談を重ね、プロジェクト・セルポを実現するまで粘ったんだ』
「そこはもう執念ですね」
『このリバース・エンジニアリングで、アメリカは今も大きな技術的優位を見せている。だが、早すぎる技術進歩に国内のインフラが追いつかなくて、一九八〇年代にはアメリカ社会が衰退したと言われるほど疲弊してたのは有名な話だな。反対に日本やヨーロッパでは大戦で国土が一度荒廃させられたおかげもあって、最初から新しい技術をインフラに取り込む形で戦後復興してきたので追撃が早かった』
「でも、一九九〇年代に入ると金融錬金術手法が確立されて、そこから十数年間続けて経済成長するITバブルがありましたよね?」
『コンピューターを使った高速取り引きによる金融錬金術は、グレイというよりもレプティリアンだな。まあ、ソフトウェアの優位性を含めて、技術的な優位性はリーマンショックの頃にはほぼ使い尽くした感じだ。あとはAI技術を残すのみだが、AIによる自己進化を独占できればアメリカの優勢は今後も続くだろう。とはいえ、AIがどのように進化するかは未知数が多いだけに、追随してきた日本、中国、ヨーロッパのどこかが先になる可能性もある。このあたりの未来は、いったいどうなるのだろうな?』
「中国だけには先になって欲しくありませんけど……」
『ということで、今回も長くなったので、ここまでにしよう』
「そうですね。このシリーズは最初、一話原稿用紙一〇枚以内で考えてたのに、今回も三〇枚近くですもんね。お疲れさまでした」




